とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?: 山本一成

2018年07月14日 17時09分36秒 | 将棋、AI
人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?: 山本一成」(Kindle版
最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質

内容紹介:
人工知能は今、プログラマの手を離れ、既存の科学の範疇を超え、天才が残した棋譜も必要とせず、さらには人間そのものからも卒業しようとしています。その物語を、できる限りやさしく語りました。

★「情熱大陸」(TBS系列)、「NHKスペシャル」にて大反響!
★ 朝日新聞書評にて野矢茂樹氏(東京大学教授・哲学)が絶賛!
★ その他、各種メディアにて賞賛の声多数

2017年4月1日――人工知能「ポナンザ」が現役の将棋名人に公式戦で初めて勝利した日を、その生みの親である著者は次のように振り返ります。

「この日は、コンピュータ将棋の世界にとって記念すべきものになりましたが、同時に改めて、人間と人工知能の違いを認識させられた日ともなりました。
本書で紹介してきた人工知能(ポナンザ)の特徴と、世界に意味を見つけ物語を紡いで考えていく人間の思考法の限界が明確に表れたのです。」

本書の魅力は、このフレーズに象徴される「人工知能と人間の本質的な違い」
そして「知能と知性の未来」を、
◇プログラマからの卒業
◇科学からの卒業
◇天才からの卒業
◇人間からの卒業
という4つの章で見事に段階的に説明している点にあります。

そしてもう1つの読みどころは、著者が研究の最前線で遭遇した驚くべき事象や、囲碁・将棋のプロ棋士たちの人工知能への反応を鮮やかに記述していること。

◇黒魔術化する人工知能
◇黒魔術の1つ、「怠惰な並列化」とは
◇ディープラーニングは 知能の大統一理論になれるか?
◇サイコロにも知能がある!?
◇囲碁は画像だった!
◇知能の本質も画像なのか?
◇科学が宗教になる瞬間を見た
◇研究者は「人工知能の性能が上がった理由」を説明できない
◇人類はこれから、プロ棋士と同じ経験をする

などなど、目からウロコの解説の連続で、既存のどんな人工知能の解説書よりも面白くてわかりやすい、必読の1冊となっています。

2017年5月刊行、288ページ。

著者について:
山本一成(やまもと いっせい): https://twitter.com/issei_y
1985年生まれ。プロ棋士に初めて勝利した現在最強の将棋プログラム「ポナンザ(Ponanza)」作者。主要なコンピュータ将棋大会を4連覇中。愛知学院大学特任准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、HEROZ(株)リードエンジニア。『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?―最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質』が初の著書となる


理数系書籍のレビュー記事は本書で371冊目。(AIは一応理系としておく。)

プロ棋士に初めて勝利した現在最強の将棋プログラム「ポナンザ(Ponanza)」作者による本。昨年11月にポナンザの引退が発表されたとき、AI将棋界には衝撃が走った。AI将棋の歴史に残されたひとつの節目になったようである。

【コラム】PONANZA引退に寄せて
https://www.fgfan7.com/entry/2017/11/13/201221

昨年7月に僕が自分のパソコンにインストールしたのは「ボナンザ(Bonanza)」のほうである。(参考記事)本書の著者の山本さんはボナンザに敬意を払ってポナンザという名前にしたそうだ。

将棋の名人ではなく、AIの研究者ではないトップに君臨し続けたAI将棋開発者の本だからこそ読みたいと思った。囲碁の世界チャンピオンを打ち負かした「アルファ碁(AlphaGo)」の解説や著者が感じていらっしゃることも書かれている。

将棋を指せなくても読める本だ。互いに駒をルールに従って動かし、王将を取るのが将棋だということがわかっているレベルであれば、読める本である。

章立ては次のとおり。

【第1章】将棋の機械学習――プログラマからの卒業
【第2章】黒魔術とディープラーニング――科学からの卒業
【第3章】囲碁と強化学習――天才からの卒業
【第4章】倫理観と人工知能――人間からの卒業
【巻末付録】グーグルの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?

科学雑誌Newtonの人工知能特集」でもAI将棋やアルファ碁は取り上げられるが、それは全体のごく一部。オセロやチェス、将棋、囲碁などはどれも対戦型ゲームだが、アルゴリズムや手法は違ってくる。オセロなら素人が少し学んだだけでプログラミング可能だが、チェスだとだいぶ難しくなる。

将棋に至って近年ようやく名人を負かすプログラムが登場し、将棋電王戦が後押しする形で将棋ブームが到来した。そしてタイミングよく藤井聡太七段(当時は四段)のようにAI将棋で学んだ新しい世代のヒーローが登場したことで、世間一般の人が将棋に注目するようになった。

日本の将棋AIは、若い世代の個人の開発者がお金をかけずに作り上げてきたという点で、チェスのディープ・ブルーやアルファ碁のように巨大IT企業が圧倒的な資本を投入して開発したAIとは全く違う。後者だと個人が挑戦する余地はまったく無く、庶民的な「文化」が生まれることはない。日本のAI将棋がプログラミング経験者、将棋ファンから愛され続けるのは個人でも参加できることが大きな理由だと思う。

将棋フリーソフト レーティング
http://www.uuunuuun.com/

電王戦
http://denou.jp/


本書を読んで次のようなことを僕は学ぶことができた。

- 電王戦でAIが名人を下したとき、どのように将棋ファンが受け止めたのか知ることができてよかった。「衝撃」の一言では言い尽くせないのだ。
- ポナンザはディープラーニングを使っているのだと勘違いしていた。実際は「ロジスティック回帰」という機械学習の中のひとつの手法を使っている。(参考ページ:「「 ディープラーニング」で人工知能が急速に発展する」)
- 「過学習」がどのようにして起こるのか理解できた。
- チェスと将棋に対する考え方、プログラミングのアプローチが全く違うことを理解できた。
- 将棋と囲碁に対する考え方、AIのアプローチが全く違うことを理解できた。
- ポナンザをなぜ引退させることにしたのか理解できた。
- 名人が指す将棋とAIが指す将棋の違いが理解できた。
- ポナンザがどのように成長していったかを理解できた。
- ディープラーニングでおこる「黒魔術」が理解できた。
- 「還元主義的な科学からの卒業」の意味が理解できた。還元主義的なものを科学と定義するならば、AIはもはや科学ではない。
- 「強化学習」がどのようなものか具体的に理解できた。
- 序盤、中盤、終盤について将棋、囲碁でどのような違いがあるか理解できた。
- 本書でいうところの「知能」と「知性」の違いがよく理解できた。
- AI将棋が名人の将棋に与えた影響を知ることができた。これまで人類が蓄積していた将棋の経験は、ごく表層的なものに過ぎなかったことなど。
- 囲碁は画像として扱うことでディープラーニングによって計算できることが理解できた。

巻末にはアルファ碁の成長やイ・セドル名人との対戦の解説や感想が著者を含めて3人で行われた鼎談として掲載されている。囲碁のルールを知らなくても読めるし、アルファ碁の打ち方の特徴がよくわかる。

将棋や囲碁という限定した領域でAIを学ぶことになるわけだが、広く一般的な形でAIを扱った本では曖昧に済まされてしまう事がらを具体的に学んだり、感じることができるのが本書の魅力である。

中学生くらいから楽しく読める本なので、ぜひお読みいただきたい。


本書以外にも気になっている本をピックアップしてみた。

1冊目はチェスや将棋の盤面を示しながら、より具体的に理解できる本のようだ。2冊目は最近刊行された本。本格的に学べそうだ。Kindle版は2つあり、そのうちひとつは「リフロー版」である。

人工知能はいかにして強くなるのか?: 小野田博一」(Kindle版)(紹介記事
対戦型AIで学ぶ基本のしくみ
将棋AIで学ぶディープラーニング: 山岡忠夫」(Kindle版

 


アルファ碁(AlphaGo)だと、この2冊。読む前に囲碁のルールや定石を覚えたい。特に1冊目の「~の衝撃」は囲碁の盤面をほぼ全ページに掲載して解説しているので、日頃から囲碁を打っている人でないと読むことはできないから慌てて購入しないように。

アルファ碁Zeroの衝撃 ~龍虎vs最強AI~」(Kindle版
最強囲碁AI アルファ碁 解体新書 増補改訂版」(Kindle版

 


1冊目は2012年に刊行されたAI将棋の本。2冊目は2005年に刊行された本で、当時使われていたアルゴリズムがC言語で学べる。プログラミングというものは入門書で漫然と勉強していてもなかなか身につくものではない。具体的なテーマで四苦八苦しながら、勘どころをつかむのが近道だ。今となっては古い将棋アルゴリズムであっても、プログラミングを学ぶのにはよい教材だと思う。

人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
コンピュータ将棋のアルゴリズム

 


関連記事:

将棋ソフト(Bonanza、GPS将棋、Apery)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9c39fa7ba13e6b9f06728f9d26097191

将棋ソフト(ぴよ将棋、K-Shogi)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/549314ea56401d34be4cae5653179d24

将棋ソフト(技巧2、やねうら王4.79+apery_sdt5、平成将棋合戦ぽんぽこ)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f9d48568141c23d608266f323245ce6c

Newton別冊『ゼロからわかる人工知能』 (ニュートン別冊)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/41a084475f464b685b14cf7349c2f1a7


ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ

人気ブログランキングへ



 

 


人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?: 山本一成」(Kindle版
最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質



はじめに

【第1章】将棋の機械学習――プログラマからの卒業
将棋の名人を倒すプログラムは、名人でなければ書けないのか?
そもそも、コンピュータとは何か?
将棋を指すプログラムは、どう作るのか?
将棋における探索と評価
評価の仕組みの作り方
人工知能の「冬の時代」
人間の思考を理解するのは諦めた
なぜ、コンピュータ将棋はコンピュータチェスに20年遅れたのか?
局面数が多いから人間に勝つのが難しいわけではない
コンピュータにとって将棋が難しい理由
コンピュータにとっての将棋とチェスの本質的な違い
コンピュータ将棋での機械学習
機械学習の弱点と工夫
ポナンザの成長
電王戦
プログラマからの卒業

【第2章】黒魔術とディープラーニング――科学からの卒業
機械学習によってもたらされた「解釈性」と「性能」のトレードオフ
黒魔術化しているポナンザ
黒魔術の1つ「怠惰な並列化」
ディープラーニングで人工知能が急速に発展する
ディープラーニングのしくみと歴史
ディープラーニングを支える黒魔術、「ドロップアウト」
今、ディープラーニングはどれくらいのことができるのか?
ディープラーニングと知能の本質は「画像」なのか?
還元主義的な科学からの卒業

【第3章】囲碁と強化学習――天才からの卒業
人工知能の成長が人間の予想を大きく超えたわけ
人間は「指数的な成長」を直感的に理解できない
人類はこれから、プロ棋士と同じ経験をする
ポナンザの「守破離」
強化学習とは何か
ポナンザ流の誕生
人類の反撃と許容
アルファ碁の登場
なぜ、コンピュータにとって囲碁だけが特別なゲームだったのか?
モンテカルロ法という救世主
サイコロにも知能がある!?
モンテカルロ囲碁の成長
アルファ碁が示したこと「囲碁は画像だった」
アルファ碁の3つの武器
アンサンブル効果
科学が宗教になる瞬間
天才からの卒業

【第4章】倫理観と人工知能――人間からの卒業
知能と知性
「中間の目的」とPDCAで戦う人間の棋士
「目的を持つ」とは意味と物語で考えるということ
人工知能はディープラーニングで知性を獲得する
ポナンザ2045
人工知能は人間の倫理観と価値観を学習する
シンギュラリティと「いい人」理論

おわりに

【巻末付録】グーグルの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?
人間を超えたアルファ碁は、どのようにして強くなったのか
アルファ碁はたくさん手を読んでいるのではなく、猛烈に勘がいい
読んでいない手を打たれると途端に弱くなる? アルファ碁の攻略法を探る
人類に残されたのは、言葉と論理。アルファ碁が示した人工知能の可能性とは
コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« とね日記の理数系書籍の販売... | トップ | 人工知能はいかにして強くな... »

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
面白そうですね (よし)
2018-07-15 06:50:43
利根さん、紹介ありがとう。
面白そうなので、利根さんのページからぽちっと買ってみました(中古の書籍だけど^^)。
仕事上も役立ちそうなので楽しみだ。
返信する
人工知能? (hirota)
2018-07-15 12:46:50
将棋はディープラーニングじゃない事にビックリ!
囲碁は見るからにパターン認識だけど将棋はどうしてるのかなー、と思ってたから納得ではある。
でもこれって人工知能?
知能の進化は、外界の情報をパターン認識して危険から逃げて餌は襲う事から始まり、その次は物語を作って行動指針とする事で生存能力を上げる方向に進んだと思ってるが、「最適化の目的に物語を作る必要はない」という将棋AIは知能の方に進んでないのでは?
ゲームなら勝敗と言う絶対の評価関数があるから最適化だけで充分だが、AIが広まって現在の価値基準による最適化が固定されたら人類は進化の袋小路では?
返信する
Re: 面白そうですね (とね)
2018-07-16 20:48:54
よしさんへ
読んで正解でした。将棋に興味がなくても人工知能に関する理解を深めるのに役に立ちますよ。
返信する
Re: 人工知能 (とね)
2018-07-16 20:54:37
hirotaさんへ
何をもってして人工知能と定義するのかは、議論が分かれるところだと思います。
機械学習を人工知能だとすれば、機械学習の範疇に含まれるディープラーニングやロジスティック回帰も人工知能ということになるのでしょう。

> 「最適化の目的に物語を作る必要はない」という将棋AIは知能の方に進んでないのでは?
物語を作る必要が知能ならば、おっしゃるとおりですね。

> AIが広まって現在の価値基準による最適化が固定されたら人類は進化の袋小路では?

現在までに使われている手法や技術だけだと、袋小路に入っていきますが、また新しい手法や技術が見つかって少しずつ進んでいくのではないでしょうか。ディープラーニングもひとつの過渡期なのだと思っています。
返信する
知能 (hirota)
2018-07-17 13:06:48
どうやら僕が人工知能を脳機能の実現が目的と見ているのに対して情報処理機能全般の拡大すべてを人工知能としているようですね。
ディープラーニングによるパターン認識は脳機能への一歩で自意識もパターンの延長上にあると思ってますが、ロジスティック回帰に限らず何らかの評価関数による最適化は、
ひとつの王道とは思いますが自我を持つ脳には向わず、融合した巨大知能へ行くんじゃないかと思います。
それもまた進化の方向でしょうが、人類は主役じゃないですね。
返信する
Re: 知能 (とね)
2018-07-17 13:16:19

> 情報処理機能全般の拡大すべてを人工知能としているようですね。

はい、そのようです。目的達成のためにはどのような手法、技術でもOKという考え方ですね。

> 融合した巨大知能へ行くんじゃないかと思います。
> それもまた進化の方向でしょうが、人類は主役じゃないですね。

がん細胞の発見や自動運転のように個別のAIが今後増えていくのでしょう。そして巨大知能(汎用AI)のような研究も進みますが、カバーする範囲が広がれば広がるほど、人類は脇役に追いやられていくのだと思います。AIの「黒魔術」的な部分が、今後どのように扱われていくのかが問題ですね。
返信する
実際にやらないと... (やす (Krtyski))
2018-07-17 17:17:55
とねさん

実際に本を読んでいないのでナンですが、黒魔術というのは、結果が出る過程が見えないということで、使っているのでしょうか? というか、多分そうだと思ってこれを書いています。

前にも書いたと思いますが、30年くらい前にNN(ニューラルネットワークス)による判断プログラムを自分で書いてセンサシステムに応用した経験があります。バックプロパゲーション(階層型のネットワーク)とボルツマン・ネットワークの2通りでトライして、当時は適材適所なんだな、と理解しました。

判断過程をどうしても知りたくなるのですが、原理的にどうやっても過程は分かりません。心のどこかで納得できず、試行錯誤をかさねてやっと諦めました。

やはり自分でプログラム書くことで納得、と言うか諦めがつきました。まぁ、私は頑固で諦めが悪かっただけで、さっさと諦められる人も居るのでしょうが...

過学習も嫌と言うほど経験しました。学習をある程度積み重ねると、判断の柔軟性が失われてきますが、私は"石頭になる" とか "コンピュータの老害"なんて、当時は言っていました。

使うだけでは何だか分からない、やはり自分でプログラム書くと、雰囲気に納得できます。

=====

今でも、たまに仕事で検査装置絡みで Deep Learningと組み合わせたいという話に係わることがあって、以下はディスカッションや実験の経験です。

見えない判断過程については、最近の画像認識のDeep Learningのシステムのいくつかでは、現在システムが主に着目している部分を示すような機能が付いたものも登場しています。学習過程を視覚化するのは、本質的には不要なのですが、何となく共感が得られます。

おそらく、今後は特に日本人に普及させるには、この共感を呼ぶ機能が結構重要になるのではないかと...

過程の詳細な理解をするのでなく、共感する、といったところが、ある意味面白いです。

またよくあるのは、100%の判定は原理的に不可能で、必ず100%未満の判断確率でしかないという点も、ユーザー側の理解を得るのが容易ではないようです。

今後のDeep Learning、もっと広い意味でAIを産業応用する際には、判断結果の妥当性に対して、ユーザーが共感を持って貰えるようにすることが、大切なような気がしています。

このあたり、普通の検査機械とはチョット違い切り口であり、そこが面白いと感じています。

返信する
Re: 実際にやらないと... (とね)
2018-07-17 17:43:41
やすさんへ

本書でいうところの「黒魔術」とは学習による改善の過程がプログラマにも理解不能になるという意味です。「プログラマからの卒業」の後は、AI同士を何万回も対戦させて、プログラムやパラメータの変更により統計的な有意差がでるくらい勝率が上がることで学習効果が確認され、将棋AIを強くしていくわけですが、この時点ではなぜ強くなったのかがプログラマには理解不能になるそうです。そしてうまくいくのは100回の試行につき、1~2回くらいだそうです。(強くするのはそれだけ難しいということ。)ですので著者は「黒魔術」と表現したわけです。

判断結果に対してユーザーが共感するというのは、とても大事だと僕も思います。しかしながら、AIが使われていく分野や目的にもよると思いますが、結局のところ結果オーライで有効性が判断されたり、企業や組織の経済的利益が優先されて(無批判な形で)AIの導入が進んでいくことが大いに予想されます。

プログラムする側の理解が及ばなくなるのであれば、結果を統計学的に判断するしか判断のよりどころはなくなるのではないかと思います。
返信する
Unknown (やす (Krtyski))
2018-07-19 14:13:48
とねさん

"黒魔術"ですが、学習の過程が見えないという点はNNでも最近のDeep Learningでも同様でして、プログラマにも分かりません。それを言いたかったのです。

実際にお金を払って、システムを購入する場合をチョット想像してみて頂くと...

100%の判定結果の保証はなく、99.5%の確率で正しく判定するといった保証しか出来ず、さらに学習の過程はどうやっても分からない、そんなシステムに対して、稟議を書いて会社の上役達に理解してもらって購入の承諾を得るには、チョット工夫が必要だ...というケースが、現実によくある話ではあります。

このような、現時点での極めて現実的な話に対して、購入判断には理解よりも共感が大きな役割を果たすような気がしている、そんな文脈のつもりでした...前のコメントはよく分からないものだったと思います。失礼致しました

将来的に、AIが応用される時の話ではなくて、今ココにある問題としてのお話でした。

私の感じですと、工業検査用途の目視検査において、Deep Learningによる検査が可能かどうかは、検査の経験のない一般人が判定できれば Deep Learning (AI)でほぼ適用判定可能、といったところが、今のレベルです。

目視検査の訓練をうけた特別な技能を身につけた人の代わりをAIが務めるのは、それなりの難易度になり、学習方法や判定方法の工夫には、所定のman-hourが必要になります。まぁ現実は、こんなレベルで、適用可能範囲が限られています。

とねさんは、きっともっと将来に目を向けてお話をなさっているのですよね。

経営判断や政治判断にAIを利用するような、将来の話が語られることもありますが、わりとAIの現実を知らない人が大げさに取り上げていることが多いように、私は感じています。

ブログ「小人さんの妄想」に
「AIに「人間に仕事を与える」という仕事をさせれば、人間の仕事は無くならない。」という面白い記事があるので、紹介致します。

http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20180522/p1
返信する
やすさんへ (とね)
2018-07-19 19:43:20
やすさんへ
ブログを書いたり、コメントに返信する時間がほとんどとれない状況が続いているので、取り急ぎいただいたコメントの公開と返信をさせていただきますね。

> とねさんは、きっともっと将来に目を向けてお話をなさっているのですよね。

はい、そのとおりです。あくまで、この本を読んで将棋AIの現状が黒魔術になっていること、将来的にもAIに黒魔術的要素がぬぐい切れないことを書かせていただきました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

将棋、AI」カテゴリの最新記事