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とね日記

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アインシュタイン選集(2): [B3] 重力および電気の統一場理論に対する新しい可能性(1928年)

2008年07月27日 17時13分03秒 | 物理学、数学
[B3] 重力および電気の統一場理論に対する新しい可能性(1928年)

前の論文[B2]では、リーマン空間を「n-バイン場」と名付けたn次元空間に拡張することによって、リーマン計量と遠隔平行性という2つの概念が成立し、そのような幾何学が物理法則を表現できるかということを考察した。

また[B1]の論文では重力場および電磁場の法則が、少なくとも第1次近似としては一般相対性理論の重力場の方程式によって統一された法則として導かれることを示した。

この論文ではn-バイン場を前提とすることで、重力場と電磁場が第1次近似として両方とも導かれることを示すものだ。第1次近似だけの理論なので統一場理論として完成しているわけではない。

遠隔平行性という概念を導入したため、この理論では「直線」が存在することになる。この「直線」とは、ある1本の曲線上の各点における線素がすべて互いに平行であるとき、この曲線を「直線」と呼ぶことにする。このように定義された直線は、一般相対性理論で求める「測地線(曲がった空間における2点間の最短距離を与える径路=曲がった空間における直線)」とは異なるものだ。

さらにこれまでの一般相対性理論と異なり、2個の質点の「相対的静止」という概念も存在する。つまり2本の世界線飢えのそれぞれの線素が互いに平行である場合に、これを「相対的静止」という。

このn-バイン場の理論では、次のように約束する。

1)連続体(時空)は4次元とする。(n=4)

2)時間を純虚数とする。つまり、ひとつのベクトル成分 A(/a) の4番目、つまり A(/4) は純虚数とする。その結果、4-バインの第4番目のベクトルの成分 h(ν/4) と h(/ν4)はともに純虚数となる。したがってリーマン計量 g(/μν) = h(/μa)h(/νa) はすべて実数である。また、時間的ベクトルの大きさの2乗は負になることになる。

つまり重力場と電磁場を統一するためには時間を純虚数と置く必要があったのだ。


§1 基礎的な場の法則

解析力学で学ぶハミルトンの積分をn-バイン場のポテンシャル h(/μa) ならびにh(μ/a) で変分したものを0に等しいとおけば、n-バイン場の「場の方程式」が求められる。意味はわからなくてもよいが、このような式だ。

δ{ ∫h g(μν/) Λ(α/μβ) Λ(β/να) dτ} = 0 --- (1)

そして4-バイン場は電磁場と重力場を同時にあらわすことができる。ベクトルφ(μ)を電磁場とする。

φ(μ) = Λ(α/μα) = 0

のとき、この場は純粋な重力場をあらわす。そのためにはこの場が共変的で、回転について不変であることが必要である。


§2 第1次近似における場の法則

もし4次元時空が特殊相対性理論に登場するミンコフスキー型の世界の場合、hは次のようになり、実際の計算には不便である。

h(/11)=h(/22)=h(/33)=1, h(/44)=i, その他の h(/μa)=0

そこで、時間成分を純虚数にとれば、同じことを簡単に次の式だけで表わすことができるようになる。

h(/μa) = δ(/μa)

無限に弱い場が存在するときは、それを次のように書きあらわせる。ここで k(/μa) は「場」による微小直交空間の計量δからのずれをあらわし、アインシュタインは重力場と電磁場が k に含まれていると想定したわけだ。

h(/μa) = δ(/μa) + k(/μa)

上記の(1)式で示されるn-バイン場の「場の方程式」にこのhを代入して計算を進め、第1次近似までを残し、第2次近似以降を0とおくと、xとkについての2階の偏微分方程式が得られる。



これは添字の値が1から4まで変わるので16個の量 k(/αβ) に対する16個の偏微分方程式であり、これが重力場や電磁場に対する法則を示しているかを調べる。

そのためには k(/αβ) のかわりに g(/αβ) や φ(α) をこの偏微分方程式に代入しなければならない。当然であるが、これによって導かれる偏微分方程式は x, g,φだけを含んだものになる。

この偏微分方程式でφ(/μ) = 0 すなわち電磁場が存在しないと置くと、一般相対性理論で用いられた次の方程式を第1次近似で書き表したものと一致する。

R(/αβ) = 0

つまりこのn-バイン場における理論は第1次近似での純粋の重力場の法則を与えることが証明された。

次にx, g, φだけであらわされた上記の偏微分方程式を x^α で微分しα=βと置くとおいて上記の x, k だけであらわされた場の方程式を1から4までの添字で和をとり、計算を進めると x, φだけであらわされる1階と2階の偏微分方程式がそれぞれ1本ずつ得られる。

この2本の式が真空中におけるマックスウェルの方程式と同等である。すなわち、このn-バイン場における理論は第1次近似で電磁場の法則も与えることが証明された。

このように重力場と電磁場を分離したのは、これらの場が両方とも含まれていることを説明するためにすぎない。n-バイン場に両方の場が存在していることを示す「場の方程式」が統一場としての本質を示しているのだ。そして注目すべきなのは、場の方程式の中に電磁場は2次形式としては登場しないということである。

この後に訳者による注意書きが続く。

電磁場と重力場が共存するとき、従来の一般相対性理論に従うならば、電磁場のエネルギー・運動量テンソルが源となって重力場が発生する。つまり、重力場の方程式には電磁場の強さを示す場の量の2次形式であるエネルギー・運動量テンソルが登場する。この点で上記の理論は、特に第1次近似では、従来の一般相対性理論と異なっている。

そして、この論文の最後でアインシュタインは第1次近似としての統一場理論は、ハミルトン関数としてh, g, Λを使った式からも同じ結果が得られることを紹介する。ただ、ハミルトン関数の選び方に任意性があるため、決定的な方法とはなっていない。


次の論文[B4]からアインシュタインは、重力場と電磁場の統一理論をを近似によらない一般的なものにする挑戦を始めるのである。


関連リンク:

アインシュタイン選集(1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559

アインシュタイン選集(2):読みはじめた
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e

少年の頃の夢(の続き)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6e4b9271cd56b2e85c3bdaa0b8b7cae

趣味で相対論
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/90aa60383b600ff4e4fd7bea6589deaa

とね書店:

アインシュタイン選集(1)
https://amazon.co.jp/&tonejiten-22/dp/4320030192/503-5691539-3879144

アインシュタイン選集(2)
https://amazon.co.jp/&tonejiten-22/dp/4320030206/503-5691539-3879144

アインシュタイン選集(3)
https://amazon.co.jp/&tonejiten-22/dp/4320030214/503-5691539-3879144


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