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オバマへのアイデア by PAUL KRUGMAN 2009.1.11

2009年01月12日 20時09分30秒 | ポールクルーグマン

オバマへのアイデア by PAUL KRUGMAN 2009.1.11

先週、バラク次期大統領は経済刺激プランが経済を救うのに十分じゃないという批判者にどう答えるかとたずねられた。オバマは「どうやったら、経済をジャンプスタートさせるのに効率的かつ効果的にお金をつかえるかのアイデア」ならぜひ聞きたいものだと答えを返していた。

うん、口をはさませてもらおう。でも端的に説明するけど、「ジャンプスタート」っていう比喩にすでに問題があるんだ。

まずオバマは、企業向け減税の1500億ドルの提案をやめるべきだ。これはほとんど経済には効果がない。理想としては人々全員への1500億ドルの減税も同じようにやめるべきだが、僕もこれが選挙キャンペーンでの公約だってことは知っている。

効果がない減税に浪費されないお金で、本当に困っているアメリカ人にさらなる援助が与えられる。失業手当をふやしたり、メディケイドなんかを手厚くすればいい。それになんだって保険補助金に早めに手をつけないんだ。たぶん年に1000億ドルかそれ以上は使うことになるだろうし、それが国民皆保険を提供するためには絶対必要なことだから。

でも、なによりも、オバマがやらなきゃいけないことは、計画をより大きなものにすることだ。なぜかって? 自分の経済チームがだした新しいレポートをみてみればいい。

土曜日に、クリスティーナ・ローマー、経済諮問委員会の委員長とジャレット・バーンスタイン、副大統領のチーフエコノミストはオバマの経済プランで見込める成果について発表した。そのレポートはしっかりした、客観的で信頼のおけるものだ。この8年間のまったくいいかげんな数字と比べて、大歓迎できる変化だ。

ただそのレポートで明らかになったのは、プランは経済がもとめているものには程遠いってことだ。

ローマーとバーンスタインによれば、オバマのプランは2010年の第四四半期にその効果が最大になる。プランがなければ、見積もりでは、失業率は最悪の8.8%になるだろうとしている。ただプランがあっても、失業率は7%になるにすぎない。これじゃあ大体今と同じってことじゃないか。

2010年以降は、そのレポートでは、経済復興プランの効果は急速に消えてしまう。全面的な回復には到底至っていない。2011年の第四四半期でも失業率は、痛みをおぼえる6.3%の水準にある。

たしかに経済予測は、控えめに言っても正確といえるようなものではないので、このレポートの予測より事態はよくなるかもしれない。でももっと悪くなることだってある。このレポートが知らせてくれているのは、「ある経済予測では、失業率はなにもしなければ11%になるということだ」。僕は、オバマの経済チームの他のメンバーのローレンス・サマーズの言っていることに賛同する。最近かれはこう言っている「この危機では、やりすぎるより足りないほうがはるかに問題は大きくなる」。残念なことにこの方針は、現在のプランには反映されていない。

じゃあ、オバマはなにをもっとやればいいんだろうか。もし長期的な視野をもっているなら、公共投資をもっとやるべきだ、

ローマーとバーンスタインのレポートでは「インフラ整備につかう一ドルのほうが、減税の一ドルよりも雇用創出には効果的だと」している。ただこうも付け加えている「短期間でどれだけ政府支出が効率的に行われるかには、上限があると」。ただどうして時間軸は短期でなければならないのだろう。

僕が見るところでは、オバマの計画をたてているものたちは、投資を集中してこの二年間で大きな成果をあげそうなプロジェクトに配分することにしている。でも結局失業率はこの二年では高いままの可能性が大きいから、プランには長期的な投資プロジェクトもふくむべきだ。

そしてこのことは覚えておかなければならない。たとえば2011年に大きな成果をだすプロジェクトは、早期に手厚い経済サポートを行わなければならない。もしオバマが「ジャンプスタート」という比喩をやめて、われわれは短距離走ではなく、何年にもわたる取り組みをしているという現実を理解したなら、より短期で公共投資により雇用を創出することができるだろう。

ただ、オバマはより大きく長期的な計画が必要だということが証明されるのを待っていていいのだろうか? それはだめだ。現在のオバマの投資の割り当ては「すぐ手をつけられる」プロジェクトが足りないことに制約をうけている。今すぐにやれるようなプロジェクトだ。もしオバマがいまゴーサインをだしても、より大きな投資がなされるのは2010年の終わりから2011年にかけてだろう。でも決めるのに時間をかけすぎると、機会は目の前を通り過ぎてしまう。

最後にもうひとつ。オバマのプランをもってしても、ローマーとバーンスタインのレポートでは、この3年の平均失業率は7.3%になるとしている。これはおそるべき数字で、アメリカ経済が日本のようなデフレのわなにはまりこんでしまう現実のリスクをもたらす十分に高い数字だ。

だからオバマチームへのアドバイスは、企業への減税なんかはやめて、もっと重要なのは、より多くのことをすることで、ほとんど役に立たないことの脅威に対処することだ。より多くのことをする方法は、ジャンプスタートなんていうのはやめて、公共投資のより大きな可能性をさぐればいい。



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