
「復刊ドットコム」からの情報によると、「コンヌ博士の非可換幾何学へはどうたどり着けばいいのだろう?」という記事で紹介した「非可換幾何学入門:A.コンヌ」の復刊が決まったそうなのでお知らせしておこう。(6月29日に追記:既に復刊されています。)

獲得した得票数は1票だけ、つまり僕だけということだ。まれにこういうことも起こるのだから、あきらめずにどんどん復刊リクエストしたほうがよさそうだ。
博士の提唱する非可換幾何学は私たちが存在する時空間は実は不連続で、小さなつなぎ目が存在していると予言している全く新しい幾何学の分野だ。最先端物理学である超ひも理論(万物の理論)と密接に結びついていると考えられている。
そのことはNHKの「素数の魔力に囚われた人々 ~リーマン予想・天才たちの150年の闘い~」という番組で紹介された。
不連続なミクロの時空間については、驚くことにリーマンも1854年にゲッティンゲン大学で行った講演で次の2つのことを言及していた。(参照「微分幾何学:保江邦夫」)
1)リーマン幾何学と全く異なる有り様が測り知れぬほど小さい空間に成り立っているかもしれない。そのような無限小の空間で成り立つ物理量の関係がこれまでの経験則に一致していないとしたら、それを説明する新しい幾何学の仮定に従うべきである。(量子力学、非可換幾何学についての予言。)
2)空間の基礎をなす実在的なものが離散多様体を造るか、または物理量の量的関係の基礎を空間以外に、物体間に働く結合力に求めなければならない。(場の量子論、素粒子物理学についての予言。)
コンヌ博士はフランスの有名な天才数学者だ。この画像をクリックして再生される動画の後半で博士が紹介されている。上記NHKの番組のハイライト部分。

コンヌ博士のホームページ
英語:
http://www.alainconnes.org/en/
フランス語:
http://www.alainconnes.org/fr/
このレベルの本を読める方は、たいてい英語版でも大丈夫だと思うが、ぜひ日本語版をという方は、もうしばらくお待ちいただきたい。(6月24日ころ重版ができるそうだ。)
====================================
6月25日に追記:読者の方からコメント欄を通じてご指摘いただいたので、以下のように追記させていただきました。
なお、この日本語版の元となったのは1990年、パリのInterEditionsという出版社からでたフランス語版である。本書の英語版は1994年にAcademic Pressから出ている。英語版もコンヌ博士ご自身によるものなので、単なる翻訳ということではなく「改善」されているようだ。
====================================
本書を含めて、岩波書店から今年は多数の自然科学書が復刊される。うれしいかぎりだ。とね書店にも専用コーナーを設けたので、重版ができる6月24日以降にご利用いただきたい。(6月29日に追記:既に復刊されています。)
■ 2011年度・自然科学書一括復刊
今年も、6月の自然科学系書籍の一括復刊書目が決まりました。ご要望にお応えできなかった書目も多いかと思いますが、よろしくお願いします。引き続き、こちらより復刊ご要望の声をお聞かせ下さい。
○ 志賀浩二 『多様体論』【岩波基礎数学選書】 A5判・386頁
多様体上で組み立てられる概念とその応用に重点をおいて述べ,多様体論がさらに展開していく方向を示す.
○ 河田敬義 『ホモロジー代数』【岩波基礎数学選書】 A5判・314頁
本書はホモロジーやホモトピーの理論が理解困難なものでなく,明白なアイデアでたどることができることを示す.
○ 近藤 武 『群論』【岩波基礎数学選書】 A5判・396頁
群論の初歩から発展的な話題まで取り扱った教科書.有限群を中心にとりあげ,初学者にもわかりやすいよう配慮がなされている.
○ A.コンヌ 『非可換幾何学入門』 A5判・260頁
非可換幾何学および数理物理学との関係が,独自の哲学と斬新な視点に立って生きいきと語られている.フランス語版からの翻訳.
○ R.トム 『構造安定性と形態形成 (原書第2版)』 A5判・450頁
有名な「カタストロフの理論」の原典.その数理的構造を用いれば,現象をうまく記述するだけでなく,なぜそのような現象が起るのかを明快に説明できる.
○ 藤川和男 『ゲージ場の理論』【現代物理学叢書】 A5判・268頁
自然界のすべての力を記述するゲージ場.その統一的な記述を,場の古典論および場の量子論における対称性の理論という観点から試みる.
○ 三井孝美 『解析的数論――加法的理論――』 A5判・224頁
第I部で解析的数論の立場から代数体で問題を考えるために必要な理論と,加法的問題を考察するための基本事項を,第II部ではワーリングの問題,ゴールドバッハの問題等を検討する.
○ 砂川重信 『量子力学』 A5判・428頁
基本概念から応用まで一貫した構想のもとに解説.要所に演習問題(解答付き)を配して,初学者が完璧に量子力学をマスターできるようにした.学部学生向き.
○ ランダウ・リフシッツ 『物理学』 A5判・407頁
『理論物理学教程』の教科書でも名高いランダウの一般物理学の講義をもとにした入門書.力学・電磁気学から近代物性論へ自然にさそいこまれる.
○ 藤永 茂 『分子軌道法』 A5判・456頁
量子力学の初歩の知識だけを前提に,分子軌道法の基礎を丁寧に解説し,ハンドブックとしてもきわめて有用.量子化学,計算化学を学ぶ上で必読の名著.
関連ページ:
アラン・コンヌへのインタビュー 第一部
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/589621/
アラン・コンヌへのインタビュー 第二部
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/590213/
IPMにおけるアラン・コンヌへのインタビュー
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/595709/
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。


獲得した得票数は1票だけ、つまり僕だけということだ。まれにこういうことも起こるのだから、あきらめずにどんどん復刊リクエストしたほうがよさそうだ。
博士の提唱する非可換幾何学は私たちが存在する時空間は実は不連続で、小さなつなぎ目が存在していると予言している全く新しい幾何学の分野だ。最先端物理学である超ひも理論(万物の理論)と密接に結びついていると考えられている。
そのことはNHKの「素数の魔力に囚われた人々 ~リーマン予想・天才たちの150年の闘い~」という番組で紹介された。
不連続なミクロの時空間については、驚くことにリーマンも1854年にゲッティンゲン大学で行った講演で次の2つのことを言及していた。(参照「微分幾何学:保江邦夫」)
1)リーマン幾何学と全く異なる有り様が測り知れぬほど小さい空間に成り立っているかもしれない。そのような無限小の空間で成り立つ物理量の関係がこれまでの経験則に一致していないとしたら、それを説明する新しい幾何学の仮定に従うべきである。(量子力学、非可換幾何学についての予言。)
2)空間の基礎をなす実在的なものが離散多様体を造るか、または物理量の量的関係の基礎を空間以外に、物体間に働く結合力に求めなければならない。(場の量子論、素粒子物理学についての予言。)
コンヌ博士はフランスの有名な天才数学者だ。この画像をクリックして再生される動画の後半で博士が紹介されている。上記NHKの番組のハイライト部分。

コンヌ博士のホームページ
英語:
http://www.alainconnes.org/en/
フランス語:
http://www.alainconnes.org/fr/
このレベルの本を読める方は、たいてい英語版でも大丈夫だと思うが、ぜひ日本語版をという方は、もうしばらくお待ちいただきたい。(6月24日ころ重版ができるそうだ。)
====================================
6月25日に追記:読者の方からコメント欄を通じてご指摘いただいたので、以下のように追記させていただきました。
なお、この日本語版の元となったのは1990年、パリのInterEditionsという出版社からでたフランス語版である。本書の英語版は1994年にAcademic Pressから出ている。英語版もコンヌ博士ご自身によるものなので、単なる翻訳ということではなく「改善」されているようだ。
====================================
本書を含めて、岩波書店から今年は多数の自然科学書が復刊される。うれしいかぎりだ。とね書店にも専用コーナーを設けたので、重版ができる6月24日以降にご利用いただきたい。(6月29日に追記:既に復刊されています。)
■ 2011年度・自然科学書一括復刊
今年も、6月の自然科学系書籍の一括復刊書目が決まりました。ご要望にお応えできなかった書目も多いかと思いますが、よろしくお願いします。引き続き、こちらより復刊ご要望の声をお聞かせ下さい。
○ 志賀浩二 『多様体論』【岩波基礎数学選書】 A5判・386頁
多様体上で組み立てられる概念とその応用に重点をおいて述べ,多様体論がさらに展開していく方向を示す.
○ 河田敬義 『ホモロジー代数』【岩波基礎数学選書】 A5判・314頁
本書はホモロジーやホモトピーの理論が理解困難なものでなく,明白なアイデアでたどることができることを示す.
○ 近藤 武 『群論』【岩波基礎数学選書】 A5判・396頁
群論の初歩から発展的な話題まで取り扱った教科書.有限群を中心にとりあげ,初学者にもわかりやすいよう配慮がなされている.
○ A.コンヌ 『非可換幾何学入門』 A5判・260頁
非可換幾何学および数理物理学との関係が,独自の哲学と斬新な視点に立って生きいきと語られている.フランス語版からの翻訳.
○ R.トム 『構造安定性と形態形成 (原書第2版)』 A5判・450頁
有名な「カタストロフの理論」の原典.その数理的構造を用いれば,現象をうまく記述するだけでなく,なぜそのような現象が起るのかを明快に説明できる.
○ 藤川和男 『ゲージ場の理論』【現代物理学叢書】 A5判・268頁
自然界のすべての力を記述するゲージ場.その統一的な記述を,場の古典論および場の量子論における対称性の理論という観点から試みる.
○ 三井孝美 『解析的数論――加法的理論――』 A5判・224頁
第I部で解析的数論の立場から代数体で問題を考えるために必要な理論と,加法的問題を考察するための基本事項を,第II部ではワーリングの問題,ゴールドバッハの問題等を検討する.
○ 砂川重信 『量子力学』 A5判・428頁
基本概念から応用まで一貫した構想のもとに解説.要所に演習問題(解答付き)を配して,初学者が完璧に量子力学をマスターできるようにした.学部学生向き.
○ ランダウ・リフシッツ 『物理学』 A5判・407頁
『理論物理学教程』の教科書でも名高いランダウの一般物理学の講義をもとにした入門書.力学・電磁気学から近代物性論へ自然にさそいこまれる.
○ 藤永 茂 『分子軌道法』 A5判・456頁
量子力学の初歩の知識だけを前提に,分子軌道法の基礎を丁寧に解説し,ハンドブックとしてもきわめて有用.量子化学,計算化学を学ぶ上で必読の名著.
関連ページ:
アラン・コンヌへのインタビュー 第一部
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/589621/
アラン・コンヌへのインタビュー 第二部
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/590213/
IPMにおけるアラン・コンヌへのインタビュー
http://srad.jp/~taro-nishino/journal/595709/
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。





> 非可換幾何学は日本語版が復刊されるということで
>すが、実のところ英語版で改訂されてるのでやっぱ
>りそちらを買った方がよいような気がします……。
英語版でということでしたら、僕も改訂版を買ったほうがよいと思います。
改訂版とはこれのことですね。
Noncommutative Geometry, Quantum Fields and Motives
Alain Connes & Matilde Marcolli
http://www.alainconnes.org/docs/bookwebfinal.pdf
一つだけ。
Unknownさんの仰られているのは、Academic Press版のNoncommutative Geometryではないかと。ConnesとMarcolliの本は、非可換数論幾何学という、怖ろしい分野の確立を目指した本で、全く別物だと思った方が良いです。
ご指摘ありがとうございます。
なるほど。Unknownさんのコメントを僕は理解できていませんでした。
この日本語版の元となったのは1990年、パリのInterEditionsという出版社からでたフランス語版なので1994年にAcademic Pressから出た英語版のほうが新しいことが理解できました。
僕はこの2つが同じ内容だと思っていましたが、英語版もコンヌ博士ご自身によるものなので、単なる翻訳ではなく「改善」されている可能性が高いですね。
Unknownさん、失礼いたしました。
ところで、今日アマゾンをチェックしてみるとコンヌ博士は共著という形で、次の2冊を出されるようです。今年の7月と12月に発売開始のようで、予約受付中という状況です。これらについては別途記事を書くことにします。
Noncommutative Geometry and Global Analysis (Contemporary Mathematics)
Alain Connes, Alexander Gorokhovsky, Matthias Lesch, Markus Pflaum, Bahram Rangipour
Amer Mathematical Society (2011/7/17)
Noncommutative Geometry, Arithmetic, and Related Topics: Proceedings of the Twenty-first Meeting of the Japan-u.s. Mathematics Institute
Caterina Consani, Alain Connes
Johns Hopkins Univ Pr (2011/12/29)