Translation Note

翻訳を中心にいろいろな書き込みを。翻訳に感謝してくれる人は広告でもクリックしてくださいな。

問題はブッシュよりずっと大きい By PAUL KRUGMAN 2009.1.1

2009年01月04日 09時11分21秒 | ポールクルーグマン

問題はブッシュよりずっと大きい By PAUL KRUGMAN 2009.1.1

新しい民主党が政権をとる準備ができて、共和党はフィル・グラムがいうところの弱虫の党になったわけだ。

弱虫の一部は、すでに信念を裏切っている。アルベルト・ゴンザレス、元法務長官はこういっている「わたしは自分が犠牲者だと思っている、テロとの戦争の多くの犠牲者の一人だと」。ラッシュ・リンボーは金融危機は陰謀の結果で、チャック・シューマーが黒幕だなんて本気で言ってる。

ただ多くの弱虫たちは、ブッシュ政権の失敗はたんなる不運がつみかさなっただけだとぶつぶつこぼしているだけだ。不運もブッシュ大統領自身にたまたまおこったものと、共和党のまちがった人物をホワイトハウスへ送ってしまった両方が重なったんだと。

ただ間違いは、共和党の代表者だけでなく、共和党自体にあった。40年前、共和党はじっさいに人種において反動的な党であることを決議した。ブッシュを党の代表に選んだことから始まって、ブッシュ政権の全面的な失敗、党の基盤が縮小することなど最近起こったことはすべて、この決定から必然的に起こったことだ。

もしブッシュ政権が政策の失敗の典型だとしたら、政権にそもそも資格がなかったんだということなら、それは先進的で保守的なシンクタンクのアドバイスにしたがっただけのことだ。2000年の選挙後にヘリテージ財団ははっきりと、新しいチームに「ロイヤリティを第一にして、専門性は二の次にする約束をするべき」といっている。

専門性を軽んじたため、結局はその代わりに政府も軽んじられた。「政府はわれわれの問題を解決してくれない」ロナルド・レーガンはそう宣言した。「政府こそが問題なんだ」と。これじゃあ、なんだってうまく統治できるかなんて考えられるって言うんだい?

この政府への反感はどこからきたんだろう? 1981年にリー・アトウォーター、有名な共和党の政治コンサルタントが、共和党の「南政策」の進化について説明している。それはそもそもは投票権法への反対に焦点をしぼったものだったが、最終的にはより複雑なものとなっていった。「減税について話せばもっと魅力的に見えるし、話すことは全部経済のことでいいし、そうしたことの副産物で黒人が白人より傷つくことになる」いいかえれば、政府は金をとりあげて、そうした人たちにわたすだけだから、問題そのものということだ。

ただ現在でさえ、人種的なことはこうした抽象的な言い回しというわけではない。現在の共和党全国委員会の議長の候補者のチップ・サルツマンは、委員会のメンバーにこんなタイトルの曲がはいったCDを送っている「バラク、マジック・ニグロ」。いくつかのレポートによれば、その行動をめぐる論争で彼のチャンスは広がっているとのこと。

最初のジョージ・W・ブッシュ政権は、南部が合衆国へ統合されて以来はじめての本当の南部出身の共和党の大統領だったし、長いプロセスの頂点といってもよかった。ブッシュが保守をうらぎったという右派からのいくつかの文句をのぞけば、本当のところは、ブッシュは自分の政党の分裂した戦術とその統治理念を真摯に実行したといえる。分裂した戦術っていうのは、サラ・ペイリンのずっと前から、ブッシュは自分の大牧場を「本当のアメリカとのつながりをたもつために」訪れているなんていってたことをみてもわかるだろう。

これがすぐに去っていく政権の失敗が、ブッシュ本人よりずっと大きい理由である。これはゆうに一世代以上、支配的だった政治戦略の最後尾を示している。

ただ僕が思うにはこの戦略が現実的に崩壊したことは、何人かの識者にはまだ完全に腑に落ちていない。だからなん人かのコメンテーターは、大統領になるバラク・オバマに大胆な行動をとると、ビルクリントンの最初の二年間の政治的な失敗につながるぞと訓話的に脅したりしている。

でも1993年のアメリカとは、今はぜんぜん違う状況にある。1993年のアメリカは保守のコントロールが三権すべてにいきわたっている国ではなく、議会は南部の保守の票により民主党の支配下にあった。今日、共和党はこうした南部の票をすべて押さえていて、それ以外の支持はない状態だ。しばらくは頂点にいたかもしれないが、結局は南政策は共和党を袋小路においこんだわけだ。

だからオバマには大胆になる余裕がある。もし共和党が1993年のような戦略で、大きな政府にしようとしていると攻撃したなら、以下の二点を思い知るだろう。一点目は、金融危機で共和党の経済政策は地に落ちていることと、もうひとつは人種的な含みのある政府に反対するレトリックは、もはやかつてのように通用しないということだ。

共和党はいつかはカムバックするのだろうか? もちろん、帰ってくるだろう。でもオバマが数限りない大失敗をやらかさなければ、共和党の連中が泣き言をやめて、何が本当に悪かったかを見直すときはこないだろう。ただそうしてはじめて、本当の「本当のアメリカ」にふれる必要があることがわかるだろう。本当のアメリカは、共和党の政治理念で想像しているよりずっと、多様性にとみ、寛容で、効率的な政府を必要としているのだ。



最新の画像もっと見る