短歌つれづれ

日常詠、時事詠などを掲載しています。

2010-09-05 14:55:26 | Weblog
猛暑なるひと日の暮れてぬるき湯にたぎる火照りをゆっくり冷ます
太陽を升目の表に満たしいる天気予報の画面に怯む(ひるむ)
晴天域すっぽり中に列島のど真ん中なる吾が住む鄙は
大切な時間と言うに捨てる如やり過ごすのみ猛暑いくにち
静もれる猛暑の宵の夕涼み耳鳴りの耳に虫の音さがす
夾竹桃百日紅咲いて夏を締め蜩の音待ち夏越えむとす
政党をなお二分すか男ふたり猛暑の中を雌雄のいくさ
ニュウギニアへ亡兄慰霊に八十路夫戦記にくい入る茫々のとき
台風のひとつも欲しと天気図を眺め呟く未曾有のひでり
来年の日取りも決めしとクラス会八十路の夫の気持ちのほてり

大地

2010-08-07 10:10:42 | Weblog
わが愛車勲章の如く貼られいる枯葉マークはさむきレッテル
戦ぎいる青田はすがし隣りなる政治指導の休耕田の荒れ
孫二人嫁ぎゆきたり残されてこれより先の老いの寂寥
熱中症を騒ぐメディアは南半球に凍死者ありとままならぬ星
豪雨禍ののちの日照りに熱中症と地球ほとほと住みにくきかな
夏雲が耀きながら急ぎゆく暑に倦む吾等を睥睨しつつ
酷寒と猛暑に耐うるを条件に辛うじて生くる老いのわれらは
魚釣りが盆栽に継ぎ石に寄る男の趣向身の丈に添うらし
巨峰の実鴉の群れにやられしと不可抗力を悔しみて言う

たぎる夏

2010-07-05 14:38:09 | Weblog
いそいそと嫁ぎゆきたる末孫の昨日の着衣竿に揺れいて
遥かより恋いいるならむ ふる里をかたみに想う新たな住処
路上にてパンクと言うに遭遇し弱きよわき者たち人間はいま
筒状の輪に閉じ込めし空気さま人の往来易々とあるなり
ひそやかに古葉を捨てたる森のみち 輪廻をおもう森羅万象
純白の花びら凛と睡蓮の底ひに微塵のメダカうごめく
列島は緑モードに覆われて山川草木 なつ陽に真向かう
満面に力と意気を滾らせる選挙候補を醒めて見ており
みぎひだり揺れつつ移る世の中を諾う外なし昇華あるべし

初夏の風

2010-06-07 14:09:59 | Weblog
春と初夏大股に来たるを歓びて北の大地のメール明るし
リラ香りロマンチックに酔いいると思い出たぐるや老境にいて
クラス会傘寿を潮に閉じむとぞ決め事つづく老いの坂道
リハーサル重ねしと言う友と来てなお迷いいる街の会場
宰相の繰言ながなが聞きあきてスイッチ切れば外ははつなつ
鳩政権の無力を言いて気が合いぬすれ違い多き老いのふたりは
葬も婚もさまざまなりしを諾いて緩やかに時代は流る
盛り上がる緑モードにこの年も人等を酔わす森のほそみち
三河湾五月快晴うみは凪ぎ水上バイクの水脈(みお)弧を描く

緑陰

2010-05-06 17:31:52 | Weblog
「逡巡」の語を習いたる杳い日よ ふいに想えりこの年の春
春の冷え家うちめぐるウイルスに順定まらず今婿どのに
等圧線に天気は読めて祈ること占うことも遠くなりたり
早晩は年どしあれど裏切らぬ順を待ち咲く花の律儀さ
人並みや車列を映す五月晴れ鄙の果てまで美しきこのくに
新緑の木々の創れる空気かと残月の浮く空振りあおぐ
鶯の声透りくる緑陰に擬音ならずや鳥かげさがす
与野党が悶々とおり皐月ばれ小市民なる気安さにおり
世話をやく子等散りゆきて老いふたり叱られ役の夫の在るなり

春宵

2010-04-07 10:26:27 | Weblog
独り居の夜半の机上の紅椿ことりと落ちる刹那に出会う
雨と風人等を焦らし爛漫の花の宴は容易ならざる
身籠れる孫がエコーの写真見す2センチ胎児指し示しつつ
3Dに胎児が写ると娘が言うを黙し聞くなり八十路のおみな
幕の内土俵が狭し大男なにか腹立つ国技と言うに
吾が政府与野党共に治まらずヒーロー竜馬が維新を演ず
ダッチロールいつか聞いたる飛行機事故いまの政権なじりて言えり
携帯が「無い無い無い」と騒ぎいる夫に付き合う家のうちそと
U字溝に片足入れて急逝の九十路おうなを羨しむもあり

バンクーバー

2010-03-07 14:13:13 | Weblog
北半球白の世界に武者震いアスリート達にみなぎる闘志
エアリアル地上の空気かきまわし宙返りののち雪上に立つ
フィギュアーに よろり一つを悔いとして華の盛りのかえらぬ時の間
深層の愛国心が燃えてくるわが撫子にそそぐ応援
若き等のオリンピックの悲喜見つつ「平和の祭典」歓びとせむ
春兆す雨に列島みずみずと緑モードに移りゆくなり
地に沁みる雨に萌え立つ花々の歓びの唄聞こえる如し
朝を待ち夕べ安らぐ晩年を地球の自転速さ増しゆく
策略が見え見え見える政権に苛立つ心も詮無きものか

大寒

2010-02-08 15:14:29 | Weblog
畑隅の角芽たむろし この年も宜しく頼むと言い交わす如
冬雲が飛ぶ如くゆく大寒を土手の水仙凛と咲き満つ
大寒を剪定されしプラタナス並木通りに拳振り上ぐ
真っ黒な冬雲に追われ逃げ帰る平和と家はありがたきかな
其処ここに廃業スーパーの更地見えさんざめきし日まなうらにして
スーパーの廃業跡地に雨はしむ吐息に過ぐる国のなりゆき
岩盤浴いなかの街にも及びきて栄耀に遊ぶさむきこころに
子が孫をいとしみて抱く傍らに御役御免の気安さにおり
拗ねるがのパソコン一夜をしずめれば人等にも似て機嫌をなおす

歳晩

2010-01-06 11:21:48 | Weblog
雲が切れ風が途絶えし暮ひと日東海の天深く澄みたり
この年を逝きたる人らの面影が紙面を埋む師走尽日
要不用 値ぶみに捨つる年の暮 生きの切れはし決断鈍る
永遠の一部切りとり今を生くる人等のさわぐ年末年始
空海が上陸せしとう知多の浜浅瀬の岩に像立ちつくす
長安は遠しと思う空海の歩幅に行きしや いにしえの旅
幾百のきざはし登るうしろ姿を娘が危ぶむや しんがりに居て(姿=で)
引力の届かぬ宇宙に着る服の20億円とうを訝りて聞く
臨海のリゾートに建つビル群の閑散として人影見えず

旅愁

2009-12-04 21:55:07 | Weblog
アルプスの水を集めて黒部峡トロッコ電車ゆ紅葉に酔う
エメラルドの水を湛える黒部峡三十年目にまみえ変わらず
冠雪の白馬岳背に もみじ撮る最期とおもう旅のみちみち
勇み立つ新政権もすんなりと舞台まわらず ひきつる面々
いちにんの豪腕無頼に国民が振り回さるる危機を憂うる
さまざまの人間模様見せくるるメディアに余生の心曇らす
軍服に眉濃き昔偲びおり今日は彼岸に旅立ちしを聞く
ご破算の如くに剪られし果樹園に秋雲たかく耀き流る
落ち葉焼くほのかな煙ゆれ昇る秋はかなしき昔もいまも