短歌つれづれ

日常詠、時事詠などを掲載しています。

国難

2011-07-07 20:32:31 | Weblog
節電の課題は重し急激に猛暑は来たり試練はつづく
収束の術知らぬまま原発を易々と始めし企業も国も
燦燦と夏日に喘ぐ北半球文明に拠るわれらの狼狽
小学生ら命を散らせし無念さを語り継ぐべし稀有の少年
双方が狂気となれる戦場を訥々語りし老兵も逝く(米兵)
天上のアインシュタインも哭きおらむ右往左往のシーベルト禍を
隣国ゆ電気輸入の発想も中途半端かメルケル首相
紫陽花の毬が塀より零れいる梅雨の通りに癒されている
夏の花命短く萎えゆけり季の移ろいに一抹の寥

紫陽花

2011-06-08 13:57:07 | Weblog
遠山も緑も花もこの春は憂いを湛え過ぎゆくばかり
地球上原風景を懐かしむ水辺の岸に打ち寄すせせらぎ
キャベツ畑に紋白蝶の縺れつつやがて何処に迷いゆきたり
ゼロ歳と八十嫗が向きあいて笑み交わすなりましろき未来
年々の若葉の頃の吟行会動画となりて熊谷師の顕つ
梅雨入りを疎む楽しむ半ばして紫陽花まつりのしめやかな風
シーベルトベクレル数値に追われいる原発地域の見えざる敵は
真向かいて悪口雑言並べたつ国会討論に鬱をためこむ
核兵器の威力を知れるこの国も平和利用の名に溺れ来つ

韓国の旅

2011-05-08 07:51:56 | Weblog
終の旅と心に秘めて勇み立つ八十路嫗の国際空港
空港の出入国のハードルに思い出いくつ愉しみて立つ
ハングルが遍く占めて戸惑えり文盲みみしい黙しゆくなり
オンドルの構造見たり千年の昔も今も寒の厳しき
原発のオンドルならん高層のホテルの床の温さ訝る
客寄せてここも熱気のナイトショウ「ナンタ」のリズムに乗ることもなし
貧富の差益々激しとガイド言う渋滞車両に悩みながらに
戦いに傷つき釜山に逝きし兄玄界灘は望郷の関
海峡を一跨ぎすれば母の国兄の面影しばらく還る





東日本大震災

2011-04-08 14:42:07 | Weblog
満艦飾の花を咲かせる公園に思いは遥か東北に向く
根こそぎに海辺を襲う大津波ながらえて見る地獄の生きを
季くれば喪に服すなく咲き満てる花を非情と眺めるばかり
庭先に花芽を数えいしならん水の惑星 春撹乱す
リアス式海辺に抱かれ積み上げし ひと世の誉れ砕くは憎し
文明の利器が牙むく原発に右往左往の驕れる葦か
屋根のうえ船や車が乗りあがるを世界のまなこ釘づけならん
クリーンとう文明を追う人間の飽くなき欲に鉄槌くだる
シーベルト ベクレルを聞く日々にして原発事情知るも哀しき

混沌

2011-03-08 16:07:23 | Weblog
中東の民の蜂起に明治維新幻として蘇るなり
信長の気負いにも似るかカダフィのいきり立つさま映像にみる
血みどろの維新のありて吾ら在りアフリカ大陸に夜明けは成るや
温暖化に氷河後退危ぶむに就職氷河は溶けることなし
抜きん出る賢人なくてわが国のコップの中の水のざわめき
南より吹きくる風の暖かく早も忘れる冬の哀しみ
食べどきを終りますよと言う如く白菜のはな芯に顔見す
もう一度交わしたかった言の葉もネット圏外天振り仰ぐ
若者のファションの妙拒絶する吾を叱りて黙すのみなる

国難

2011-02-07 15:33:27 | Weblog
格別の去年(こぞ)の猛暑を懐かしむ豪雪を聞く大寒に居て
等圧線が込み合い並ぶを怖れつつカレンダーの書き入れ重し
絶対に覚えていたき甘き夢おもい出せずに もどかしき朝
夢のつづき見られぬものか真夜さめて読み切り二幕とりとめもなし
花も無く落ち葉も風に掃かれたる枯れ涸れの寒骨までさむし
人工に孵化し人手に殺処分鳥の命も命というに
衛星より降りくるメディア地の涯も隈なく曝す二十四時間
病原菌 噴火 豪雪ひと泣かす地球は今し地獄なるらし
梅の花 万作見せて節分会身の裡ふわり温かきかな

新春

2011-01-07 13:32:39 | Weblog
霜除けに花を護りし若き日をふいに想えり憐れ枯れ菊
野菜らがよく出来たねと誉められる吾が受けたる唯一の評価
マイコンの音声ナビの優しくて軽いタッチに「熱い湯が出ます」
男いろ女いろ無く着飾りて舞台を盛り上げ2010年の果つ
身めぐりの四苦さまざまを見つつ過ぎスローライフに縁無く暮るる
名詞より健忘はくる 人名地名 老いの二人の思い出しゴッコ
元気して主婦を果たすを喜べと娘に諭される八十路のわれは
政治家も一時休戦 政争の鉾を収めて親となりいむ(正月)
戦国の群雄割拠にさも似たり年頭 党首の息巻くをみる


秋思

2010-12-06 11:38:40 | Weblog
空碧く地は明るめり寺の庭風吹くたびに降りくる黄金葉
紅葉が綺麗ですねと庭を誉め新宗教の勧誘にくる
旱やあらし幾たびに耐え高々と咲きたるダリアを見上ぐ霜月
青春を闊達に生きしおとこまえ去年の約束果たさずに癌
地の涯を職場ともなし八十路きて癌と闘う病床を見し
山峡に誘いくれたる紅葉狩り籠もりしこの秋われは吾を叱れり
渓流の音のすがしさ落ち葉踏む山路はひさしリフレッシュ成る
本当のいくさを知らぬ世代らが威嚇ゴッコか武器を並べる
対立はいつの世にもか吾等いま対峙の位置に息を呑みおり

ニュウギニア慰霊巡拝

2010-11-08 19:13:33 | Weblog
征きしまま還らぬ兄のいくさ場に哭きしや南のジャングルのもと
密林に「あとはまかす」と敵将の言い放ちしと赤道直下
恋人のことに触れつつ夢語る軍事郵便の筆勢あわれ
祖のくにの血縁ら見放くる白骨街道に六十余年経し贈る日章旗
血を繋ぐ遺児等訪ねる密林に面影さがし泣きくずれしと
コスモスの戦ぐ旬日夢心地早も蕭条と秋雨けむる
柔らかく生れし曾孫の五指の爪最も小さき生のきれはし
世に出でし曾孫等の拓くこのくにの未来は知らず天を仰げり
カレンダーの残りの薄さこの年は超特急なり紅葉くだる

羊雲

2010-10-03 18:13:16 | Weblog
遅々として動かぬ夏もようやくに朝な夕なに涼風渡る
稀という猛暑の記録繰り返すメデイアも黙し長月の果つ
嬉しげに交わす言葉も風を褒め仰ぐ大空青を深める
産休に入りしを伝え嬰児待つ孫がしきりに愉しみて言う
いちにんを育てることの苦も楽も未知なる孫の穏やかな笑み
終盤を生きる吾等に敬老会「アハハ」と笑いし のちの寂しさ
いそいそと発ちゆく夫の戦友会 園児を送る気遣いに似て
曼珠沙華おくれて咲けり この年の免罪符とし土手を染めたり
理不尽と歯痒き外交かけひきを 見守るばかりの小市民なる