目の中のリンゴ

20年ぶりにオペラ座熱が再燃!!

「紙屋悦子の青春」 赤飯は赤飯らしく

2006年09月21日 | 映画タイトル か行
巨匠といわれる黒木和雄監督のことを
恥ずかしながら私は知りませんでしたが、
その黒木監督の遺作となった映画です。

「紙屋悦子の青春」 (2006年・日本)

戯曲の映画化ということで、舞台は昭和20年の鹿児島の
田舎の家の中が舞台。
登場人物は5人だけ。
清楚で控えめな悦子(原田知世)は
優しい兄(小林薫)夫婦と暮らしている。
両親は空襲で亡くなったらしい。
兄嫁のふさ(本上まなみ)は悦子の幼馴染で親友。
ある日、悦子の縁談がもちあがり、
兄の後輩で空軍少尉の明石(松岡俊介)が
永与(永瀬正敏)を連れてくる。
悦子は、ひそかに明石を慕っていたのだが・・・。

昭和20年の春というと、敗戦の色が濃くなってきた頃。
戦争真っ只中の話だけど、この映画はとても静かで穏やかです。
BGMさえありません。(波の音を除いては)
何気ない家族の会話、一杯の緑茶をしみじみと美味しいと味わい、
お見合いの席に、とっておきの”おはぎ”をふるまう。
だからこそ、戦争のむごさ、残酷さがじんわりと
静かに伝わってきます。

悦子の見合い相手に、と親友を連れてきた明石は
特攻隊に志願します。
悦子と明石、思いはひとつでも、明日をもしれない我が身では
愛する人を守ることができない。
せめて、親友に託したい・・・。
目の前にいる人と、もう二度と生きて会うことはないと
わかっているなんて、どんな気持ちなんでしょう。

いつまでこんなことが続くのか。
笑って皆幸せに暮らせる日がやってくるのか・・・。

”爆弾に当たらないためのゲンかつぎ”に
赤飯とラッキョウを食べるといい、と聞いたふさは、
家族のために食卓に並べます。
なんでこんなゲンかつぎを・・・バカらしい、という
夫に、ふさは印象的な台詞を言います。
”赤飯は赤飯らしく、ラッキョウはラッキョウらしく食べたい”と。

平凡な幸せや、愛する人を失った人たちの歴史の上に
今の私のお気楽な生活があるんだなぁ・・・。
美味しいお茶を味わうように、平和のありがたみを
しみじみ噛みしめたいと思います。

哀しいだけじゃなく、まじめで朴訥とした永与と
明石のかけあいには 笑わされ、ほっこりしました。
弁当箱で作った電気回路、見てみたかったな(笑)

原田知世ちゃんは、いつまでも清楚で可愛らしい人で
モンペ姿もとてもよく似合っていました。
地味だけどいい映画でした。
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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
視界~ (cyaz)
2006-09-21 23:08:06
kinoさん、TBありがとうございましたm(__)m



静かなメッセージを残して黒木監督は逝かれました。

ご冥福をお祈りしたいですね。

レビューには書かなかったのですが、この映画の映像を観ていて何度も思ったのですが、あと4~50センチ、カメラアングルが低かったら、小津映画になったのではないでしょうか? 黒木監督、小津さんを尊敬してたのかななんて感じていました^^
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観たい、けど・・・ (cherry)
2006-09-21 23:39:40
これ、すごく観たいんですが、

東京まで行かないと観れないので(私は横浜)、

電車賃払っても価値あるのかなぁ・・・とセコいこと考えていました。

でも、やっぱり良さそうですね。
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恥ずかしながら (☆kino)
2006-09-22 22:30:20
>cyazさん

小津映画、実はちゃんと見たことがありません・・・

映画ファン失格でしょうか。

これは早いトコ 観なければ。



>cherryさん

うーん、映画館で見て欲しい!という類ではないので、

DVDになってからでもいいと思いますよ。

でも、いい映画でしたから、いつか見てみてくださいませ。

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お弁当箱 (may)
2006-09-23 23:38:24
地味にいい映画でしたね~^^

ふさの言葉が素直でじんわり伝わってきました。

お見合いシーンはかなり笑わされました。。

おはぎも食べましたしなんだかんだ気に入っていたかも。

わたしもようやく書いたのでTBさせてください♪
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いい映画でした (☆kino)
2006-09-24 19:49:57
>mayちゃん

しみじみとした映画でしたね。

永瀬さんの朴訥とした感じもすごくよくて。

”弁当箱・・・”最高でした。

美味しいお茶を入れて、おはぎを味わいたい気分です。
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単館上映 (choro)
2006-09-24 22:24:12
これは東京でも単館上映で、しかもいつも混んでいるマニャックな劇場・・ということで観に行けそうにありません。

評判がよいようなので、とても気になっているのですが、DVDを楽しみに待ちたいと思います。
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単館ですか~ (☆kino)
2006-09-24 23:18:34
>choroさん

普通にシネコンとかでも上映すれば、年配の人も

たくさんご覧になると思うんだけどなぁ・・・。

いつか機会があったらご覧になってくださいね。

しみじみと、幸せをかみしめたくなる映画でした。
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