月乃和熊(ツキノワグマ)のささやき

歴史好きオヤジが細々と大震災、水害、雪害の復興花火や図書館の蔵書の支援を続けていまふ。

零式艦上戦闘機(84) 九九艦爆隊決死の爆撃

2015-03-21 01:00:00 | 航空機・船舶(軍艦・機)
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零式艦上戦闘機(84) 九九艦爆隊決死の爆撃   

昭和18年(1943)10月1日
ガダルカナルを占領したアメリカ軍は圧倒的な物量戦で徐々に日本軍陣地を占領し、いまやブーゲンビルから飛行機で1時間程度の距離にある、ベラ・ラ・ベラ島まで迫ってきた。

熾烈を極めたガダルカナル攻防戦で、多数の航空機と搭乗員が失われ補給もままならない日本軍。
ブーゲンビルを基地とする五八二空が所有する九九艦爆は、わずか6機にまで減ってしまい息も絶え絶えだが、ブーゲンビル島のブインとブカ島の基地に分散していた6機に、直掩の零戦24機とともに全力攻撃が命じられた。

五八二空は唯一、艦爆を陸上基地で運用する航空隊だ。

10時45分 桜山中尉が率いる二個小隊の6機は、250キロ徹甲爆弾を抱き、さらに60キロ爆弾2発を両翼に下げて出撃。

高度を8500mにとって、正午ごろベラ・ラ・ベラ島上空に達すると、蟻のように密集した船団が上陸中だ。
すぐにP-38十数機の編隊が現れると、右翼側の零戦隊はそれを追って空戦に入っていった。

桜山中尉からの『トツレ』(突撃体系作れ)で、第一小隊と第二小隊が並ぶ。

いままでは、一列に並んで一機ずつ投弾していたのだが、それでは全機が投弾を終えるまで時間がかかり、熾烈な敵の対空砲火は狙いをつけやすい。また、順番を待っている間に敵戦闘機に食われてしまう恐れもある。

そこで、ガダルカナル攻防戦からは、全機が一斉に投弾する戦法に切り替えていた。
小隊は3機で一組。一番機を先頭に一番機の右後方に2番機、左後方に3番機が追従する。
本来は3個小隊で中隊(9機)を組む。
『トツレ』(突撃体系作れ)で編隊を解き、小隊長機が横一列にならび、小隊ごとに攻撃目標を定める。
『トトト・・・』(全軍突撃開始せよ)で、小隊長機を先頭に3機が縦一列になり、3個小隊は一斉に急降下に入り投弾するのだ。

眼下の敵艦からは狂ったように対空砲火を撃ち上げてくる。天候が曇ったように薄暗くなるほどの激しさだ。
直掩の零戦8機は、艦爆の上空をジグザグに飛び、虎の子の艦爆6機を敵機から護るべく身を呈して警戒中だ。

『トトトト・・・』ト連送で、小隊ごとに一列になって、接敵降下を開始。
偵察員は半身になって、右手で旋回銃を掴み高度を読み取りながら、後方を厳重に警戒する。

高度6000mから角度を深く取って急降下を開始すると、次々と敵戦闘機隊が現れては一斉に編隊射撃を繰り返す。
十数条の曳痕弾が頭上をかすめる。
弾幕の中に入ると、敵戦闘機は同士討ちを避けて反転していった。
艦船から猛烈に打ち上げてくる敵弾は、すべてが自分に向ってくるようだが、寸前で逸れていく。

目標を巡洋艦に定めた。
偵察員は旋回銃の銃把を握り敵機を警戒しながら、高度メータを読み取る。
『高度3500メーター 角度55度 下五分角』
『高度2000 58度 下三分角』
『1000 58度 下三分角』
『用意!』(高度700m)
『テッー!!引き起こせ!』(高度450m)

投弾を終えると機体はふわっと軽くなる。
パイロットは投弾と同時に操縦桿を引き起こし、機体はグレーの大きな船体の左舷側をかすめ飛ぶ。
偵察員は、着弾を確認しながら旋回銃を右に回し巡洋艦に7.7mm機銃をぶっ放した。

見事に250キロ爆弾は巡洋艦の後甲板に命中。
ぼわっと、控えめな煙が上がった。直撃だ!

徹甲爆弾は艦船用で、着弾してから0.03秒遅れて爆発する遅動信管を備えている。
爆弾は甲板を貫き、船内で爆発したので煙の上がり方が小さいのだ。

250キロ爆弾が直撃したからといって、撃沈したわけではない。
その巡洋艦から、すかさず猛烈な曳痕弾が追いかけきた。

高度を海面すれすれの10m以下にまで下げて、全速で退避。
猛烈な艦砲射撃。
十文字砲火を浴びせかけられ曳痕弾が上方を飛び交い、砲撃による着弾は派手に水柱を上げ、連射された機銃弾の水飛沫が逃げる機体を追いかける。

3キロほど超低空で海面を這うように飛び続け、ようやく危険な戦域を抜けた。
他の僚機は?

つづく~

<関連>零式艦上戦闘機(51) 零戦の好敵手P-38ライトニング 2014-07-26

<九九艦爆関連>
零式艦上戦闘機(81) 九九式艦上爆撃機 2015-02-28
零式艦上戦闘機(82) 九九艦爆 驚異的な命中率 2015-03-07
零式艦上戦闘機(83) 九九艦爆の空戦能力 2015-03-14
零式艦上戦闘機(84) 九九艦爆隊決死の爆撃 2015-03-21
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零式艦上戦闘機(86) ワニを食った九九艦爆搭乗員 2015-04-04

零式艦上戦闘機(85) 九九艦爆の帰還 2015-03-28  につづく~
前の記事 零式艦上戦闘機(83) 九九艦爆の空戦能力 2015-03-14

<ほぼ一年前の記事>
零式艦上戦闘機(33) 1機あたり約9万円 2014-03-22

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<関連記事>
零式艦上戦闘機リンク集 2013-09-14
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (RW)
2015-03-21 21:33:53
今年は戦後70年、ゼロ戦もいろいろな機会でレビューされることでしょう!
返信する
RW様 (月乃和熊(ツキノワグマ))
2015-03-22 08:17:57
なんか、日本でまたゼロ戦を飛ばそうとしているらしですよ。
返信する
手に汗かく状況です (MOTOMMZ)
2015-03-24 08:26:04
月乃和熊さんおはようございます
手に汗をかく状況ですね、遥かな昔に現実に有った事ですが先が心配です
決して戦争が好きなわけではありませんが、やはり同胞が心配です
撃墜されて居ればこの状況は残って居ないとはわかって居るのですが

やはり手に汗が(笑)
返信する
MOTOMMZ様! (ツキノワグマ)
2015-03-24 19:04:20
こんにちは
零戦の空戦も手に汗握りますが、九九艦爆も死闘だったんですね!
弾丸に追いかけられない世代で、本当に幸せです。
返信する
Unknown (RW)
2015-03-26 22:24:35
これは凄い!戦後70周年に出版されて見ては!小生は戦闘機というと紫電改のタカの方が思い浮かびます。
返信する
RW様 (月乃和熊(ツキノワグマ))
2015-03-28 09:10:21
おほめのことば、ありがとうございます!
紫電改もこれから掲載する予定です♪

出版ですか?
う~~ん、、、、
自費出版は130万円くらいかかりますから。。。
宝くじでも当たらないと(笑)
返信する

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