毎日更新!中谷比佐子のきもの365日 Part2

きものの話題を毎日書きます。

胸当て締め

2013年04月30日 | 日記
20年くらい前友人のT子さんが乳がんに罹り
右の乳房を摘出してしまいました
きものが大好きなのですが
もう着られないと嘆くので
一生懸命考えて絹の「胸当て締め」を考案しました
15センチくらいの幅の絹の伊達締めです

其れをまず素肌の胸に締めます
そうすると2つの乳房があるような形になるのですね
その上に衽の附いた肌襦袢をきて
そこには3センチ幅のやはり絹の胸当て締めを当てます

その上から長襦袢を着ると
もう全く通常の胸の方と変わりません
T子さんは婚葬は必ずお着物と決めていらっしゃるので
「比佐子さん大助かり、商品化なされば」
といつも感謝の言葉をいただきます

其れで商品化しましたら
結構そう云う方が多いのですね静かにブームを起こしています
この胸当て締めはまだ元気だった頃の姑に手作りでつくって頂いたのですが
さすがに経験の深さ細かいところまで工夫をして使いやすくなっています

さて
最近衿がドウモ逃げるのです
その原因を探っていたらなんと私バストが大きかったのです
それは最近ブラジャーの寸法を計っていて分かりました
其れでさっそく今朝その胸当て締めをいたしましたら
快調です

インクジェットのきもの

2013年04月29日 | 日記
きものの染めも大きな改革の波に洗われています
スクリーンで印刷して染めるというのから
今度はインクジェット染め
今振り袖とか小紋の多くはこのインクジェット

前に一度取材したことがある述ですが
其れは風呂敷や長襦袢の小物でした
でもその技術が発達して今やきものにーー

悪いとかいいとか正直判断できません
なぜなら誰が見てもすぐに型染めと手描きとインクジェットの差がわからないのです
「わかる必要があるのかな」
という気にもなります

手描きだけの時代から型染め技術ができ
今度はシルクスクリーンという印刷きもの
そしてインクジェット
技術の改革といわれればそうだと思います

ではあなた着ますかと問われれば今は着ませんと答えるでしょう

インクゼットのきものが手描きのきものよりはるかに安いものになれば
それはきものの世界での大きな改革になるでしょう
しかし素人が見てもわからないという逆手を取って
値段も結構なものになっている売り場を見ると首をかしげます

目の前でしっかりと図案を書きひと筆一筆描いていく人たちの仕事は
絶対におろそかにできません
きものの尊厳というものを考えてしまう日々です

大人ピンク

2013年04月28日 | 日記
毎年緑が多くなる今頃
「もう今年は無理かな」
と取り出すピンクの江戸小紋極行儀
其れを私は勝手に「大人ピンク」と呼んで20年着続けているのです
そう毎年

そして今日も取り出しました
この極行儀という江戸小紋は拡大鏡で覧ないと柄が分かりません
よくつくってくださったわとかんしんしながら手を通しています
そう毎年

今日は白い纐纈の袋帯に日本画の先生が藤の花を手描きした帯を締めました
というのも昨日の「比佐子つれづれ」にいらした方の数人が
藤の花の帯を締めていらしてとてもステキでしたの

「アッそうだ私も持っている」
と取り出しました
昨年も一昨年もついに出番なしで忘れられていました
この帯はなんと40年物
できた当時はほぼ毎日締めて喜んでいましたのにーー

今年は藤の花の咲くのが早く皆さん慌てて藤の花の帯を取り出したようです

私実は藤棚の藤の花を春日大社で見たとき
その存在感に圧倒されました
東京も亀戸の天神様の藤棚の藤が見事

現実の藤は男のようなたくましさがあり
帯に描かれた藤は優雅で優しい感じに描かれています

藤原家の力を思い出す藤棚ですがーーー

でも大人ピンクの極行儀にはあいます

100年前の江戸褄

2013年04月27日 | 日記
つれづれのお仲間の一人Tさんが
「ひいおばあちゃんの黒留め袖が出てきました」
とお持ちになりました
「生きていらしたらおいくつくらい?」
「130歳は過ぎていると思います。母の母その祖母のお母さん」

風呂敷から取り出した江戸褄(明治・大正・昭和の初期はこう呼んでいた)は
松だけが中心に描かれていて
松の中にいろんな小さな柄が描かれていました
小紋調子や刺繍やーー
「こう言う可愛い柄が気に入って何かに生かせないかトーー」
「色々と方法はあると思うのね」
・何処までもきものにこだわる
・帯とか羽織にする
・インテリアにしてしまう
・洋服や室内着にする

「できたらきものにこだわりたい」
まず解き洗い
きもの地が余り痛んでないことが分かりました
黒地のいろは少し焼けているけれどそのままつかえそうです
刺繍の糸が外れているけどそれは直せます
手描きの家紋は蝶の家紋
其れはこのままいかして上半身をこの蝶を増やして手描き
更に松の中にある可愛い小紋を上半身にちらばせて
訪問着として生まれ変わらせたらどうかしら

「やったやった!」Tさん大満足
さっそく上田染め工房に入院女医の環江っさんの手術を待ちます

若冲のきもの

2013年04月26日 | 日記
伊藤若冲という画家がいます
大胆でのびのびとした画風が大好きで
画集を良く眺めているのですが
ある日
「きものの柄にしたい」
という欲望がわいてきました
きものの柄になるような構図はありません

それで米原さんに相談したところ
若冲の花だけを取り上げようと言うことになりました
しかも花は白胡粉と白地を残すという方法です
二人で「やったー」と大騒ぎしながら
この菊の花、この桐の葉、このつた
とピックアップして博物館に本物を覧に出かけました

本物は圧倒される力強さがあります
其れをきものにどう生かすかですが
極端に色をセイブし奥行きを出すためにわずかな金こま刺繍をする
ということで意見が一致

後は彼にお任せ
透き通るような青、大人ピンク、くぐもった黄色、藤色、銀鼠
大輪の菊やツタ、百合、
若冲の力強さもありながら品のよい訪問着に染め上がりました

160センチ以上の方がお召しになりとそれはそれはスバラシイ
私は160センチに足りないので私だけは柄を小ぶりにしました
其のきものの初降ろしはパリの「オペラ座」
私ごとですがもう注目の的
一緒だったサチコさん我がことのように大いばりでした