「トランスアメリカ」 本当の私

本年度のアカデミー賞主演女優賞は、
この映画で主演女優賞にノミネートされていた
フェリシティ・ハフマンにあげたかったなぁ・・・と
改めて思いました。

「トランスアメリカ」　（TRANSAMERICA/2005年/アメリカ）

性同一障害に悩み、念願の性転換手術を
一週間後に迎えたブリー（フェリシティ・ハフマン）のもとに
1本の電話がかかってくる。
それは、かつて自分が男だったときにできた息子からだった。
事件を起し、ドラッグや売春で自暴自棄な生活を送っている
17歳のトビー（ケヴィン・ゼガーズ）は、
父親の事情を知る由もない。
彼を継父のもとへ帰らせようと思ったブリーは、
"教会からのボランティア”との誤解をそのままにして、
2人でNYからケンタッキー州への車の旅をはじめる・・・。

性同一障害を描いた映画では、
「ボーイズ・ドント・クライ」があり、これはリアルでシビアな
重い映画でした。
最近では漫画で「G.I.D」（庄司陽子（「生徒諸君！」）がありました。
これは、政治家の娘である主人公が、幼い頃から
自分の性に違和感を持ち続け、世間体を気にする父親と
縁を切って、周囲の偏見と戦い、
手術で完全に男性になることを望む・・・という話です。
（完結はしたんだけど、最後の方はちょっと駆け足っぽかった）

物心ついた時から自分の体と意識が同一でない、
という気持ちが私には理解できる、とは言えないけれど、
これは　趣味嗜好という問題ではなく、
本質的なことなんですよね。
ブリーは、間違って男の体に生まれついた女なんです。

本当の女性より女性らしく、でも時々、男っぽいしぐさが
出てしまうブリー。
女性になりたい男性を演じる女優、
フェリシティ・ハフマンの演技は　その振る舞いも
声も、顔もなりきってましたね・・・すごい。

トビーは心の中の父親に多大な憧れと
愛情を抱いていて、今はやさぐれているけど
根は素直で優しい青年だということも伺えます。
（動物好きなとこが可愛いねー！　「犬の図鑑がー！」）

ちょっとしたシーンにトビーの気持ちが
表れていたようでいいなぁと思ったところがあります。
ブリーが、ダイナーで水にレモンを絞って入れるのを
見たトビー、後で自分ひとりの時にこそっと真似してみて
まんざらでもない顔するの。

それと、途中で出会った先住民のオジサンに、
（グレアム・グリーン、久しぶり！
キッキング・バード＠ダンス・ウィズ・ウルブズ　だ！）
”その顔はチェロキー系かな？誇り高い部族だ”と
言われて、父親が先住民の血を引いていると
信じているトビーは、すごくなんとも言えず
嬉しそうな顔をします・・・
ああっ　ケヴィン・ゼガーズ君、なんて可愛い！！



そんな彼に、とてもじゃないけど、
”私が父親”だなんていい出せないブリー。

でも、大陸横断の旅の間に、少しずつ少しずつ、
擬似親子（母と息子か・・・）のように
失われた時間と絆を取り戻していく二人。

トラブル続きの旅の途中で立ち寄った、
ブリーの実家。
ぽつりとトビーに打ち明ける心のうち。
”本当の私を、私の中身を見てくれたら・・・”

最終的に、無事に手術を終えたブリーが
堰を切ったように泣き崩れるシーンが印象的でした。
きっと、体の痛みも心の痛みも　
全部流し出すことができたことでしょう。
そしてまた、大きな愛を知ったトビーも、
成長したってことですよね。

シリアスな中にも、笑いや温かさがいっぱいの
素晴らしい映画でした。

で、ケヴィン・セガーズ君、美形ですよねー！
先が楽しみだ。

リバー・フェニックス、ディカプリオにも似てるし
エミール・ハーシュやマイケル・ピットにも似てません？
こういう系統の子、多いのかな。


エミール・ハーシュ（「ロード・オブ・ドッグタウン」）


マイケル・ピット（「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」「ドリーマーズ」）