前日書きましたように,核磁化がz方向を向いた「熱平衡状態」から,「平衡状態」まで,どのように移行していくか,ということは,TrueFISPなどのような高速イメージングのシーケンスを実施するには,特に重要なテーマです.
というのは,パルスシーケンスを始めてから,実際に撮像を開始するまでには,核磁化が平衡状態となる必要があり,これには,しばらくの時間が必要だからです.
多くの場合,T1の程度の時間を待てば良い,と言われています.たとえば,T1=1秒の被写体を,TR=100msで撮像する場合,データ収集を開始するためには,10回くらいの空のシーケンス(ダミーシーケンス)を走らせれば良いと言われています.ただし,これは経験的なものです.
これに対し,きちんと結論を出すためには,核磁化(分布)に対する計算機シミュレーションをしなければなりません.
上に示したのは,その一例です.静磁場のオフセット(ずれ)を有する核磁化に対して,繰り返しRFパルスを印加したときの核磁化の動きを,Bloch方程式を用いて計算しています.このように,核磁化は,複雑な分布となります(ただし,簡単のため,緩和時間は考慮していません).