きらせん

仙台のきらめき










東北大学公共政策大学院准教授
佐分利 応貴

 「重ねて上勝町」

2007-09-26 23:27:50 | Weblog
  縁は奇なもの。

  「生協の白石さん」は有名だが、「東北大生協のMさん」も有名である。
  Mさんは松島出身。生協の『学びと成長』事業の責任者であり、公務員試験講座などを通じて今年の国Ⅰ(国家公務員Ⅰ種)試験での東北大生大量合格を実現した。


  Mさんはネットワークの達人だが、そのMさんとのパンショップ前でのある日の会話。

  『佐分利先生、ブログ見たんですが、上勝町(かみかつちょう)に行かれたんですか?』
  『あ、Mさん、お世話になってます。そうなんですよ~上勝。遠かったですわ。それが何か?』

  『実は、自分の知り合いに、上勝町で1年間ボランティアをやっていた人がいるんですよ。よろしかったら紹介しようと思いまして。』

 『な、な、なんですと~?????』

  … さすがMさんである。昨年も着任して最初の学部授業である「経済産業行政論」で学生が集まらず、ゼミが成り立たないのではないかと思っていたところ、公務員講座を通じて公務員試験に合格し、中央官庁や都庁などに採用された非常に優秀な学生を紹介していただいた。ピンチになると現れるウルトラマンのような人である。(外見もウルトラマンに似ている。)

  そして、教育学部のYさんとのメシ会を早速セットして下さった。
  組織の実態は、中で働いて初めてわかる。インターン生がぎりぎりで、インタビューでは表面しかわからない。コンサルタントは全体像はつかむのは得意だが、レントゲンや血液検査なので、その体のどこが痛いのか、どの程度痛いのか、生活でどう困るのかなどはわからない。
  同様に、地域の実態は、中で暮らしてみて初めてわかる。研修生がぎりぎりで、インタービューでは表面しかわからない。新聞や雑誌の記事はいいことしか書かないし、自伝などもどうしてもバイアスがかかる。有名人やその周辺の人にインタビューしても、それは地域の光の部分。陰の部分は聞き出せない。

  Yさんは、学生らしい率直で、かつ体験に裏打ちされた、それでいて『上勝命』でも『上勝ウザい』でもない、冷静な分析を寄せてくれた。社会には、そこに住む人の数だけの「真実」がある。ぜひウチのワークショップにも話をしてやってくださいな。

   
 

  

 「インターンシップ発表会」

2007-09-26 22:58:12 | Weblog

  午前中はM2のO君のリサーチペーパー(修士論文に相当する政策提言ペーパー)の指導。O君は東北大学と仙台市との産学連携(産業界と大学との技術協力)について研究している。がんばってはいるが、目標が絞り込めず苦戦中。『連関図法』で問題を整理し、10月の月例発表会の準備を進めるようアドバイスする。

  その後、そのまま2人で、現在東北大本部の高橋准教授から昼食を交えヒヤリング。高橋先生は、日本のベストプラクティスの一つである東京工業大学にて、産学連携の活動当初から一貫して従事してこられた「産学連携の生き字引」である。東北大と東工大の活動比較など、非常に興味深いコメントをいただいた。高橋先生と知り合えたのも、工学研究科の授業にて。学際的な交流活動がいろんな場面で役に立っている。

  午後は公共政策大学院のM1(1年生)の学生によるインターンシップ発表会。
  彼らは、夏休み中に仙台市や県庁などに約2週間研修生として受け入れていただいたわけである。どんな活動をしてきたのか、学生からの発表に他の学生や教師から厳しい質問が飛ぶ。

   

  インターンシップは、本来は全学生に義務づけるべきもの。役所や企業に研修にいけるなんて学生時代しかできないんだから。
  でも今回の発表はたったの5人。公務員試験の勉強のため泣く泣くあきらめた学生も多いが、本来なら公務員試験の勉強なんて大学院に行くことが決まった昨年の冬から始めるべきモノ。試験勉強のために大事なチャンスをみすみす逃すなんて理解しがたい、というかあまりに準備不足でないかい。インターンシップの経験は、役所の採用面接のとき、民間の採用面接のときなど、格好の話題にできるのに… (自分の学生時代にそういう制度がなかったことのひがみも半分)

  さて、発表内容。
  みなそれなりに研修先でがんばったのはわかる。でもなんか方向がズレてるんだな。当初どういう目標を立てて行ったのだろうか。

  教官としてインターン生に望むことは以下の3点である。

1.職員の気持ちになれ
  2週間「同じ釜の飯」を食う中で、彼らが毎日どういう生活をしているのか、何を考えて、何を基準に行動しているのかを知ること。(社会医学でいう「社会生理学」的分析。これは本来は内部の人間しかできない。インタビューでわかることは触診程度のうわっつら。) 同じ気持ちになれるかどうか。そして、一生つきあえるような先輩を1人でも見つけるてこれるかどうか。「仕事3割、つきあい7割」でしょ。まさに。アフターファイブこそが真の研修。

2.目標をつかめ
  その職場の業務目標は何か。何を求められ、何をしているのか。担当する社会問題は何で、それは解決できるのか、しつつあるのか。自分が課長だったらどうするのか。それは今の職場でなされているのか、やっていないとしたらなぜかを考えよ。(これもアフターファイブで率直に語り合うなかでわかってくること。)

3.行動せよ
  自ら行動し、何か現実を変えよ。少しでも、1センチでも1ミリでも、その問題を解決に向けて前進させよ。気づいたことを研修先の担当者や課長にフィードバックする、報告書を書くなど暗黙知を形式知(目に見える形)にして大学や研修先に送る、自分のブログに書いて問題を友人と共有する(ただし守秘義務に注意)、など。そうした活動を通じて、受入先が『ありがとう、参考になった。また来年もぜひ誰かキミの後輩を送って欲しい。』と言ってくれれば合格。

  とはいうものの、インターンに行っても大学院の単位にはならないので、学生に多くを望むわけにはいかないか … 否! やはり多くを望みたい。たった一度の青春だ。目標を低くしてどうする。

  「人間には2種類いる。自らに高い目標を与える人間と、低い目標しか与えない人間だ。」(出典誰だっけ?)


  準備、先方との調整、派遣、学内報告会(今回)、先方への報告などなど、膨大な雑務をこなされたH先生、本当にお疲れさまでした。