とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

開平と開立(第3回): 青葉計算アカデミーの心強い味方

2017年01月18日 20時15分41秒 | 開平、開立


平方根と立方根の計算手順を学ぼうとネット上の資料でこれまで調べてきた。筆算の手順は比較的覚えやすいが、算盤での手順はややこしい。僕が参照していた資料は主にこの3つ。

開法(開平法と開立法のこと): PDFファイル
http://www.yokozuna.org/abacus/kaiho.pdf

ADVANCED ABACUS TECHNIQUES JAPANESE SOROBAN & CHINESE SUAN PAN
http://webhome.idirect.com/~totton/soroban/

開平開立に就きて(東京 数理専修学院):筆算での解法
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/918405


2006年に作成された日本語のPDF資料がとてもわかりやすく丁寧だ。ドメインは www.yokozuna.org だから相撲好きの人が書いたのだなと思っていた。トップページを開くとこうなる。

Welcome to Yokozuna.Org(Yokozuna.Orgにようこそ。若干の算盤(そろばん)ネタを掲載しています。)
http://www.yokozuna.org/


神さま登場!?

誰が書いた文書なのか気にせず、3週間ほどPDF資料で勉強を続けていた。そして先日トップに載っている著者のIDらしきものを見てハッとしたのだ。名前のイニシャルまで一致している。



「あああっ!! これってあの大関さんの文書だ!」

大関さんはもちろん相撲の力士ではない。彼は僕の友人で算盤の名手だ。趣味が高じ、「そろばん教室を開くのだ。」と言って数年前に会社を辞めていたことを思い出した。

間抜けである。それは将棋の駒の並び方を覚えたばかりの男が「そういえば子供のころ羽生くんっていう将棋がやたらと強い子がいたけど、いま頃どうしてるのかな。」と言っているようなものだから。

昨日数年ぶりに大関さんと連絡をとった。そして2011年に開校した彼のそろばん教室のホームページを見てびっくり。経歴を見ると珠算、暗算ともに最高位の十段であるばかりでなく、全国計算競技大会個人優勝、そろばんクリスマスカップ日本一など、全国規模の競技会での実績多数。そして北大理学部数学科卒業、同大学院修士課程修了でもある。

今の僕には、まさに「神さま登場!?」のようなものである。


青葉計算アカデミー

ということで今日は大関さんが主宰する「青葉計算アカデミー」を紹介しよう。

青葉計算アカデミー:次元の違う珠算式高速暗算教室(横浜市青葉区市ヶ尾町)

http://aoba.keisan.ac/
http://www.aoba-ku.jp/request/area/shop_detail/1528/



主宰者の大関一誠さん: 経歴


昨夜、授業が終わって教室に残っていた大関さんとチャットしてみたところ開平と開立は珠算の段位をとるために必要だそうで、彼は特に力を入れて学んでいたそうだ。「マスターした。」というレベルをはるかに超えていると感じた。十段というのは「級」もとっていない入門レベルの僕にとっては想像のつかない世界。最近疑問に思っていた素人ながらの質問をさせていただいた。

僕:「開平や開立って筆算で計算したほうが楽というか僕には覚えやすいです。なぜ江戸時代とか筆算ではなく算盤でやっていたのかというのが不思議ですね。」

大関さん:「筆算だと場所が上書きできずにどんどん増えていくけど、そろばんだとその場でどんどん動かせるからですかね。」

確かにそうだ。第1回第2回の記事で計算したように数字に置き換えたとしても筆算式のほうがあっという間に桁が増えてしまう。数字表記を算盤に移すと桁が足りなくなってしまうのだ。その半面、算盤には履歴が残せないというデメリットもある。

あと算盤の開平と開立の練習問題は答が自然数になるものがほとんどだ。でも答が無理数になる場合だって解けるはずである。大関さんは無理数になる場合の解法例をひとつ送ってくださった。計算を途中で切り上げて残りは近似計算するというやり方である。


ファインマン先生と算盤の達人の対決

大関さんが送ってくださった解法例は、物理学ファンにはおなじみの「1729.03の立方根の計算」である。



物理学者のリチャード・ファインマンは自伝の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の中で、日本人の算盤の達人(算盤のセールスマン)と計算のスピードを競い合ったエピソードを紹介している。加算、減算、乗算では算盤の達人に負けたが、複雑な除算では引き分け、立方根の問題では圧勝した。これは幸運にも立方根を求めるよう選ばれた数字が 1729.03 であり、1立方フィートが1728立方インチであることおよび誤差をどのように概算すべきかをファインマンが知っていたためである。このエピソードは「ラッキーナンバー」という小話に含まれていて、文庫本だと下巻の10ページ目から始まっている。

Feynman vs. The Abacus
http://www.ee.ryerson.ca/~Elf/abacus/feynman.html

An Interesting Number (Feynman: 1729, 1729.03)
http://www.cut-the-knot.org/blue/InterestingStory.shtml

Feynman 氏の計算
http://www.math.u-ryukyu.ac.jp/~suga/ssh3/node6.html


この1729.03という数字は12の3乗の1728と近いため、ファインマン先生にかなり有利な例だ。そのほかの数だとどうなのだろう?依然ファインマン先生が勝っていたのだろうか?算盤でこれを計算するのはどれくらい大変なのだろう?

大関さんが送ってくださった算盤での解法手順は、いずれこの連載記事で紹介させていただこう。(大関さんによる解法手順を紹介した記事

強力な味方を見つけたとはいえ、勉強は自分ですることが大事だ。大関さんに頼らずなるべく自分で解決することを心掛けたい。


江戸時代の算盤事情、和算

江戸時代の算盤事情については「武士の家計簿:磯田道史」という記事を書いたことがある。この時代の有名な算術書「塵劫記」には(ファインマン先生がたまたま知っていた)1728の立方根12を求める方法が示されているそうだ。(Amazonで現代語版の塵劫記を検索

塵劫記に書かれている1728の立方根(=12)の計算手順の解説(クリックで拡大)
 

塵劫記(電子画像)
http://mahoroba.lib.nara-wu.ac.jp/y05/html/380/

新編塵劫記(国立国会図書館デジタルコレクション)
http://www.ndl.go.jp/math/s2/1.html

日本人の数学力をたどる : 平成15年度京都大 学附属図書館公開企画
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/141905/1/wasan.pdf

和算における開平法のルーツ―ギリシャから日本まで―
http://nirr.lib.niigata-u.ac.jp/handle/10623/31378


算盤を始めたい方へ

これを機に始めてみようという方には、この2冊をお勧めする。特に田園都市線沿線にお住まいの方は「青葉計算アカデミー」の門をたたいてみてはいかがだろうか?

僕は「はじめてのそろばん」のほうを使って練習を進めてきた。どちらも同じような本だが「はじめての~」のほうは3桁の数字で割る割り算まで、「いちばんわかりやすい~」のほうは2桁の数字で割る割り算までという違いがある。

集中力&計算力アップ! かならずわかる! はじめてのそろばん
いちばんわかりやすい そろばん入門

 

算盤をAmazonで検索: 11桁 15桁 23桁 27桁
算盤をヤフオクで検索: 11桁 15桁 23桁 27桁 ソロカル

小学校では現在3、4、6年生で算盤の授業が行われているようだ。僕が小学生だった頃は子供は算盤を買わされたものだが、いまは学校に備えてある算盤を使って授業をするそうだ。

小学校学習指導要領(算数)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/san.htm


余談: 開平と開立の連載記事ばかり続いているのは、いま読んでいる理数系書籍が650ページあって時間がかかっているからである。現在200ページあたりまで進んでいるので、本の紹介記事はあとしばらくお待ちいただきたい。

第4回の記事に続く。


関連ページ:

そろばんに学ぶ人生教訓:全国大会で優勝/市ヶ尾・大関さん
http://www.townnews.co.jp/0101/2012/02/16/135294.html

青葉計算アカデミー主宰 大関 一誠(青葉区.jp)
http://www.aoba-ku.jp/request/area/owners_profile_d/369/

計算アカデミー
http://keisan.ac/

日本珠算連盟
http://www.shuzan.jp/

(社)全国珠算教育連盟
http://www.soroban.or.jp/

財団法人全国珠算連盟
http://sfoj.or.jp/

そろばん普及委員会
http://www.sorobanfukyu.com/

そろばん珠算教室・塾検索
http://そろばん珠算.教室検索.jp/


算盤メーカー:

トモエそろばん
http://www.soroban.com/

雲州堂(雲州算盤
http://www.unshudo.co.jp/

株式会社DAIICHI(播州算盤
http://daiichi-j.com/


そろばん入門サイト:

初心者のためのそろばんの使い方
http://soroban-no1.com/

そろばんのやり方!動画で基礎になる足し算の練習方法を公開!
http://thankyoublog.info/11191.html

そろばんの使い方!動画で引き算の基礎練習を公開!
http://thankyoublog.info/11244.html


関連記事:

目次:算盤による平方根、立方根の計算(開平、開立)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bb0449f357398a2c24026f33af7f70ee

武士の家計簿:磯田道史
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/38e15f47cba2eaed5f1787c30b09eb7c

計算尺ノスタルジア (コンサイス計算尺、ヘンミ計算尺)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b91ae7814c1830a9aaf7da77aadf88a8

アポロに搭載された計算尺(Pickett N600-ES)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3898318d7f4b3e84900d9ae2cb80d816

機械式計算機ノスタルジア(タイガー計算器)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/226dd92e17d66ac624b7279776aa77f6

五桁ノ 對數表 及 三角函數表:えふ.げい.がうす著
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8d90de27b13365139c25bbffd9c4f04b


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