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どうも、こんにちは。
今年(2021年、令和3年)の『霊場魔所の桜』シリーズの第4回目です。
今回は、京都・東山、高台寺の桜を巡ります。
この古刹は、毎年夏に行われる「百鬼夜行展」など妖怪関連イベントも多数開催し、本シリーズでも、シリーズ第51回やシリーズ第648回など、本シリーズで何度も取り上げたことあります。
しかし今回は、今までとは違った切り口で。
今回は、能『自然居士(じねんこじ)』の元ネタとなった伝承に思いをはせながら、高台寺の庭園と桜の光景を巡ります。
現在の高台寺には、かつて雲居寺(うんこじ/うんごじ)という寺院があり、そこには「自然居士(じねんこじ)」という僧侶が居たそうです。
先月(2021年3月)後半の某日、京都・東山、通称「ねねの道」の夕刻。
我がお気に入りの散策スポットのひとつであり、ここにも桜の花が。
入り口には庫裡(くり。寺の住職や家族の住居)が。
そこから中へ。
ここも何度も訪れ、見慣れた光景ですが、その途中にも桜が。
ここで、ここ高台寺と、その更に前にこの地にあった雲居寺(うんこじ/うんごじ)について簡単に説明を。
高台寺とは、あの豊臣秀吉の正室‘北政所(きたのまんどころ)’ことねねが、秀吉の死後にその菩提を弔うために建立し、またねね本人が晩年を過ごしたという場所としても有名です。
ねね本人が今も眠るという「霊屋(おたまや)」や。
大坂夏の陣の時、「そこから大阪城の炎上を見て、豊臣家の滅亡を知ったねね以下豊臣家の縁者が泣いた」という茶室・時雨亭。
「霊屋」へと通じ、晩年のねねが上り下りしていたという「臥龍廊」とか。
「こんな急な通路を上り下りしていたとは、ねねさんは歳をとっても割と身体頑強な人だったんだな」とか思いましたが。
こういう名所が幾つもあります。
ねねの発願によって高台寺が建立されるよりも前には、この地には「雲居寺(うんこじ/うんごじ)」という、桓武天皇の菩提寺でもあったという天台宗寺院が建っていたと伝えられています。
雲居寺は崇徳天皇の時代に建立され、境内には8丈(約24メートル)の弥勒菩薩像が、野外の東山の野一面には100丈(約300)の弥勒像を建てたという伝承も遺されています。
「ホンマ、かいな?」とか思いましたが、そんな伝承も遺るほど、当時は結構力のある大寺院だったと想像できます。
ただ、応仁の乱(1467~1477年)で焼失して、現在では存在していませんが。
ここで、高台寺散策に話を戻します。
高台寺の方丈庭園へ。
これまでにも、高台寺の百鬼夜行図をモチーフにしたプロジェクションマッピング(※シリーズ第648回等、参照)や、辰年の「竜の庭」(シリーズ第238回参照)など、いろいろと面白い試みがされてきた庭園ですが。
今回も竜が。
この時既に夕方近く。
傾き始めた陽に照らされた垂れ桜が。
当初は「少し来る時間が遅かったかな、もう少し日の明るい時間に来た方が良かったかな」と思いましたが。
これはこれで、面白い光景かも。
さて、ここで。
かつてこの地にあった雲居寺に居て、能『自然居士(じねんこじ)』のモチーフにもなった、「自然居士」という僧侶の伝承をここで。
「自然居士」という若い僧が、七日間人々を集めて説法をしていました。
その最終日、一人の少年(少女)が美しい着物を持ってやって来ます。
その少年(少女)は、この着物を供養の品として、亡き両親を弔ってほしいと、自然居士に依頼します。
その健気さに、自然居士も、集まった聴衆も涙します。
しかし着物は、貧しい少年(少女)が、東国から来た人買い商人に身売りした金で買ったものであり、その後少年(少女)は、人買い商人に東国へと連れて行かれます。
全てを察した自然居士は、人買い商人を追いかけ、少年(少女)を連れ戻そうとします。
人買い商人が琵琶湖で船を出そうとしていたところに追いついた自然居士は、船を引き留め、「その子を連れて行くなら私もついて行く」とまで言います。
人買い商人は「殺すぞ」と脅しますが、自然居士はそれに屈せず、頑として意思を曲げません。
人買い商人といえども、さすがに仏に仕える僧を殺すことは出来ずに、不本意ながら少年(少女)を解放します。
その代わりに商人は、解放の条件に、自然居士に舞を舞わせて恥をかかせてやって鬱憤晴らしをしようとしますが、自然居士はそれも承知の上で、商人の要求どおりに舞や芸を披露します。
そして、無事解放された少年(少女)と共に、自然居士は都へと帰っていきました。
これが、能にもなった自然居士の伝承です。
なお、自然居士とは架空の存在ではなく、実在した人物だったようです。
ただし、特定の人物のみをさす名前ではなく、布教活動などの為に舞や楽器などの芸も行った半僧半俗の宗教者の集団のことを「自然居士」と呼んでいたそうです。
桜を観て、優しさと強さにあふれる昔の宗教者に思いをはせている間にも日は傾いていきます。
ところで。
今回私が、自然居士の伝承を知ったきっけは、先月書店巡りをしていて見つけた『京都異界紀行』(西川照子、講談社現代新書)という本です。その第七章に雲居寺と自然居士について書かれていたので、今回訪れてみたくなったのです。
現在でも私は、こうした京都の妖怪や異界などを研究されている方々の著作を、折りを見て探し続けています。
京都には私の知らない、見落としている伝承や史跡なども、まだまだたくさんあります。
また、一度自分がとりあげた題材も、別の角度や視点から眺めたら新たな発見もあるかもしれません。
その為に、自分より深く、専門的に、先行的に取材や研究を重ねてこられた方々の著作は貴重で、今後も参考として利用させて頂きたいものなのです。
勿論、『京都異界紀行』にも、私が見落としていた興味深い情報や視点がたくさんありましたので、今後の活動の参考資料として使わせて頂きたいもののひとつとなっています。
京都・八坂の夕景を眺めながら、感慨にふけりながら帰路につきます。
今回はここまで。
また次回。
*高台寺へのアクセスはこちら。
*高台寺のHP
https://www.kodaiji.com/
*『京都妖怪探訪』シリーズ
https://kyotoyokai.jp/
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