とね日記

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A Brief History of Time (2017, 2018): Stephen Hawking

2018年10月24日 20時36分44秒 | 物理学、数学
A Brief History of Time (2017, 2018): Stephen Hawking」(Kindle版

内容紹介:
IN A LANDMARK VOLUME OF SCIENCE WRITING by one of the great minds of our time, Stephen Hawking explores such profound questions as: How did the universe begin - and what made its start possible? Does time always flow forward? Is the universe unending - or are there boundaries? Are there other dimensions in space? What will happen when it all ends?
In language we can all understand, A Brief History of Time plunges into the exotic realms of black holes and quarks, of antimatter and "arrows of time," of the big bang oand a bigger God - where the possibilities are wondrous and unexpected. With exciting images and profound imagination, Stephen Hawking brings us closer to the ultimate secretes at the very heart of creation.
ペーパーバック版: 2018年10月16日刊行、226ページ。
Kindle版: 2017年刊行、226ページ。

著者について:
Stephen Hawking was the Lucasian Professor of Mathematics at the University of Cambridge for thirty years and the recipient of numerous awards and honors including the Presidential Medal of Freedom. His books for the general reader include My Brief History, the classic A Brief History of Time, the essay collection Black Holes and Baby Universes, The Universe in a Nutshell, and, with Leonard Mlodinow, A Briefer History of Time and The Grand Design. He also co-authored a series of children’s books with his daughter, beginning with George's Secret Key to the Universe. Stephen Hawking died in 2018.

ホーキング博士の著書: 日本語版 英語版


理数系書籍のレビュー記事は本書で378冊目。

今年3月に亡くなったホーキング博士の代表作「ホーキング、宇宙を語る」の原書である。とね日記で洋書のレビュー記事を書くのは初めてのことだ。日本語版は先日「ホーキング、宇宙を語る:スティーヴン・W. ホーキング」として記事を書いたが、原書初版から改訂されていないため、この名著がどのような形で最終版となったかが気になったから英語版(2017年刊行)を電子書籍で通読してみた。

また10月16日にはペーパーバック版も発売された。アマゾンの「なか見!検索」や「内容紹介」、「表紙のイメージ画像」は日本語サイト、アメリカのサイトともにいいかげんである。届いた本を確認した上で実際のところをお伝えさせていただくことにした。

アマゾンに表示されている表紙はこちら。しかし実際に届く本の表紙は違う。



英語原書は1988年に刊行され、その後1998年と2011年に改訂されている。日本語訳は残念ながら1988年版の原書のままだ。翻訳を担当された林一先生は現在85歳になられている。

ホーキング、宇宙を語る(文庫版):スティーヴン・W. ホーキング」(1995年刊行)
ホーキング、宇宙を語る(単行本):スティーヴン・W. ホーキング」(1989年刊行)
 

章立てはこのとおり。

第1章:私たちの宇宙像
第2章:空間と時間
第3章:膨張する宇宙
第4章:不確定性原理
第5章:素粒子と自然界の力
第6章:ブラックホール
第7章:ブラックホールはそれほど黒くない
第8章:宇宙の起源と運命
第9章:時間の矢
第10章:物理学の統合
第11章:結論―人間の理性の勝利


2017年、2018年の原書のペーパーバック版とKindle版を比較したところ表紙のデザインを除き、中身はまったく同じだった。ISBNコードとASINコードは次のとおりだ。書店で購入される方はご注意いただきたい。

ISBN-13: 978-0553173253(ペーパーバック版、2018)
ASIN: B004WY3D0O(Kindle版、2017)

原書の目次は次のとおり。初版から追加された部分を太字にしておく。

Foreword(まえがき)
Foreword to the 2017 Edition(2017年版のまえがき)
Chapter 1 - Our Picture of the Universe(私たちの宇宙像)
Chapter 2 - Space and Time(空間と時間)
Chapter 3 - The Expanding Universe(膨張する宇宙)
Chapter 4 - The Uncertainty Principle(不確定性原理)
Chapter 5 - Elementary Particles and the Forces of Nature(素粒子と自然界の力)
Chapter 6 - Black Holes(ブラックホール)
Chapter 7 - Black Holes Ain't So Black(ブラックホールはそれほど黒くない)
Chapter 8 - The Origin and Fate of the Universe(宇宙の起源と運命)
Chapter 9 - The Arrow of Time(時間の矢)
Chapter 10 - Wormholes and Time Travel(ワームホールとタイムトラベル)
Chapter 11 - The Unification of Physics(物理学の統合)
Chapter 12 - Conclusion(結論)
Albert Einstein
Galileo Galilei
Isaac Newton
Appendix
Glossary

各Chapterの記述もわずかではあるが初版から1996年版までに発見された新しい事実が追加され改訂されている。「虚時間説」や「無境界仮説」などホーキング博士オリジナルの理論も詳しく解説されている。

そして1996年版から2017年版での大きな改訂はChapter 10とAppendix(付録)だ。ここには次のことが10ページに渡って書かれている。

Chapter 10の内容

過去へのタイムトラベルは因果律が崩壊してしまうため、現代物理学では不可能とされている。しかし、ワームホールを利用すれば可能であることが解説される。

次のような流れで話が進む。

- 一般相対性理論のゲーデル解から導かれる「ゲーデル宇宙」では、タイムトラベルが可能となるという話。
- 宇宙ひもを使ったタイムトラベルの話。
- 光速を超えることによるタイムトラベルの話。
- アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ(ワームホール)によるタイムトラベルの話。
映画『インターステラー(2014)』」でもワームホールによるタイムトラベルが描かれている。
- カシミール効果によってCTC(Closed Timelike Curve)が作られ、タイムトラベルが可能になる話。
- 反粒子が時間をさかのぼる話。(ファインマン図)

ホーキング博士とタイムトラベル
https://www.bttp.info/physics/hawking-time-travel/

この章では過去へのタイムトラベルが実現する余地は残されていると締めくくっている。


Appendixの内容

Dark Energy and the Accelerating Expansion of the Universe
(ダークエネルギーと宇宙の加速的膨張)


Microwave Background Radiation and the No Boundary Proposal
(マイクロ波背景放射および無境界仮説の提案)


ここではCOBE (1992)、WMAP (2001)、Planck (2013)による宇宙マイクロ波背景放射観測の結果を受けて記述が追加されている。(参考記事:「宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス」)

Eternal Inflation and the Multiverse
(永久インフレーションおよびマルチバース)


Gravitational Waves
(重力波)


2015年9月にLIGOで重力波が初観測され2016年2月に発表されたこと、そしてそれに対する感想が書かれている。(参考記事:「重力波の直接観測に成功!」)

The Information Paradox
(情報パラドックス)


LIGOでの重力波観測に興奮した理由として、これがブラックホールの情報パラドックスとして知られる大きな矛盾に直結していることがあげられる。この問題に対する博士の見解の変遷が書かれている。(参考記事:「ブラックホール戦争:レオナルド・サスキンド」)

Outlook
(将来の展望)


次のように締めくくっている。重力波の観測による初期宇宙の理解の進展、ダークエネルギーや宇宙の加速的膨張など目覚ましい発展に心が躍るが、いまだ私たちは世界のごく一部を理解しているに過ぎない。マルチバースの証拠が得られるのはそう遠くないかもしれない。これまでの20年と同じくらいエキサイティングなことが待ち受けていることだろう。


英語原書(ペーパーバック版)

初版からの改訂の歴史をまとめておこう。初版の表紙も捨てがたいから、購入のためのリンクを貼っておく。

英語版ウィキペディア(ページを開く)には各版の説明があるが、大きな違いがあるようには見えない。

1988年:初版(ISBN-13: 978-0553346145)

A Brief History Of Time (1988): Stephen Hawking」(ペーパーバック)


映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(2004)』には、男が1988年刊行の『ホーキング 宇宙を語る』の初版本を読んでいるシーンがある。

拡大


1998年:第2版:Chapter Ten Wormholes and Time Travel (第10章「ワームホールとタイムトラベル」が追加された)

2011年:第3版:This new edition includes recent updates from Stephen Hawking with his latest thoughts about the No Boundary Proposal and offers new information about dark energy, the information paradox, eternal inflation, the microwave background radiation observations, and the discovery of gravitational waves. (無境界仮説、ダークエネルギーの新情報、情報パラドックス、永久インフレーション(Eternal Inflation)、宇宙背景放射の観測、重力波の発見 - ただし重力波が直接検出されたのは2015年9月だ。(参考記事))

2018年:第4版

A Brief History Of Time (2018): Stephen Hawking」(ペーパーバック)


内容は2017年Kindle版とまったく同じである。(表紙は届いたペーパーバック版を撮影したものだ。)


英語原書(Kindle版)

どの版のリンクから「Kindle版」をクリックしても、購入できるのは2017年版だけである。

A Brief History Of Time (2017): Stephen Hawking」(Kindle版)



動画

本書に関連して、この動画をお勧めしたい。紹介してくださった桂蓮様、ありがとうございました。

Stephen Hawking - A Brief History Of Time 1991



ホーキング博士がお書きになる英語はシンプルでとても読みやすい。本書は分量が手ごろで理系の人が洋書に慣れるのにうってつけだ。ぜひ、お読みになっていただきたい。


新刊案内:

ホーキング博士がお書きになった最新刊(最後の本)の日本語版が先月刊行されたので原書とともに紹介しておこう。ブラックホールについてのQ&Aも書かれている。(紹介記事

ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう:スティーヴン・ホーキング」(Kindle版
Brief Answers to the Big Questions: the final book from Stephen Hawking」(Kindle版
 

この本では以下の難問に対してホーキング博士は回答している。

1. 神は存在するのか?
2. 宇宙はどのように始まったのか?
3. 宇宙には人間のほかにも知的生命体は存在するのか?
4. 未来を予言することはできるのか?
5. ブラックホールの内部には何があるのか?
6. タイムトラベルは可能なのか?
7. 人間は地球で生きていくべきなのか?
8. 宇宙には植民地を建設すべきなのか?
9. 人工知能は人間より賢くなるのか?
10.より良い未来のために何ができるのか?

神は存在するのか? ホーキング博士が遺作でも強調した「答え」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58046


ホーキング博士の著書は、日本語タイトルは原書とだいぶ違うので、対応関係を書いておく。

ホーキング、宇宙を語る(A Brief History of Time, 1988)
ホーキングとペンローズが語る 時空の本質(The Nature of Space and Time, 1996)(紹介記事
ホーキング、未来を語る(The Universe in a Nutshell, 2001)
ホーキング、宇宙の始まりと終わり(The Theory of Everything, 2002)
ホーキング、宇宙のすべてを語る(A Briefer History of Time, 2005)
宇宙への秘密の鍵(George's Secret Key to the Universe, 2007)
ホーキング、宇宙と人間を語る(The Grand Design, 2010)
ホーキング、自らを語る(My brief History, 2013)
ホーキング、ブラックホールを語る(Black Holes, 2016)(紹介記事
ホーキング、最後に語る:多宇宙をめぐる博士のメッセージ(A Smooth Exit from Eternal Inflation?, 2017というホーキング博士の最後の論文の解説本)



映画『博士と彼女のセオリー(2014)』 :

ホーキング博士の人生を描いた『博士と彼女のセオリー(2014)』という映画が作られた。Prime Videoのリンクと無料で見れる予告編動画を紹介しておこう。

Prime Video: 字幕版 吹替版

映画『博士と彼女のセオリー』 日本版本予告: YouTubeで再生


映画『博士と彼女のセオリー』未公開シーン: YouTubeで再生


映画『博士と彼女のセオリー』エディ・レッドメイン&監督が明かす舞台裏: YouTubeで再生



関連記事:

ホーキング、宇宙を語る:スティーヴン・W. ホーキング
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1e3dbc9b3d10d4a9b6518b6b32429e22

ホーキング、ブラックホールを語る:BBCリース講義
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6fb5c3578db1c26382c831983fd44e04

ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう:スティーヴン・ホーキング
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f45aa5bd48c74a64ca3aafaa0083b8a8

ホーキングとペンローズが語る 時空の本質―ブラックホールから量子宇宙論へ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/619ab76ac18fd5c0416ff82e4cad85f4

ホーキング博士の訃報に接し (Stephen Hawking passed away)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/63860b8ac08b47f1fc9c5cbac3f9ca8f

ブラックホール戦争:レオナルド・サスキンド
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c8ad22de70df7be8e51a066ca8354106


 

 


A Brief History of Time (2017, 2018): Stephen Hawking」(Kindle版


Foreword(まえがき)
Foreword to the 2017 Edition(2017年版のまえがき)
Chapter 1 - Our Picture of the Universe(私たちの宇宙像)
Chapter 2 - Space and Time(空間と時間)
Chapter 3 - The Expanding Universe(膨張する宇宙)
Chapter 4 - The Uncertainty Principle(不確定性原理)
Chapter 5 - Elementary Particles and the Forces of Nature(素粒子と自然界の力)
Chapter 6 - Black Holes(ブラックホール)
Chapter 7 - Black Holes Ain't So Black(ブラックホールはそれほど黒くない)
Chapter 8 - The Origin and Fate of the Universe(宇宙の起源と運命)
Chapter 9 - The Arrow of Time(時間の矢)
Chapter 10 - Wormholes and Time Travel(ワームホールとタイムトラベル)
Chapter 11 - The Unification of Physics(物理学の統合)
Chapter 12 - Conclusion(結論)
Albert Einstein
Galileo Galilei
Isaac Newton
Appendix
Glossary
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12 コメント

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タイムマシン (hirota)
2018-10-25 13:11:26
「ワームホールとタイムトラベル」ってキップ・ソーン博士のワームホール・タイムマシンのことですかね?
あれは思い込みによるトリックがあるから、そのままではタイムマシンが出来ません。
もっとも、分かってて言ってるのか、タイムマシンにする回避方法はあるけど気づかない人に言っても面倒だから言わないだけなのか分かりませんが。(回避方法は僕には分かりません)
僕は図解なしで説明なんて無理だし図があっても面倒なので放置。
返信する
Re: タイムマシン (とね)
2018-10-25 14:58:15
hirotaさんへ
お久しぶりです。失礼しました。本書にはキップ・ソーン博士のワームホール・タイムマシンの話はでてきません。書かれているのはアインシュタイン・ローゼン・ブリッジのワームホールに関する説明です。
Chapter 10の内容をもう少し詳しく書き足しておきました。

いずれにしても、ワームホールが存在するとは僕も思えませんし、ワームホールを利用するタイムトラベルが実現するとは思っていません。この章はSFっぽい話がほとんどだと思いました。けれども高校時代にはブラックホールさえも僕にはSFだと思えていたことも事実です。理論物理学って、これくらい発想力、妄想力が豊かでないと先へ進めないのでしょうかねぇ??
返信する
Unknown (桂蓮)
2018-10-27 06:44:34
Since you posted about Hawking's book, I tried to find a documentary which would be related with the book.
At the Amazon I found below movie,

A brief history of time
1991
starring:Stephen Hawking, Roger Penrose, John Wheeler
Directed by:Errol Morris

The movie's overview says:
Errol Morris turns his camera on the most fascinating men in this world:pioneering astrophysicist Stephan Hawking, afflicted by a motor neuron disease that has left him without a voice or the use of his limbs.
Telling that the man's incredible story via the voice of his colleagues and loved one.
A brief history of time is a single life and as big as the ever-expanding universe.

I quoted Amazon video overview above because I want to comment which is certainly related with your article.
I always like to read your blog, you give me useful information a lot to know what is happening in this era and happened before in science.
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ワームホール (hirota)
2018-10-27 15:09:45
本物のブラックホールがあるなら物理的にありそうもない例外(シュバルツシルト解)を除いて皆ワームホールです。
本物と言うのは「突入しようとしても目の前で蒸発して入れない」ものを除く意味です。
ブラックホールの相補性で外部から蒸発したように見えても突入者には通過できるならワームホールです。
ただし、これをタイムマシンにするのは不可能としか思えませんが。
科学に限らず論理思考に必要なのは常識に縛られない事でしょう。
常識とは過去の実例から成り立つようにみえる仮説に過ぎませんから。
返信する
桂蓮様 (とね)
2018-10-27 16:47:27
桂蓮様
ビデオを紹介していただき、ありがとうございました。調べてみたところ、このビデオはAmazon.comのPrime Videoでは見れるようですが、Amazon.co.jpのPrime Videoからは見れないようです。
おそらく同じビデオだと思われるものをYouTubeに見つけましたので、記事に埋め込んでみました。これと同じでしょうか?
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Re: ワームホール (とね)
2018-10-27 16:50:20
hirotaさんへ
そのようなものもワームホールであるわけなのですね。てっきりミミズのように伸びる形で時空が曲がっているものをワームホールと呼ぶのだと思っていました。これも先入観にとらわれたイメージですね。
返信する
ワームホール例 (hirota)
2018-10-28 13:47:31
ノルドシュトルム解(帯電ブラックホール)に突入する場合を説明します。
まず、地平面を越えると中心方向座標が時間の性質を持って(時間は止まれないので)停止も逆行も不可能な領域に入り、そこを通過すると中心部の正常な時空に入ります。
その中心に数学的な解としては特異点があるはずですが、特異点なら無限大の斥力が働いてますから押し戻されます。(ここは正常な時空なので逆転できる)
そして再び停止不可能領域を通ってブラックホール外に出ます。
しかし、そこは元の宇宙ではありません。
また、戻ろうと思って再度飛び込んでも元の宇宙には帰れず、さらに別の宇宙に行くだけです。
つまり、別宇宙への一方通行通路という意味のワームホールです。
なお、特異点があるはずの所では無限大の斥力に逆らって質量が集積できるはずもないので実際は特異点など無いでしょう。
落下質量も別宇宙に行ってるなら良いですが、下手すると天体を作ってて衝突するかもしれません。
ブルーバックスの「相対論的宇宙論―ブラックホール・宇宙・超宇宙 佐藤文隆, 松田卓也」で、この状況を図示したペンローズ図を見て自分で確かめたいと思ったのが一般相対論を勉強する動機でした。
返信する
Re: ワームホール例 (とね)
2018-10-28 14:19:55
hirotaさんへ
とてもためになります。

以下はサンプルPDFですが、hirotaさんにご説明いただいたことはこの本の第11章あたりですね。

SGC ライブラリ-63 重力理論講義
相対性理論と時空物理学の進展
http://www.saiensu.co.jp/preview/2016-978-4-7819-9910-4/SDB11_sample.pdf

広江さんが実際に解き方を公開されているのにも気が付きました。

ライスナー・ノルドシュトロム解
http://eman-physics.net/relativity/nordstrom.html

hirotaさんが出会ったのはこの本ですね。Kindle版で買ってみました。
新装版-相対論的宇宙論―ブラックホール・宇宙・超宇宙-ブルーバックス-佐藤文隆
https://www.amazon.co.jp/dp/406257425X/

あとこのようなページも見つけました。

「タイムトレベル」その4
https://blog.goo.ne.jp/sonokininatte55/e/25df6851f3ccb8350e0246171f66a962
返信する
特異点 (hirota)
2018-10-29 13:40:45
ブラックホールに特異点ができる理由は、物質があると計算が面倒なので真空中の重力場を求めるからです。
真空という条件を付けてるので、重力源となる質量は特異点に押し込まれてしまい、必然的に特異点が存在するわけです。
というわけで特異点は物理的理由のない条件の結果に過ぎませんが、それが現実となる状況も存在します。
それがシュバルツシルト解ですが、この場合は中心で重力ポテンシャルがマイナス無限大になっていて、重力ポテンシャルはそのまま計量の時間成分になってますから、遠方の平坦時空で座標時と固有時の比率(その2乗が計量の時間成分)が1という値から近づくにつれて減少し、0になった所が時間停止面とか事象の地平面とか言われる所で、その内側は時間比率の2乗が負の虚数時間となりますが、ここでは時間と空間の役割が入れ替わって中心方向が未来となります。
つまり、時間が進むことが中心に進むことと同義になりますから停止不可能な領域です。
ここに入れば中心に向かうしか許されませんので、落下した全質量は1点に集まり物理的理由のある特異点となります。
それに対して裸の特異点と言うのは停止不可能領域に包まれずポテンシャルが低すぎる値にもなってない特異点ですから質量が集積する理由がありません。
もちろん以上は一般的結論ではなくペンローズ・ホーキングの特異点定理のように全体のしわ寄せで出来る特異点や宇宙の初めから存在する特異点には適用できませんが、普通に質量が集積して出来るブラックホールには通用するでしょう。
「タイムトレベル」その4のように裸の特異点を安易に肯定する人は以上のことを知らないのか知ってて騙してるのか分かりませんが、まともに受け取る価値はありません。
返信する
Re: 特異点 (とね)
2018-10-29 19:22:31
hirotaさんへ

詳しく教えていただき、ありがとうございます。現実的には物質があるわけですからシュバルツシルト解での特異点というのは、存在しないわけですね。
裸の特異点のご説明も理解できました。

> ここでは時間と空間の役割が入れ替わって中心方向が未来となります。つまり、時間が進むことが中心に進むことと同義になりますから停止不可能な領域です。

これはシュバルツシルト解の文脈でのご説明の部分ですが、実に(非現実的ながらも)興味深いことになるのですね。時間と空間の役割が入れ替わる世界は空想するだけで楽しいです。(数式上そうなることも理解できますし。)
返信する

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