
「理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾」~ 双対性の視点から ~ 臨時別冊・数理科学2006年12月
電子版のみ購入できます。:ページを開く
本書はたまたま明倫館書店で見かけて購入したまま積読状態だったが、やっと読み終えることができた。京大の物理学の先生がトポロジー、圏論、微分幾何の考え方をとてもわかりやすく説明してくれた本。僕にとっては「物理数学の直観的方法(第2版):長沼伸一郎」以来の「目からウロコが落ちる本」となった。
本書がカバーしているのは位相、ホモロジー、ホモトピー、圏論、微分幾何などとても広い範囲だ。ホモロジーやホモトピーだけを学んでいるのも面白いには違いないが、それがどう役立つのか、何のために学んでいるのかがはっきりしない。なので本書のように他の分野との関連性の中で手っ取り早く学ぶことができるのは、初学者にとってありがたい。それぞれの専門分野の専門書を学ぶ際にも必要性や目的意識をしっかり持つことができるからだ。
「幾何学〈3〉微分形式:坪井俊」の途中、ドラーム・コホモロジーあたりで挫折し、前提知識吸収としてしばらくトポロジーの入門書でホモロジー論やホモトピー論を勉強していたところだが、今回の本の微分幾何の章でドラーム・コホモロジーのことも、とてもわかりやすく書かれていたのでそれが何を意味しているのかがやっと理解できた。そしてホモロジーとドラーム・コホモロジーの関係も知ることができたのがよかった。当初、ドラーム・コホモロジーというのはホモロジーの一種なのかと思っていたが、そうではない。両者はいわば「双対」の関係にある。
ホモロジーとコホモロジー
http://pantodon.shinshu-u.ac.jp/topology/literature/homology.html
圏や射、関手について紹介しているのも入門書としてはめずらしい。この部分だけでも一読の価値がとてもある。微分幾何学の章もとてもわかりやすかった。途中で挫折してしまった「幾何学〈3〉微分形式:坪井俊」に再挑戦するだけの「予習」は十分できたと思う。
注意点としては、ページ数からみて仕方がないことだが、説明をメインにしているので数学的な証明がほとんど省略されていることだ。細かいことは気にせず各分野の意味することを理解するだけで十分という方には特にお勧めしたい。
本書は数理科学の臨時別冊として刊行されたため、ISBNコードがつけられていない。アマゾンで販売されていないのはそのためだ。購入を希望される方は、以下のリンクをクリックして発行元から直接購入するか、中古本を探していただきたい。
本書についてのレビュー記事は、こちらも参考にされるとよいだろう。圏論について詳しく書評を書かれている。
書評:理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20070122/1169425937
「理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾」
電子版のみ購入できます。:ページを開く

<目次>
第1章 外延と内包の双対性
1.1 集合と写像
1.2 集合の大小
1.3 写像集合
1.4 派生する集合
1.5 外延と内包
1.6 双対性
第2章 位相空間
2.1 位相空間の例
2.2 位相空間の定義
2.3 位相の強弱と分離公理
2.4 連続写像
2.5 連結性
2.6 同相と位相不変量
2.7 次元
2.8 図形と計量の双対性
2.9 変換と不変式の双対性
第3章 ホモトピー
3.1 ホモトピー理論の考え方
3.2 群
3.3 道とループ
3.4 道の積
3.5 ホモトピックという関係
3.6 ホモトピー群
3.7 ホモトピー群の例
3.8 位相不変量としてのホモトピー群
3.9 高次元ホモトピー群
3.10 ポアンカレ予想
第4章 ホモロジー
4.1 ホモロジー理論の考え方
4.2 単体複体
4.3 加群
4.4 名前と文脈と意味
4.5 加群と環
4.6 自由加群
4.7 向きのついた単体と境界作用素
4.8 加群の準同形写像
4.9 商加群
4.10 準同形定理
4.11 ホモロジー群
4.12 ホモロジー群の例
4.13 位相不変量としてのホモロジー群:測定とは何か
4.14 ベッチ数とオイラー数
第5章 圏論
5.1 圏論対集合論
5.2 圏
5.3 圏の例
5.4 モノとエピ
5.5 関手
5.6 関手の例
5.7 直積
5.8 直和
5.9 部分集合の圏における直積と直和
5.10 テンソル積
第6章 微分幾何学
6.1 多様体の定義
6.2 多様体の例
6.3 微分可能写像と微分同相
6.4 曲線と関数接ベクトルと余接ベクトル
6.5 座標変換と接ベクトル・余接ベクトルの成分の変換
6.6 ベクトル場・微分形式・テンソル場
6.7 外積代数
6.8 外微分
6.9 ド・ラムのコホモロジー群
6.10 ポアンカレの補題と可積分条件
6.11 微分形式の積分
6.12 スト一クスの定理
第7章 物理への応用
7.1 電磁気学
7.2 拘束系の力学
7.3 力学と保存則
7.4 双対的世界観
参考文献
索引
関連記事:
幾何学から物理学へ: 谷村省吾
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7e5a3ea4d9f7c96514ffab0b8efcd973
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。




電子版のみ購入できます。:ページを開く
本書はたまたま明倫館書店で見かけて購入したまま積読状態だったが、やっと読み終えることができた。京大の物理学の先生がトポロジー、圏論、微分幾何の考え方をとてもわかりやすく説明してくれた本。僕にとっては「物理数学の直観的方法(第2版):長沼伸一郎」以来の「目からウロコが落ちる本」となった。
本書がカバーしているのは位相、ホモロジー、ホモトピー、圏論、微分幾何などとても広い範囲だ。ホモロジーやホモトピーだけを学んでいるのも面白いには違いないが、それがどう役立つのか、何のために学んでいるのかがはっきりしない。なので本書のように他の分野との関連性の中で手っ取り早く学ぶことができるのは、初学者にとってありがたい。それぞれの専門分野の専門書を学ぶ際にも必要性や目的意識をしっかり持つことができるからだ。
「幾何学〈3〉微分形式:坪井俊」の途中、ドラーム・コホモロジーあたりで挫折し、前提知識吸収としてしばらくトポロジーの入門書でホモロジー論やホモトピー論を勉強していたところだが、今回の本の微分幾何の章でドラーム・コホモロジーのことも、とてもわかりやすく書かれていたのでそれが何を意味しているのかがやっと理解できた。そしてホモロジーとドラーム・コホモロジーの関係も知ることができたのがよかった。当初、ドラーム・コホモロジーというのはホモロジーの一種なのかと思っていたが、そうではない。両者はいわば「双対」の関係にある。
ホモロジーとコホモロジー
http://pantodon.shinshu-u.ac.jp/topology/literature/homology.html
圏や射、関手について紹介しているのも入門書としてはめずらしい。この部分だけでも一読の価値がとてもある。微分幾何学の章もとてもわかりやすかった。途中で挫折してしまった「幾何学〈3〉微分形式:坪井俊」に再挑戦するだけの「予習」は十分できたと思う。
注意点としては、ページ数からみて仕方がないことだが、説明をメインにしているので数学的な証明がほとんど省略されていることだ。細かいことは気にせず各分野の意味することを理解するだけで十分という方には特にお勧めしたい。
本書は数理科学の臨時別冊として刊行されたため、ISBNコードがつけられていない。アマゾンで販売されていないのはそのためだ。購入を希望される方は、以下のリンクをクリックして発行元から直接購入するか、中古本を探していただきたい。
本書についてのレビュー記事は、こちらも参考にされるとよいだろう。圏論について詳しく書評を書かれている。
書評:理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20070122/1169425937
「理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾」
電子版のみ購入できます。:ページを開く

<目次>
第1章 外延と内包の双対性
1.1 集合と写像
1.2 集合の大小
1.3 写像集合
1.4 派生する集合
1.5 外延と内包
1.6 双対性
第2章 位相空間
2.1 位相空間の例
2.2 位相空間の定義
2.3 位相の強弱と分離公理
2.4 連続写像
2.5 連結性
2.6 同相と位相不変量
2.7 次元
2.8 図形と計量の双対性
2.9 変換と不変式の双対性
第3章 ホモトピー
3.1 ホモトピー理論の考え方
3.2 群
3.3 道とループ
3.4 道の積
3.5 ホモトピックという関係
3.6 ホモトピー群
3.7 ホモトピー群の例
3.8 位相不変量としてのホモトピー群
3.9 高次元ホモトピー群
3.10 ポアンカレ予想
第4章 ホモロジー
4.1 ホモロジー理論の考え方
4.2 単体複体
4.3 加群
4.4 名前と文脈と意味
4.5 加群と環
4.6 自由加群
4.7 向きのついた単体と境界作用素
4.8 加群の準同形写像
4.9 商加群
4.10 準同形定理
4.11 ホモロジー群
4.12 ホモロジー群の例
4.13 位相不変量としてのホモロジー群:測定とは何か
4.14 ベッチ数とオイラー数
第5章 圏論
5.1 圏論対集合論
5.2 圏
5.3 圏の例
5.4 モノとエピ
5.5 関手
5.6 関手の例
5.7 直積
5.8 直和
5.9 部分集合の圏における直積と直和
5.10 テンソル積
第6章 微分幾何学
6.1 多様体の定義
6.2 多様体の例
6.3 微分可能写像と微分同相
6.4 曲線と関数接ベクトルと余接ベクトル
6.5 座標変換と接ベクトル・余接ベクトルの成分の変換
6.6 ベクトル場・微分形式・テンソル場
6.7 外積代数
6.8 外微分
6.9 ド・ラムのコホモロジー群
6.10 ポアンカレの補題と可積分条件
6.11 微分形式の積分
6.12 スト一クスの定理
第7章 物理への応用
7.1 電磁気学
7.2 拘束系の力学
7.3 力学と保存則
7.4 双対的世界観
参考文献
索引
関連記事:
幾何学から物理学へ: 谷村省吾
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7e5a3ea4d9f7c96514ffab0b8efcd973
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。




はじめまして。コメントをいただきありがとうございます。
山田先生の著書「量子力学が明らかにする存在、意志、生命の意味」のアマゾンでの内容紹介、先生のブログ、学生による感想文などを読ませていただきました。
著書を注文しようとしたのですが、現在注文できない状態でした。無料で送っていただくのは申し訳ないので、代金+送料を銀行振込みでお送りしたいのですが、いかがでしょうか?
「電子に意志がある」というのは一般的に受け入れられていない主張ですので、私としては先生のお考えに賛同できるかどうか、今の段階では申し上げることができません。量子力学の教科書としての内容からどのようなお考えで電子の意志というお考えに至られたのかということに興味を持ちました。本を読むことができましたら、私の感想文はメールでまず先生にお送りしたいと思っています。
また、本の代金のことや私の本名や住所については先生の(大学の)ホームページに記載されているメールアドレスにお送りすればよろしいでしょうか?
> 今度KEKの「量子論の諸問題」研究会でお目にかかると思います。
山田先生は谷村先生とこの研究会でお会いになるという意味ですね。
その後、山田先生がお書きになった以下のPDFファイルを見つけました。先生がおっしゃっている「意志」とは人間の意識とは違う意味なのですね。この文書でお書きになっている定義においての「意志」の意味を理解しました。時間をとってじっくり読ませていただきます。ありがとうございました。
対話原理小論
http://www.ritsumei.ac.jp/se/re/yamadalab/taiwa.pdf
「電子の意思」は、自由意志定理における思考を伴わない自由意志 のことでは、なさそうですね。
ψ(x)が持つ情報というならわかるんですが、、、
「人間が電子の性質を受け継いだ結果、人間に意志(意思?)が発生したとしたら、電子には意志があるかもしれないのではなく、意志が有るはずである。」