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クルーグマン ヨーロッパの経済状況

2008年12月17日 19時05分46秒 | ポールクルーグマン


ヨーロッパのばかげた反目 By PAUL KRUGMAN December 15, 2008

現状はこんな風だ、経済はここ数十年で最悪な状況に直面している。経済不況に対する通常の、金利を下げるという対策は機能していない。大規模な政府の介入こそが、この経済の急落を終わらせる唯一の方法だろう。

ただ問題がひとつある。保守的な政治家たちだ、時代遅れのイデオロギーに固執して、たぶん自分たちの地元はこの嵐をのりこえるのに、比較的いい状況にあるはずだという(誤った)かけをしており、行動をとることを妨げている。

いや、ボブ・コッカーのことを言ってるんじゃない。日産のテネシー出身の上院議員やその仲間の共和党員が、アメリカの自動車産業を救うための時間稼ぎを妨害したことじゃない(なぜこの法案が廃案になったのかって? 自動車ローン法案を否決することが、共和党が「労働組合に対して一発かます」ことになるという一通のeメールが共和党の上院議員のあいだを飛びかったからだ)

僕が本当にいいたいのは、アンゲラ・メルケル首相、ドイツの大蔵大臣とその官僚たちで、すごく必要とされてるヨーロッパの救済計画の最大の障害になっている人たちだ。

今はアメリカの問題に注目するあまり、ヨーロッパ経済の混乱はあまり目立っていないが、世界のもう一つの巨大経済、アメリカとEUはだいたいGDPでみれば同規模だし、間違いなくその経済もわれわれとおなじくらい傷んでいる。

一番深刻な問題は、ヨーロッパの周辺地域がひどい危機に陥っており、ラテンアメリカやアジアの過去の経済危機を思い起こさせる。ラトビアはアルゼンチンを、ウクライナはインドネシアを想起させる。ただ痛みは、西洋諸国、イギリス、フランス、イタリア、それらの最大の経済大国、ドイツといった国々の巨大経済にも及んでいる。

アメリカと同様に、なんとか経済を活気づけようと金利を下げる金融政策は、限界を露呈している。大恐慌以来の最悪の不況を回避する唯一の手段として残されているのは、財政政策の積極的な活用しかない。支出を増加させ、需要を増加させるために減税をすることだ。だれもがわかっているように、ヨーロッパ全域で大規模な財政的な刺激が必要だ。

まぁ、ドイツをのぞくだれもがってことになるが。メルケルは、NOしか言えないみたいだ。もしヨーロッパ経済の救済がされるとしても、彼女には全く関係ない。なんたって党大会で「わたしたちは、何兆ユーロといった意味のない競争はしません」と言ったくらいだから。

先週、ステインバック議員は、メルケルの大蔵大臣だが、もっとすごいことをやらかした。自国での効果的な経済刺激策を否定するだけでは物足りず、他のヨーロッパ諸国の計画を公然と非難したのだ。とくに英国が、「ばかげたケインズ主義」におちいってると攻撃した。

ドイツの指導者層は自分たちの経済が良好だと信じており、大きな助けはいらないと考えているようだ。あきらかに現状認識を誤っている。ただ本当にいけないことは、現状判断の誤りではない。ドイツの反対がヨーロッパ全体が経済危機への対応策をとれないようにしているやり方こそがいけないのだ。

問題を理解するには、たとえばニュージャージー州が減税や公共事業で景気を回復させようとするとき、何がおきるかを考えてみよう。それがアメリカ全国規模の対策の一部での州レベルでの刺激策でない場合、あきらかに、刺激の多くは他の近接州へと「逃げて行って」しまう。したがって、ニュージャージー州は他の州が雇用の全てではないにしても多くを得る一方で、自分は多くの借金を背負う結果に終わってしまう。

ヨーロッパの一つ一つの国は、だいたい同じような状況にある。ある一国の政府が勝手に行動しても、だいたい起こることは、国内での雇用を大してうみだせずに、負債を背負うといったところだ。

ただヨーロッパ経済は全体としてみれば、このような「逃げていくもの」がそれほど大した問題にはなっていない。EU諸国の輸入の平均して三分の二は、他のヨーロッパ諸国から来ている。だから、概してヨーロッパではアメリカほどは輸入に頼っているとは言えない。これは協調した刺激策が、それぞれの国が協調せずに行う刺激策にくらべて、その刺激の努力に応じて隣国を当てにできるという点で、ユーロにより大きな影響をあたえることができるということだ。

ただ、もしヨーロッパ最大の経済が賛同しないだけなく、隣国が危機を食い止めようとする努力をあざけるようなら、ヨーロッパが協調してことにあたることは望めない。

ドイツのNOもずっとは続かないだろう。先週評判の高い研究機関のIFOは、ドイツ経済は1940年代以来最悪の経済危機に直面すると警告した。そしてもしこれが起こった時には、メルケルとその大蔵大臣は確実にその立場を見直すだろう。

ただヨーロッパでも、アメリカとおなじように、問題は時間だ。世界中で、経済が急速に収縮している。そう、われわれが誰かを、誰でもだが、効果的な政策をうってくれるように待っている間にも。効果的な対策がうたれるまでに、どれほどダメージをうけてしまうことだろう。

クルーグマン、ミクロ経済学



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