九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

九重昆虫記の読者の皆様へ―その1

2016-01-18 23:32:05 | 日記
九重昆虫記の読者の皆様へ―その1
 新年早々「九重昆虫記」の出版を続けてくれたエッチエスケーの原田雅之さんが脳梗塞で倒れ回復は難しく廃業したという連絡が妹さんから届きました。昨年5月九重昆虫記第10巻の校正を送ってきたので校了しましたが、その後、彼からの連絡が途絶えました。彼はおそらく私より10歳ほど年下だと思います。私が1986年に文一総合出版から日本の昆虫シリーズ④シンジュキノカワガを出版した時の編集担当者でした。九重昆虫記第2巻以降の出版を引き受けてくれる出版社を探していた時、彼から今は独立して昆虫関係の本の出版しているので自分に任せてほしいと言ってきました。東京農業大学で昆虫学を専攻したそうです。その頃は彼も元気で矢継ぎ早に5巻ぐらいまで進んだと思います。余力があったらしく合間に他の本も出版していたようです。しかし、多分、7巻あたりからペースが落ち、病気で入退院を繰り返すようになりました。それでも第1巻の改訂版と第8巻はスムーズに進行したのですが、第9巻は私の草津市への移転もあって難産でした。第9巻の序文アリストテレスの話などは草津市の自宅で大急ぎで書きました。原稿は第12巻まで完成し第13巻も一部の原稿ができていましたが、虫の知らせというのか、何となく原田さんとの縁は第10巻で終わりそうな予感があったので、最終巻に回すつもりだったその原稿を第10巻分として送りました。私は彼とは一度も会ったことがありません。私も草津市で落ち着いたので、第10巻が出たら一度彼を訪ね、礼を言い、ファーブル昆虫記全10巻に追いついた祝杯を二人であげようと思っていましたが誠に残念なことです。脳梗塞で口がきけない状態から奇跡的に回復することが難しいことは医学部の教授だった私も十分承知していますが、無神論者なのに彼が少しでも回復することを祈っています。