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温暖化サファリパーク by Bjorn Lomborg 2009.1

2009年01月20日 20時13分43秒 | その他翻訳

温暖化サファリパーク by Bjorn Lomborg 2009.1

バラク・オバマが大統領就任演説を準備しているときに、「ドリーム フロム マイファーザー」(マイ・ドリーム バラク・オバマ自伝)から一節を示すのは意味があることだろう。それはわれわれがこの世界の問題をどう見ているかについて、多くのことを明らかにしてくれる。

オバマはケニヤにいて、サファリに行きたがっていた。ケニヤの姉妹であるアウマは新植民地主義者のようにふるまうなと注意をした。「農業に使えるのに、どうしてそうした土地を旅行者のためにとっておかなきゃいけないの? そうした白人たちは、100人の黒人の子供より、一匹の死んだゾウの方を気にかけるのよ」結局オバマはサファリに行くが、彼女の質問には答えられなかった。

この逸話には、現在の地球温暖化へ関心が集中していることと類似点がある。アメリカの新大統領をふくむ多くの人々が、現代で一番の問題だと考えていて、CO2の排出を減らすことが、われわれにできるもっとも必要なことのひとつだと思っている。

この例えをもう少し拡張してみよう、これは飢えを救うためにもっと農場を作る代わりに、サファリをもっと大きくするようなものだ。

確かに、地球温暖化は現実の出来事で、人が排出したCO2によって起こっていることだ。問題は地球規模でも、きわめて厳しく、莫大なコストがかかるCO2削減が実質的に今世紀の半ばまでまったく気温には関係ないことだ。非効率でコストがかかる削減の代わりに、気候をなんとかしようとする気持ちをゼロカーボンエネルギーの研究開発費を劇的に増加させることに集中させたほうがいい。それが今世紀半ばに向けて低コストで気候を改善する方法だ。しかし、この惑星に住むものにとってより重要なことは、地球温暖化は現存する問題をより深刻なものにするということだ。それも今のところは深刻に思っていない問題についてだ。

マラリアを考えてみよう。モデルが示すところによれば、地球温暖化は今世紀の終わりまでに約3%マラリアの件数を増加させるだろう。蚊は地球が暖かくなるにつれて、行き延びる可能性が高くなるから。しかし気候よりもマラリアは保健インフラや豊かさ全般とも強い関連がある。豊かな人々はマラリアにほとんどかからないし、それで死ぬこともない。貧しい人々がそうなるのだ。

炭酸ガスを大幅に削減すると、100年でマラリアの件数を約0.2%減少させられる。こうした行動を応援するものは声が大きく、数も多いが、ほとんどが豊かな国の人たちで、マラリアにかからない人たちだ。

他の選択肢は、現状でマラリアを根絶することの優先順位をあげることだ。これは比較的安く上がるし、簡単なことだ。殺虫剤処理した蚊帳の配布を拡大することや、妊婦に対する予防手段を強化し、汚名を着せられた殺虫剤のDDTの利用を増加させることも含まれるし、新しく一番いい治療法にお金を出せない貧しい国々を補助することもいいだろう。

今日マラリアを100%根絶することに取り組むコストは、京都議定書の1/60にすぎない。言い方をかえれば、CO2排出を削減することでマラリアから一人が助けられることに対して、直接マラリアに取り組む政策は36000人を助けることができるということだ。もちろん炭酸ガスはマラリアをなくすためだけにやるわけではない。しかし、地球温暖化が引き起こすすべての問題、ハリケーン、飢餓、洪水は、直接対策をうつことでもっと安く大きな効果をあげることができる。

たとえば、もっと十分に堤防を整備し、もっと避難サービスをよくすれば、CO2排出を減らしはしないが、ニューオリンズのハリケーン・カトリーナによるダメージを小さくすることに効果を発揮しただろう。2004年のハリケーンの季節を通じて、ハイチとドミニカ共和国は、同じ島だが、きわめて重要な教訓を与えてくれた。ドミニカ共和国では、ハリケーンシェルターと緊急避難ネットワークに投資しており、死亡者数は10人以下だった。ハイチでは、そうしたことに何も手を打っていなかったため、2000人が死亡した。ハイチは同じ嵐でも、ドミニカ共和国の100倍死亡率が高いということだ。

オバマは選挙戦で、炭酸ガスの削減と地球、特に発展途上国を救う再生可能エネルギーへの莫大な投資につよくコミットメントする期待を高めてきた。オバマのケニアの姉妹なら言うだろうが、これは莫大な無駄遣いだ。オバマがEUの主導のもとに従うと期待するものもいるが、それ自体が再生可能エネルギーをつかって、12年以内に1990年に比べて炭酸ガスの排出量を20%減らすといった野心的な目標を掲げているものだ。

これだけでも、GDPの1%以上のコストがかかるだろう。そしてたとえ全世界があとに続いても、今世紀の終りに華氏にして1/20度、地球の温度を下げる効果しかない。

ドイツは、オバマにそれを期待しているものもいるがソーラーパネルに補助金を出している。それによって、貧乏人もふくむすべての人が税金を払っているが、もっとも豊かな人たちだけがその恩恵にあずかり、しかし気候モデルはドイツの1560億ドルの支出は今世紀の終りに地球温暖化をたった一時間遅らせる効果しかないとのこと。その1/50のコストで、生活必需品の微量栄養素を2-30億人に配ることができる。それによって、たぶん100万人の死を防ぐことができ、地球の人口の半分を精神面でも肉体面でももっと力づけることができる。何度も繰り返すが、われわれはもっと農場をつくることで平凡な効果をあげる代わりに、効果の疑わしい贅沢なサファリを選ぼうとしているのではないだろうか。

ほとんどの経済モデルは、地球温暖化による今世紀終りまでの全損失は3%ほどとしている。これは小さなものではないが、かといって地球の終りというわけでもない。今世紀の終わりには、国連は今日と比べて普通の人は1400%豊かになっていると想定しているから。

アフリカのサファリの旅は、アメリカの新大統領の前に答えられない質問を投げかけた。なぜ豊かな世界がアフリカの子供よりゾウの命を優先するのか? この質問を今日の形に直せば、なぜ豊かな国が腹立たしいほどの金額を気候変動につぎ込んで、この100年でほとんど成果が上がらないことをやるのか? そのときには人類にとってもっと少ない金額でもっと多くのよいことができるのに。世界はオバマの答えに耳をすませている。



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