ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

ペテルブルク案内記12-3日目:懐かしの警察署-

2006-07-11 20:56:15 | Weblog

【写真:地下鉄警察本部の看板。(29/06)】

 跳ね橋観光からの帰りが早朝になったため、午前中遅めに行動開始。
 11時半過ぎに出かけてまず最初に向かった先はエルミタージュ美術館。ペテルブルクを訪れる観光客ならほぼ全ての人が訪れるに違いない超有名美術館なのだが、私も全てを知っているわけではない。ごく一部の見所だけHに教えて、ここはH一人で見学。ちなみにこの美術館にも外国人料金はあるが、学生はロシア学生、外国人学生問わず無料だからありがたい。
 Hがエルミタージュを見学している間、私は今日見学するイサク聖堂、ペトロパブロフスク要塞の入場券を予め購入しに行く。
 
 Hのエルミタージュ観光には約2時間ほど時間をとった。エルミタージュは全部の部屋をくまなく見て歩くと20kmほど歩くことになるという巨大な美術館のため、いくら時間をかけて回ってもきりがない。一般のツアーも2時間程度で主要な展示品を見てまわるというのが通常らしい。本当はもう少し時間をとっても良かったが、出かけるのが昼近くだったことと、この後訪れる場所の時間配分も考え、14時過ぎにエルミタージュを出る。

 次に向かった場所は警察署。Hのデジタルカメラの盗難証明書を発行してもらうため。実は西方見聞録で既に記述したとおり、私は4月の旅行中にベルリンでデジタルビデオカメラを盗まれ、その時警察ではHに通訳してもらった。今回はこれと逆にHの届け出を私が通訳することに。このことに何だか不思議な因縁を感じたのは私だけではなかった。
 昨年9月に訪れたこの警察は、地下鉄警察の本部でもある。受付で11番の部屋に行くよう言われ、廊下を歩く。昨年来たときとちっとも変わらぬ風景、11番の部屋だけは部屋番号が表示されていないところも同じ。その部屋の前にある長椅子の側には、壁から手錠が5つほどぶら下がっている。あまりに露骨なその光景にはHも驚いていた模様。
 Hとここに座って待つ間、なんだか懐かしさがこみ上げてきた。昨年デジタルカメラを盗まれたのはロシアに来て3週間弱、まだほとんど意志疎通が出来ない頃だった。この椅子に座り、辞書を引きながら警官とコミュニケーションをとった。その様子を見て、廊下でたばこを吸いながら笑っていた警官もいた。ロシア語がほとんど分からないこの日本人にしびれを切らした担当者も辞書を引くのを手伝ってくれて、ここで覚えたのがцель「目的」という単語だった。
 今日は「あんた、ロシア語が分かるか?」から質問が始まり、万事スムーズにいった。証明書の内容をコンピューターに入力している間、別の警官らが「日本はワールドカップで負けてもう帰ってしまったな。」とか、「日本人はどうしてベッカムが好きなのか?」などと話しかけてきた。ロシアは出場していないワールドカップだが、彼らは興味を持って見ていたらしい。
 ある警官には、「どうしてカメラを盗まれてここに来たのだ?」と聞かれた。「証明書をもらって保険会社に...。」と答えると彼は「そしたら保険会社は金をくれるのか?」と聞いてきた。そんな当然のことをどうして尋ねるのか不思議だったが、次の彼の一言でその理由が分かった。「ロシアではカメラに保険金なんておりないぞ。貧しいから。」

 まもなくプリンタから出てきた証明書にスタンプが押され、届け出はあっさりと終わった。昨年同じ事を届け出るのに一体なぜあれだけ苦労したのか、今となっては全く分からない。あの時笑った警官に、今日のやりとりを見せてやりたかった。語学の上達というのは、後で振り返って初めて分かるものなのかもしれない。Hもドイツ語で、似たようなことを感じているのではないか。

 ペテルブルクの観光地めぐりで、まさか警察署案内までするとは思っていなかった。Hにとっては不運な出来事だったが、滅多に足を踏み入れない所に来られたというのをせめてもの慰めにしてもらえればと思う。
 観光客を狙った財産犯はペテルブルクでも頻発しているが、少なくともこのブログの読者から地下鉄警察、11番の部屋のお世話になる方が出ないことを祈るばかりである。




最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hisaki)
2006-07-13 05:11:28
このときはほんとにありがとう。

ロシアの警察には入れたのは貴重な体験だと思うから、デジカメとられたのも今となってはいい思い出です。(ちょっと無理してる、笑)

今、ベルリンにはつくばからの友達が来ています。

いろいろ案内してると、昔はわからなかったことがスムーズにできている自分に気付きます。

なんだかんだで成長しているね。

語学だけじゃなくいろいろな面でも。

些細なことでも、そういうことに気付けるのは嬉しいです。

それでは、引き続きペテルブルク案内記楽しみにしてます。
返信する
盗難 (misato)
2006-07-13 12:36:49
お久しぶりです。

いつも興味深く読ませて頂いています。

「日本人は何故ベッカムが好きなのか?」

思わず笑ってしまいました。

デジカメの盗難が頻発しているのですね。

保険を掛けていて良かったですね。

日本で入って行かれたのですか?又、予防方法はありますか?

以前もお話しましたが、もうすぐ出発する知人に教えてあげなければと思います。

ところで、前回の跳ね橋の写真すごく綺麗ですね。
返信する
Unknown (komachi)
2006-07-14 20:18:56
>hisaki

あの「大事な」デジカメを盗られたのは本当に残念だったね。ペテルブルクでこんなことが起こって、俺もショックでした。



hisakiも今ベルリンでガイドモードなんだね。どこか1つでも外国の街を案内できるって素敵だと思うよ!hisakiの言う通り、この留学では成長したなって思えることが少なくないです。語学はもちろん、精神面でもね。日本に帰ったら留学組サミットでまたI達と語ろうぜ!!

ペテルブルク案内記はようやく昨日完結しました。また日々の様子を掲載していくからよろしく。



>misatoさん

コメントありがとうございます。

海外に行く時は留学、旅行、仕事など目的に関わらず保険をかけていくことが必須です。ロシアビザ取得の際は申請用紙に保険会社を記入する欄もありました。(パリの大使館の場合)。

盗難は残念ながらここでも頻発していますが、予防策としては、貴重品は身につけることです。私はデジカメ盗難以来、カメラをケースに入れてズボンのベルトに固定しています。



跳ね橋の写真、多くの方から好評をいただいています。加工したわけではなく、本物なんですよ(笑)。

ペテルブルクにはあんな素敵な橋があるのです。

返信する
感謝です! (misato)
2006-07-15 13:10:41
いつも丁寧に答えて下さり有難う御座います。早速伝えておきます。

最近、ニュースでそちらの名前をよく耳にします。サミット開催で、小泉さんも行ったからなおさらですね。komachiさんのロシア紹介を読んでいると、ホント良い所なんだな~って思います。あなたはいわば私的「親善大使」ですね。ロシア国に表彰してもらわないとって感じですよ。
返信する
Unknown (komachi)
2006-07-18 17:46:54
>misatoさん

サミットのおかげで(?)ペテルブルクが日本でも報道され、知名度が少しは上がった事でしょう。



お褒めいただきありがとうございます!

でも私は私的「親善大使」というより一方的にロシアやペテルブルクを好きになっただけで、ありのままを紹介しています。

サミット中から比較的涼しい天気のペテルブルクです。白夜も終盤になり、早くも夏の終わりが垣間見える今日この頃、まもなくご出発のお知り会いの方には寒さ対策もお忘れなくとお伝えください!



返信する

コメントを投稿