私は経理部門ではないのですが、有価証券報告書の一部を担当していますので、会計士さんの監査の指摘を受けることがあります。
また、プロフィールに新商品のプレ営業なんて書いてますけど、昨今はただ既存商品に「化粧」しても売れないものですから、 足りない頭を金融機関とかにフォロー（丸投げとも言う）してもらいながら、最近の金融スキームを使って「整形」して売り出したりすることもあるんですね。
この辺、詳しくは書けないんで申し訳ないのですが。
で、こっちはビジネスとして考えてるんですけど、会計士さんに「この事業の会計処理ですが・・・」と聞いたところ、 「うーん、これは特別利益ですね」なんて言われたことがありました。
「御社ではまず無いとは思いますが、可能性としては利益操作ができなくはない事業スキームです」
専門の営業マンそろえて、社長が「やるぞ」と全社に声かけるような事業の種を、決算書に特別利益で計上されちゃたまらない。
人はそうそう増やせないから、その事業が拡大すればするほど、営業利益率も経常利益率も低下していくじゃないの。
「いや先生、そう言われましても、このビジネスはアメリカでは既に一定の市場規模があって、国内でも一部に実績例が…」 なんてことを言っても、彼らもそういう新しい会計処理を求められる場合は、法人内で検討会を開いて、 そこで担当の先生が皆を説得しなきゃいけないということで、「確たるロジックがないと…」と譲ってくれない。
どうなんでしょうねえ、こういう先生は投資家の皆さんにとっては、やはり頼りになる存在なのでしょうね。
いや、私としても融通が利かない分、この先生を納得させるロジックなら、（税務署とか）違う箇所から突込みがきても説明が可能という 安心感はあります。
でも、これは同じ監査法人でも、ほかの先生ならこのような指導が行われない可能性が大いにあります。
事実、前の担当の先生は、この程度の話、影響の範囲が収益の数パーセント程度の話なら、比較的簡単に折れてくれました。
それでもこじれる場合は、偉い先生、つまり代表社員（有価証券報告書にサインする人）の方とお話しします。
偉い先生方は、企業会計のルール作りそのものにも携わっていらっしゃいますし、酸いも甘いもかみ分けていらっしゃいますんで、 えてして一部の会計士の方がハマりやすいどうでもいい細かい話については、大所高所からの話でまとめてくれるケースが多いんですね （少なくともウチの場合は）。
で、今回の件。
監査法人の話ではないのですが、逮捕されたカネボウの元社長は「社員を路頭に迷わせたくなかった」と。 これが本心かどうかはわかりませんが、たぶん、あちらの粉飾の代表例、エンロンの経営陣の動機とは違うんだろうなと。
担当の会計士が情に絆されたとは思いませんが、酸いも甘いも知りすぎて、舌が麻痺してしまった可能性は高いのかなと思います。
さて、今後ですが。。
間接的に市場と向き合う立場にあり、いろいろな金融行政に直接的に従う身として、2000年以降の業界関係者に共通して感ずることは、「羹に懲りて…」という点です。
つまり、融通の利かない先生が増えていくんじゃなかろうかと。
不真面目な（或いは真面目を履き違えた）会社のおかげで、真面目な会社の事務作業、コストが増えていくわけですね。
「羹に懲りて…」の代表格、金融庁からまた何かお達しがあるのかなと。
いろいろな再発防止＝投資家保護の対策が話し合われることになるかと思いますが、ローコストの方式で頼みたいところです。
で、いかなる方策をとろうとも、穴は防ぎきれないものと思います。
ならば現状プラスアルファ程度の方策で線引きして、「自己責任」で括ってしまっても良いのではないか。
投資家の皆さんには、普段の情報開示の姿勢（決算のスピードとか、四半期開示のボリュームとか、減損会計への対応の早さなど）とか、商売の方向性とか、社長のキャラとか、どこの監査法人を使ってるとか、そういったものを総合的に見てもらって判断してもらうというか。
普通の商売やってる側からすると、信用というのはそういうものの積み重ねという意識があるんですよね。
まあ、これらもコストはかかるんですけど、性格的に前向きですからね。こういう方向を評価していただけると、真面目な会社のインセンティブにもなるんですよね。
規制というムチばかりだとムチから逃れようとする意識が起きる。でも真面目さが認められるような雰囲気になれば、その真面目さを競うようになる。
JR事故の件でも、いろんな環境問題でも、企業の不祥事防止へのキーというのはこの辺にあるんじゃないかなと思うのですが。
（9/19 一部加筆訂正しました）
