とね日記

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人工知能はいかにして強くなるのか?: 小野田博一

2018年07月21日 16時35分50秒 | 将棋、AI
人工知能はいかにして強くなるのか?: 小野田博一」(Kindle版
対戦型AIで学ぶ基本のしくみ

内容紹介:
2016年3月9日、Googleの研究部門が開発した囲碁プログラムAlphaGoが、李世石との5番勝負の第1局に勝ったという一報が流れました。人工知能(AI)が、囲碁においてはまだ人間に及ばないと考えられていた中での驚くべきニュースでした。
本書では、AIが「学ぶ」とはどんなことなのか。AIが「考える」とはどんなことなのか。AIが「判断を下す」とはどんなことなのか。つまり、人工知能の思考構造はどうなっているのかを基本からわかりやすく理解することができます。「深層学習とは何か」「画像認識の原理とは」「評価関数の意味」「完全解析の思考法」など、AIの最新技術の核心を学んでいきます。
また、囲碁のAlphaGo、チェスのDEEP BLUE、チェッカーのCHINOOKなど、人間と対戦してきた対戦型AIの進化を振り返ることからも、人工知能(AI)とは何か、そして人工知能はいかにして人間を超えて強くなってきたのかを見ていきます。
ますます進化を遂げ、人間を超えていく人工知能。そのしくみを基本から学べる一冊です。

2017年1月刊行、256ページ。

著者について:
小野田 博一(おのだ ひろかず)
作家。東京大学医学部保健学科卒。同大学院博士課程単位取得。日本経済新聞社データバンク局に約6年間勤務。JPCA(日本郵便チェス協会)第21期日本チャンピオン。ICCF(国際通信チェス連盟)インターナショナル・マスター。JCCA(日本通信チェス協会、旧称JPCA)国際担当(ICCF delegate for Japan)。
主な著者に『論理パズル101(編・訳)』『論理パズル「出しっこ問題」傑作選』『超絶難問論理パズル』(以上、ブルーバックス)、『数学〈超絶〉難問』(日本実業出版社)、『論理的に話す方法』『論理的に書く方法』(以上、PHP文庫)など多数。

小野田さんの著書: Amazonで検索


理数系書籍のレビュー記事は本書で372冊目。(AIは一応理系としておく。)

先週紹介した「人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?: 山本一成」(Kindle版)(紹介記事)では、次の段階を経ながらAIが進化していったことを解説していた。

◇プログラマからの卒業
◇科学からの卒業
◇天才からの卒業
◇人間からの卒業

そして今回紹介する本は対戦ゲーム自体を基軸にとりながら解説している。

◇チェッカーで人類を超える
◇チェスで人類を超える
◇囲碁で人類を超える

著者はご経歴を見るとわかるようにチェスの名手である。本書はチェッカーやチェス、囲碁の盤面を具体的に示しながら、コンピュータ・プログラムがどのように進化していったか、それぞれのゲームでどのような対局をしながら世界チャンピオンを打ち負かしていったか、コンピュータのアルゴリズムや、その結果コンピュータがどのような「読み」を行うかを解説している。

歴史的に有名なのは次の3つの対戦だ。チェッカーは1990年-1995年、チェスは1996年、囲碁は2016年の段階で人類を超える能力をコンピュータ・プログラムは獲得している。そしてチェッカーについては、2007年にコンピュータによる完全解析が完了している。(ウィキペディアで「チェッカー」を開く。)

ティンスリー v.s. Chinook: 1990-1995: Chinookはオンラインでプレイできる:開く
Wikipedia動画検索


カスパロフ v.s. DEEP BLUE (IBM):(1996年2月10日 - 1997年5月11日)
ウィキペディア動画検索


李世石九段 v.s. AlphaGo (Google DeepMind):(2016年3月9日 - 3月15日)
ウィキペディア動画検索


章立てはこのとおり。

第1章 AlphaGoの大快挙
第2章 基本的なこと--対戦型AIの内部について理解しようとする前に知っておくべきこと
第3章 完全解析の仕方
第4章 チェッカーで人類を超える
第5章 チェスで人類を超える
第6章 囲碁で人類を超える

山本さんの本の紹介記事の中で、僕は「日本の将棋AIは、若い世代の個人の開発者がお金をかけずに作り上げてきたという点で、チェスのDEEP BLUEやAlphaGoのように巨大IT企業が圧倒的な資本を投入して開発したAIとは全く違う。」と書いた。

しかしこれは歴史的偉業をなしたこの2つのAIについてであり、1950年代から始まるチェッカーやチェスの世界では、プログラマが個人で開発を行い、トーナメントで競っていた時代があったことを、僕は本書を読んで知った。今となってはほとんどマニアしか知らないチェッカーやチェスのプログラム開発やそのアルゴリズム、コンピュータどうしの対戦、名人との対戦の歴史が詳細に述べられている。

機械学習のうちのひとつ、ディープラーニングに関しては第2章であっさりと解説されるだけである。これは今流行りのディープラーニングを知ろうとして本書を買った読者には期待はずれになる。

(ディープラーニングを除く)機械学習のアルゴリズムを理論として学び、歴史的対戦の盤面でどのように学習成果が表れたかを確認していく過程でAIの打つ手を「感覚的」に知ることができるのだ。

したがって本書をじゅうぶんに読み解くためには、ゲームのルールを知っておく必要がある。チェッカー、チェス、囲碁のルールは簡単に本書で紹介されているのでご心配なく。とはいえ、きっちり理解するためにはサイトや本などで学んでおいたほうがよいし、コンピュータ相手に対戦しておくとなお理解が深まるだろう。

Amazonでの評価は分かれている。ゲームの局面を見て考えたり、判断したりすることに慣れていない人は、本書を退屈だと評価しているようだ。確かに本書は最新技術やAIの未来を見据えた本ではない。歴史をたどる本であることをご承知の上、お読みになるとよい。


なお本書で紹介されているAlphaGoは初代のプログラムについてだけだ。後に開発されたAlphaGo MasterやAlphaGo Zeroに関しては触れられていない。(参照:ウィキペディア


棋譜の再生(チェス、囲碁)

本書はチェスや囲碁を具体的に盤面を見せながら解説しているが、対局全体の流れは「サイトで見てください。」ということわり書きが各所に見られる。著者が入力した棋譜のほかAlphaGoと李世石九段が5番勝負したときの棋譜が公開されているので、ゲームを再生するページに棋譜をコピー&ペーストして1手ずつ進行を見ることができる。

サイトによっては特定のブラウザでしか開けないページがあるので、うまくいかないときはMicrosoft Edge、Firefox、Google Chromeの順に試していただきたい。

PGNPLAYER.COM(チェスの棋譜を再生するページ)
http://pgnplayer.com/

チェスの棋譜(本書で解説している対局の棋譜)
http://www.geocities.jp/versusAI/chess.txt

COSUMI(囲碁の棋譜を再生するページ): Microsoft Edgeで動作
https://www.cosumi.net/sgf2replay.html

AlphaGoと李世石九段が5番勝負したときの棋譜
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha.txt

第1局から第5局の棋譜
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha1.sgf
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha2.sgf
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha3.sgf
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha4.sgf
http://www.geocities.jp/versusAI/alpha5.sgf

Go4Go(囲碁の対局のデータと再生、ログインが必要)
http://www.go4go.net/

AlphaGoと李世石九段が5番勝負したときの棋譜
http://www.go4go.net/go/games/sgfview/53040
http://www.go4go.net/go/games/sgfview/53053
http://www.go4go.net/go/games/sgfview/53069
http://www.go4go.net/go/games/sgfview/53071
http://www.go4go.net/go/games/sgfview/53076

AlphaGoとAlphaGoを対戦させたときの棋譜とその再生
http://www.kihuu.net/index.php?type=3&key=alpha


チェッカー、チェス、囲碁を学んでコンピュータと対戦してみよう

チェッカー入門サイト(kazuaki341のチェッカー)
http://www.geocities.jp/kazuaki341/index.html

チェッカー(オンラインゲーム)
http://www.247checkers.com/
https://webdocs.cs.ualberta.ca/~chinook/

チェスの入門サイト
http://chess.plala.jp/

チェス(オンラインゲーム)
https://www.chess.com/ja/play/computer

やさしい囲碁入門講座
https://yasashiigo.com/

COSUMI(オンライン囲碁): Microsoft Edgeで動作
https://www.cosumi.net/play.html

チェスの入門書: Amazonで検索
囲碁の入門書: Amazonで検索


本書以外にも気になっている本をピックアップしてみた。

1冊目はポナンザの開発者による本だ。そして2冊目は最近刊行された本。本格的に学べそうだ。Kindle版は2つあり、そのうちひとつは「リフロー版」である。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?: 山本一成」(Kindle版)(紹介記事
最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質
将棋AIで学ぶディープラーニング: 山岡忠夫」(Kindle版

 


アルファ碁(AlphaGo)だと、この2冊。読む前に囲碁のルールや定石を覚えたい。特に1冊目の「~の衝撃」は囲碁の盤面をほぼ全ページに掲載して解説しているので、日頃から囲碁を打っている人でないと読むことはできないから慌てて購入しないように。

アルファ碁Zeroの衝撃 ~龍虎vs最強AI~」(Kindle版
最強囲碁AI アルファ碁 解体新書 増補改訂版」(Kindle版

 


1冊目は2012年に刊行されたAI将棋の本。2冊目は2005年に刊行された本で、当時使われていたアルゴリズムがC言語で学べる。プログラミングというものは入門書で漫然と勉強していてもなかなか身につくものではない。具体的なテーマで四苦八苦しながら、勘どころをつかむのが近道だ。今となっては古い将棋アルゴリズムであっても、プログラミングを学ぶのにはよい教材だと思う。

人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
コンピュータ将棋のアルゴリズム

 


関連記事:

将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9c39fa7ba13e6b9f06728f9d26097191

将棋ソフト(ぴよ将棋、K-Shogi)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/549314ea56401d34be4cae5653179d24

将棋ソフト(技巧2、やねうら王4.79+apery_sdt5、平成将棋合戦ぽんぽこ)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f9d48568141c23d608266f323245ce6c

Newton別冊『ゼロからわかる人工知能』 (ニュートン別冊)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/41a084475f464b685b14cf7349c2f1a7


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人工知能はいかにして強くなるのか?: 小野田博一」(Kindle版
対戦型AIで学ぶ基本のしくみ



第1章 AlphaGoの大快挙

第2章 基本的なこと--対戦型AIの内部について理解しようとする前に知っておくべきこと
2.1 AIや機械学習とは何であるかを知ろう
2.2 回帰分析と判別分析がどんなものであるかを知ろう
2.3 主成分分析とはどんなものなのか
2.4 深層学習とは何か
2.5 画像データを識別する
2.6 レイティングについて
2.7 評価関数について

第3章 完全解析の仕方
3.1 完全解析入門
3.2 完全解析の基本とそのコツ
3.3 完全解析の歴史を少々――世界を驚嘆させた出来事
3.4 枝刈りとハッシュ表とは
3.5 ミニマックス・アルゴリズムとは
3.6 α-β枝刈りとは
3.7 行きつ戻りつ

第4章 チェッカーで人類を超える
4.1 チェッカーのゲームの仕方
4.2 チェッカープログラムの黎明期
4.3 サミュエルの方法
4.4 CHINOOK、世界チャンピオンとなる
4.5 「人対マシーン」世界選手権のゲーム

第5章 チェスで人類を超える
5.1 チェスのゲームの仕方
5.2 チェスの対戦プログラム

第6章 囲碁で人類を超える
6.1 囲碁はどんなゲーム?
6.2 AlphaGoの特色
6.3 AlphaGoの棋風とは
6.4 AlphaGo vs 李世石、5番勝負
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