kochikika ノート

旧「こちら某中堅企業企画室」。リーマン話、時事の話、パリーグ話など。ぼちぼちやってます。

「会社は誰のものか」に関する異説に思う話

2006-02-28 00:01:44 | 仕事関連

昔の話を何度も引っ張り出すのは何なのですが、フジとライブドアの一件のとき、ライブドアの方がおかしいだろうと思った人も一定数いたと思うのです。しかしご承知の通り、識者の意見はグレーだがセーフ、そして司法の判断もフジ(ニッポン放送)の方がおかしいよと。

こうなるとアンチLDサイドとしては黙るしかなく、会社は株主のものという商法的会社法的に正しい考えが改めて認知されたわけですね。そこはしょうがないと。

その後「会社は誰のものか」論が巻き起こりましたが、論戦やアカデミックな話としては互角であっても、藤原先生が「従業員のモノに決まってます」と仰っていても、実務上としてはもう軍配は明らかでした。

で、年が明けて堀江氏があのような事態になってしまい、ああいう会社を社会として容認してしまったことへの反省は沸き起こっているのですが、それでも彼らのあの時点での行動についてはシロであるという論は揺るぎない状況に変わりはないわけです。

それは本日現在、そして今後当面は実務上もそういう状況に変わりないと思われるのですが、法律の専門家で、やはりアレはおかしかったとする意見を見つけたので(企業法務の専門家はとうにご存知だと思いますが。なお当方は法律の条文を眺めただけで眠くなる者であります)、ご紹介することとします。

早大法学部の大学院教授である上村達男教授が唱えているのですが、要するに一連の取引は会社法的にはシロだが、証取法的にはクロであると(証取法的にクロであるとするのは上村教授のご意見)。
で、クロいやり方で取得した株主構成は間違っているにもかかわらず、会社法はそれを保護する形になってしまい、ああいう司法判断になってしまうと。

ただこの方が、こういった会社法関係の世界でどのようなお立場(つまり多数派か少数派か)にあるかは存じませんので、その辺はご容赦。

素人が簡単にまとめると上記の数行で終わってしまうのですが、当然ながら法的ロジックが積み上げられているわけです。聞いたことない単語が並ぶので私の頭では理解不能でしたが、そこはすっ飛ばすこととして、上記のようなクロだけどシロになる事例を防ぐためにも、先生は「公開会社法」を作れと仰っています。

あまり聞かない論点(上記「公開会社法」について)でしたので表題を「異説」としました。この点は教授にご容赦。

「公開会社法」の要件についてもよく理解していないところがあるのですが、読んで字のごとく、株式公開している会社については、証券市場とのリンクを重視した会社法を適用するべきだということだと思われます。
先生曰く、会社法の伝統理論では「個人商人の世界と大規模公開企業の世界があまり変わらない」とのことですから。

もう新しい会社法が施行されますので、実務上の軍配の行方は変わらないですし、グレーな手口も徐々にやれなくなるとのことですから、「公開会社法」の実現はまさにグレーなんでありますが、法的な立場からLDクロ論を見たのは久しぶりでありますし、先生が仰るように、司法判断を証取法の土俵で仰いでいたらという if には興味がありました。

また先生は面白い話をされていますので、引用します。

私が「村上ファンドが間違っている」という理由は、最も人の臭いがしない集団だからだ。つまり、物をつくらない、サービスを提供しない、従業員は最小限で、投資家も少数の私募ファンドである― という人間の臭いのしない集団が、株を買ったというだけで無数の人間の集団を支配できる。欧米社会はそういうものと戦って株式会社制度をつくってきたわけである。だからこういう主張を簡単に認めてはいけないと私は思う。

下線部がなければ居酒屋親父トークなのですが、株主としての個人が尊重されているイギリスと、資本市場を最大限に信用する代わりにやばい取引の規制が厳しいアメリカというものがあり、日本にはそれがないという点と、先生の考える「企業価値」を市場で評価するものはあくまで“生身の人間”であるべきではないかという論(ここに至るロジックは省略)を踏まえての発言のようです。

株式会社制度の歴史については論者によってそう解釈が変わるものでもないと思われますので、キーワードは「企業価値」の解釈にありそうです。
当方の勉強不足は明らかなのですが、「企業価値」の解釈については、上村教授の意見を含めて、いままで何通りもの識者の意見を見聞きしてきました。

この辺についてはもう少し“溜まったら”ここでぶちまけてみたいと思います。

(上記の上村教授の論は06年1月12日開催の、日本IR協議会主催新春講演会の抄録より引用しました)



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