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零式艦上戦闘機（８５） 九九艦爆の帰還
昭和１８年（１９４３）１０月１日
ベラ・ラ・ベラ島への大規模な上陸作戦を開始したアメリカ軍に五八二空はたった６機の九九艦爆で全力攻撃をおこなった。
見事、巡洋艦に命中弾を得て超低空飛行で危険な戦域を抜けると、桜山中尉機の他に２機の九九艦爆が見えた。
他の２機はすでに撃墜されたのだろうか。
すると、弾幕の射程外で待ち伏せしていた敵戦闘機隊が現れた。
逆ガル翼の新鋭戦闘機、Ｆ４Ｕコルセアの４機編隊だ。
『敵戦闘機 距離２０００！』
たちまち２機の艦爆はＦ４Ｕに捕まり撃墜され、４機の敵編隊は桜山機に食らいついた。
編隊射撃の十数条の曳痕弾が桜山機を襲うが、そのたびに桜山機は横に滑らせて敵弾を交わす。
しかし敵編隊は入れ替わり立ち代わり、相互の死角を補いながら桜山機を執拗に狙う。
桜山機は右に左にと滑らせながら盛んに旋回銃で応戦するが、多勢に無勢。
ついに機首をガクンと下げると、火だるまになって海面に激突してしまった。
今度は勝ち誇った４機のＦ４Ｕが急速に接近してくる。
『敵戦闘機 距離１０００ 左後上方！』
敵はぐんぐん近づいてくる。
偵察員は敵の一番機に旋回銃で狙いを定めて応戦を開始。
敵機を近づけないように、とにかく撃ち続けて敵機をけん制しなければならない。
『距離９００ 合図で左に滑らせろ！』偵察員が叫んだ。
敵機が左後上方から迫ってきたときは、左に機体を滑らせる。
もし右に機体を滑らせて逃げてたら、敵機はすぐに軌道を修正して射撃を開始できるが、左に逃げると敵機は右側に抜けてしまうので軌道修正までに時間を要する。
『距離６００！』
『用意！』
敵機は２００メートルまで接近すると一斉に射撃を開始。
両翼の銃口が火を噴いた瞬間、
『左！！』
パイロットは、左のフットバーを蹴って操縦桿を右に倒す。
すると機体は、すーっと左に大きく滑って敵弾を交わした。
敵機は入れ替わり立ち替わり銃撃してくるが、なかなか有効な命中弾を得られない。
業を煮やした敵一番機は、思い切って右後上方からグングン迫ってくる。
旋回銃の弾倉は９７発。
偵察員はなんども素早く交換し、敵編隊に肉薄されないように旋回銃を撃ち続ける。
敵機は１００ｍ以内にまで肉迫。
主翼の６挺の機銃が火を噴いた。
Ｆ４Ｕの機体が、まるで九九艦爆にのしかかってくるように迫り、偵察員も果敢に反撃する。
敵弾が九九艦爆の尾翼を穴だらけにして偵察員のかかとを貫いた。
しかし、偵察員が放った銃弾も敵機のエンジンに命中！
敵一番機は煙を噴くと海面に堕ちて行った。
旋回銃で一機撃墜だ！
すると次の瞬間、九九艦爆も右翼から火を噴きだしたので、パイロットは自爆を覚悟しつつ、旋回して残りの３機につっこむ。
どうせ自爆するなら、敵機とともにと思ったのだ。
しかし、手負いの野獣に関わるほど怖いものはないとばかりに、さっと敵の３機は反転して視界から消えた。
ほうておいても、そのうちに墜落するだろうと思ったのかもしれない。
火はいよいよ燃え盛る。今度こそ自爆覚悟だ。
偵察員が敵艦群に戻って体当たりを主張すると、パイロットもそれにしたがって、先ほど激しい対空砲火を浴びた戦域に戻ろうとした時、奇跡的にも火は小さくなった。
運よく右翼内のガソリンが尽きたのだ。
それではと、一時間ほどの距離にあるブカへの帰途につくと、途中で１機の零戦がすっと近づいてきた。
零戦は脚を出して速度を緩め、九九艦爆を護るようにして飛ぶ。
基地が見えてくると、零戦は離れて行った。
五八二空から出撃した６機の九九艦爆隊。
５機が未帰還だった。
＜関連＞零式艦上戦闘機（５３) 零戦の好敵手Ｆ４Ｕコルセア 2014-08-09
＜九九艦爆関連＞
零式艦上戦闘機（８１） 九九式艦上爆撃機 2015-02-28
零式艦上戦闘機（８２） 九九艦爆 驚異的な命中率 2015-03-07
零式艦上戦闘機（８３） 九九艦爆の空戦能力 2015-03-14
零式艦上戦闘機（８４） 九九艦爆隊決死の爆撃 2015-03-21
零式艦上戦闘機（８５） 九九艦爆の帰還 2015-03-28
零式艦上戦闘機（８６） ワニを食った九九艦爆搭乗員 2015-04-04
零式艦上戦闘機（８６） ワニを食った九九艦爆搭乗員 2015-04-04 につづく～
前の記事 零式艦上戦闘機（８４） 九九艦爆隊決死の爆撃 2015-03-21
＜ほぼ一年前の記事＞
零式艦上戦闘機（３４） アクタン・ゼロ 2014-03-29
＜関連記事＞
零式艦上戦闘機リンク集 2013-09-14
零式艦上戦闘機のお話や、「所沢航空公園」、「零戦来日」の記事はリンク集を見てね♪
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零式艦上戦闘機リンク集・・・・・・・・・・・・・熈代勝覧（きだいしょうらん）リンク集
【乃木希典大将】シリーズリンク集・・・・・・・ＪＲで行く南紀・伊勢の旅２０１３リンク集
国立東京博物館リンク集 2013-11-01・・・・・京都どすえ～！リンク集
早春の箱根総集編 2014-06-25
零式艦上戦闘機（８５） 九九艦爆の帰還
昭和１８年（１９４３）１０月１日
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見事、巡洋艦に命中弾を得て超低空飛行で危険な戦域を抜けると、桜山中尉機の他に２機の九九艦爆が見えた。
他の２機はすでに撃墜されたのだろうか。
すると、弾幕の射程外で待ち伏せしていた敵戦闘機隊が現れた。
逆ガル翼の新鋭戦闘機、Ｆ４Ｕコルセアの４機編隊だ。
『敵戦闘機 距離２０００！』
たちまち２機の艦爆はＦ４Ｕに捕まり撃墜され、４機の敵編隊は桜山機に食らいついた。
編隊射撃の十数条の曳痕弾が桜山機を襲うが、そのたびに桜山機は横に滑らせて敵弾を交わす。
しかし敵編隊は入れ替わり立ち代わり、相互の死角を補いながら桜山機を執拗に狙う。
桜山機は右に左にと滑らせながら盛んに旋回銃で応戦するが、多勢に無勢。
ついに機首をガクンと下げると、火だるまになって海面に激突してしまった。
今度は勝ち誇った４機のＦ４Ｕが急速に接近してくる。
『敵戦闘機 距離１０００ 左後上方！』
敵はぐんぐん近づいてくる。
偵察員は敵の一番機に旋回銃で狙いを定めて応戦を開始。
敵機を近づけないように、とにかく撃ち続けて敵機をけん制しなければならない。
『距離９００ 合図で左に滑らせろ！』偵察員が叫んだ。
敵機が左後上方から迫ってきたときは、左に機体を滑らせる。
もし右に機体を滑らせて逃げてたら、敵機はすぐに軌道を修正して射撃を開始できるが、左に逃げると敵機は右側に抜けてしまうので軌道修正までに時間を要する。
『距離６００！』
『用意！』
敵機は２００メートルまで接近すると一斉に射撃を開始。
両翼の銃口が火を噴いた瞬間、
『左！！』
パイロットは、左のフットバーを蹴って操縦桿を右に倒す。
すると機体は、すーっと左に大きく滑って敵弾を交わした。
敵機は入れ替わり立ち替わり銃撃してくるが、なかなか有効な命中弾を得られない。
業を煮やした敵一番機は、思い切って右後上方からグングン迫ってくる。
旋回銃の弾倉は９７発。
偵察員はなんども素早く交換し、敵編隊に肉薄されないように旋回銃を撃ち続ける。
敵機は１００ｍ以内にまで肉迫。
主翼の６挺の機銃が火を噴いた。
Ｆ４Ｕの機体が、まるで九九艦爆にのしかかってくるように迫り、偵察員も果敢に反撃する。
敵弾が九九艦爆の尾翼を穴だらけにして偵察員のかかとを貫いた。
しかし、偵察員が放った銃弾も敵機のエンジンに命中！
敵一番機は煙を噴くと海面に堕ちて行った。
旋回銃で一機撃墜だ！
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どうせ自爆するなら、敵機とともにと思ったのだ。
しかし、手負いの野獣に関わるほど怖いものはないとばかりに、さっと敵の３機は反転して視界から消えた。
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火はいよいよ燃え盛る。今度こそ自爆覚悟だ。
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