毎日更新!中谷比佐子のきもの365日 Part2

きものの話題を毎日書きます。

まだ小千谷縮み

2012年09月30日 | 日記
昨日は松宮夫妻は小千谷縮を着てライブにお出かけしていました
そのライブもニューヨークに住む娘さんの日本デビューなので
二人できものを着たかったと言うことです

昨日の東京はとても蒸していまして
小千谷縮みのきものがチョウドイイという感触でした
ご夫妻は袷の結城紬が他にあるだけですから
「小千谷と結城の間のきものがほしいです」
と仰っていました

「季節的におかしいですか?」
「いいえ今日あたりは気持ちいいかもしれませんね」

「黒の足袋カバーのような靴下ですけど邪道ですよね」
「邪道と分かっていて履いていれば邪道にはならないわね
ソレハ自分のスタイルだから」
「いいですか?」

「あなたがそうしたいのであればどうぞ」
「しかられるかと思った」
「叱らないわよ」

そう自分のスタイルというのがありますね
基本が分かっていて自分流に壊していくのは改革だけど
基本が分かっていなくて単に面白く他人受けを狙うのは破戒

改革は進歩に繋がるけど
破戒は全く別の者を生み出すパワーを生むことになると思うのですが
破戒のママ終わると単なる塵

形通りは面白く無いと思っても
まず基本が大事だと思いますね

ムスコとデート

2012年09月29日 | 日記
私には何人かのムスコがいます
鍛え上げたムスコでそれぞれの場所で力を出しています
たくましい限り
基本的に男の方が鍛えやすいですね
かなり厳しいことを言ってもしても泣かないもの

さてその中で19歳の時から鍛えたムスコが学校のPTAの会長になり
全国大会で東京にやってきました
今年の私の誕生日をムスコ夫妻が祝ってくれ
3人でフエルメールの「耳飾りの少女」を見て
オチャして私に高級なムガのショールをプレゼントしてくれて
二人は帰っていきました

それ以来ですが今朝は一緒に食事をしてきたのです
彼は呉服屋の跡取りで
日本の文化をきちんとお客様に伝えていきたいと
地方紙に寄稿している原稿を持ってきました

「ああ真っ直ぐね、本道だ」
と褒め称えたのですが
日本人の作法を地道に調べ其れを自分の言葉で書いていていました
「きものの形にはその形である意味がある」
「いいぞ」
「きものの色や柄にもみんな文化的な意味があって其れを伝えなければ」
「その通り」
「作り手の生活を保障できる仕組みを考えねばならないと思っている」
「うんうん」

こうして朝の3時間を思いっきりきものの未来を語り合いました

濡れても安心大島紬

2012年09月28日 | 日記
雨模様というと大島紬を着る習慣があります
それはもう45年も前のことですが
はじめて奄美大島に取材に行ったときのことです

2泊してじっくり大島紬の手仕事を取材しました
テイチ樹(シャリンバイ)の樹皮を鉄鍋に山のように入れ
ぐつぐつ煎じます
赤茶にそまった糸を鉄分の多い泥田に持っていて媒染し
水につけて洗います
なんとこの作業を30回以上繰り返すのです

夏の取材で暑いのなんの
その作業は
「自然の防水加工です」
と作業している方が教えてくれました

より美しい黒を染めるうち
この工程を積み重ねることで織った布が水をはじくことが分かった
とおっしゃっていました

昔からの作業なのですが
今までは誰もなぜこの作業をするのかを科学的に考えもしなかった
そんな話をしながら作業する方たちと実験しては
「うわー」
なんて無邪気に驚いていたものです

そういう体験がありますので
雨に強い大島紬というのが私の中にしっかりと根を下ろしています

しかし昔の人の知恵は
実用と美的なことを見事に一致させているのですね
こういう感性は私たちの中にもあることに
誇りを持ち行動に移したいと思います

台風接近

2012年09月27日 | 日記
早朝は秋の青空でしたがみるみる雲が広がってー
今日は絹縮みを着ようと思っていたのですが
雲が厚くなると同時に肌寒くなり
あわてて結城縮みの単衣に着替えたところ

デモ長襦袢はまだ紗です
此の長襦袢は着倒してほどき自分で洗ってもようと思うのですね
そのために「布海苔」を購入しました

あるときデパートに行って
「ふのりドコニ売っていますか?」
と案内嬢にお聞きしたらとても明るく
「地下の食糧売り場に置いてございます」
と自信たっぷり

ありえないと思いながらいきましたけど
売り場の人総動員して探した挙句
「おいてございません」

デパートは何でもあると思った私が無知

つてを頼り手に入れました
いづれ秋櫻舎でも取り扱うつもりです
だって皆さんご自分で洗うこと覚えることも必要ですものね

母がやっていたことを思い出しながら
見よう見まねで洗っていますが
中性洗剤を使うよりきれいです
これに洗い板があればいいのにとつくづく思います

ですから今日はぬれてもいい長襦袢と着物
完全防備でお出かけです
こういう時大きなバックが必要ですね
実はそれも先日取り寄せましたの
いらした方にはお見せしました

田んぼに入ったきもの

2012年09月26日 | 日記
ある方のお話し
その方はきものが好きで好きでお金も有り
しかし旧家のお嫁さんで自分で買ったきものを着るチャンスがなく
ひたすら家族に黙って
きもの売り場に行っては現金で購入し
仕立てても着る事もなく蔵の長持ちに鍵を掛けて寝せていたのだそうです

家族が出払うと
その長持ちをあけきものを眺めるのが唯一の楽しみだったようです
どんどんたまっていき
そのきものの行く末が今度は心配になりました

家族は誰も知りません
きものを着ることすら無いと思っています
そのうちその方が病に倒れました
しかし思ったほど重くなかったので退院してきましたが
病が再発する可能性も秘めています

長持ちの中のきものが気になり出しました
人に差し上げると云うことも出来ず
また思い切って着ると言うことも今更出来ず

思いあぐねて
家族が一夜を空けたとき
夜中にきものを抱え田んぼに埋めてしまったのだそうです
田んぼにです

きものは一度も主人の身にまとわれることもなく
これから何年か経て土に戻っていくのでしょう

その方はその後一人の友人に一部始終を明かして
癌で亡くなりました

主亡き後きものは静かに土になっていくのです