「空中ブランコ」 奥田英朗

ちょっと前に話題になっていた小説ですが、
2004年直木賞受賞「空中ブランコ」　（奥田英朗　文藝春秋社）

今頃読みました。
なぜ読まなかったかというと、この装丁が好きじゃなかったから。
いかにもキワモノっぽいと思いませんか？？
（サーカステントの中の絵なんだけど）

そして、今思うとバカみたいなんだけど、ナゼか、
この本の著者を俳優の奥田瑛二と勘違いしていた。
なんでこの人が小説なんか書いてるわけ？？
変な精神科医って何よ？？と　勝手に勘違いして
読む気をなくしていたのだった・・・。
（別に奥田瑛二がキライなわけではないのだけど）

で　今頃読みました。またもや　あっという間に読めました。
最近、読みやすい本ばっかり読んでるなぁ。

私はアマノジャクなので、大ベストセラーとか
大ヒットとかには背を向けたくなるところがあって
”ケッ！”と思って
目に入らないようにしているのだけど、
基本的にはミーハーなので、ある日こっそり
観て（読んで）みたらヨカッタ・・・ということが
往々にしてあります。

この本もそうでした。
多くの人に支持されるものには、それなりにいいところが
あるのでしょう。（全てのものが、とは言いませんが。）
先入観と　食わず嫌いはいけませんなぁ。

伊良部総合病院の地下に住まう（？）
５歳児のように天然で無邪気で好き放題、
天衣無縫でゴーイング・マイウェイ、
トドのような巨体の精神科の伊良部先生。
マユミちゃんは　ミニでボディコンな白衣のナース。（無愛想）

彼の元を訪れる患者たちは、そんな変な２人に
調子を狂わされ、しかし、ナゼか心地よさも感じてしまうのです。
案外鋭い伊良部先生の治療（？？ただの注射好き）を
受けるうちに、心の問題の本質と治療法を見つけていく・・・。

いいなあ　こういう人情もの！
もっと　エキセントリックでシュールな話かと思ってた！

人間不信のブランコ乗り
先端恐怖症のヤクザ
破壊衝動の大学病院医師
イップスのプロ野球選手
嘔吐症＆強迫症の作家

彼らの病の原因は　ごく普通の人でも感じるようなもの。
それがどんどん深刻になって　行動に変調をきたすのです。
肩の力を抜いて、シンプルな自分に戻ってごらん、
という　伊良部先生のカウンセリングは
とてもそんな意図が込められているとは思えない
ワガママで自分勝手で、いい加減なものなんですが・・・（笑）

読んで　あったかい気持ちになれました。
最後の章の、作家にこんな言葉を言わせる、作者奥田さん。

人間の宝物は言葉だ。
一瞬にして人を立ち直らせてくれるのが、言葉だ。
その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう。
神様に感謝しよう。

そんな気持ちでこの小説を書いているとしたら、
すごく優しくて素敵な方だなーと思います。

前作の「イン・ザ・プール」は　映画化されて　
伊良部センセイ役は　松尾スズキ、
(オダジョーが患者役）
「空中ブランコ」のセンセイ役は　阿部寛、ってのは
どっちもルックス的にイメージ違うけどなぁ。
（堺雅人がブランコ乗りやってたんです。
ビデオに録って　観てませんけど・・・コラ！）