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 今回は児玉清氏の文章もそうですが、書評の意味についても考えてみたい。

 巻末に付いている書評から読み始める人も少なくない、と聞きます。
 書店で目に入った本を手に取り、面白そうな本かどうか判断の材料にする。そういう方にとっては、著名人が、これでもか!と威勢の良い言葉でヨイショする、そんな書評がオススメなのかもしれません。そういった意味では児玉清氏の書評は、出版社にとっても、知ったかを披露できる氏にとっても共通の利益があるのでしょう。

 私は、といえば書評は最後に読む派。ネタバレもイヤですが、自分だけでは到達できなかった視点や気づきを最後に共有する。そんな楽しみが書評にはあると思うのです。

 さて、過去にも何度か取り上げさせて頂いた児玉清氏の書評ならびに帯の惹句。
 今回は私のお気に入りのシリーズ&書評が11ページも!あることに敬意を表して単独エントリで取り上げた(^^; 目を汚したくない方はすみません、速やかにこのページを離れて下さい。

 まあ、残念ながら今回の書評は児玉氏の「この作品が好きだ~!」という想いに溢れていて、従来の小難しそうな単語を並べただけの似非書評とはちょっと違うのでツッコミにくい。純粋なファンとして楽しまれているようですから。
 が、俳優というバックボーンがあるから的外れなこと、幼稚なことを書いてもいいと思われても困るし、安易に彼を利用する(「児玉清さんも絶賛!」という宣伝)出版業界も面白くないので、あえてツッコんでおきます。

 まず長い引用をさせていただく。これが彼の書評。[()付き数字は私]

『一度飛びこんだら、もう絶対抜けられない面白地獄
                    児玉 清(俳優)(1)
 ”俺は待ってるぜぇ~”話の続きが読みたくてたまらない切なる願いをこめた言葉がいつしか風に吹き飛ばされ、やがて霧散し、はるか宇宙の彼方へと消えてしまったか、と思われた十八年の時を経て、それこそ待ちに待った『大聖堂』の続編がついに出版された。(2) パブリッシャーズ・ウィークリー誌で書評を最初に発見したときの喜びは筆舌に尽くしがたい。嘘じゃないのか、と何度も目をこすって確認したものだ。そしてそのあとで喜びが爆発した。
 今、あなたが手にしている本書『大聖堂―果てしなき世界』の原題は「WORLD WITHOUT END」。すぐおわかりのように、直訳すれば「果てしなき世界」と時間と空間を含めて永遠に続く世界といったところなのだろうが、実にもって意味深長なタイトルだ。(3) すでにこの本を読み終えた人は、大きくうなずいて読後の素晴らしき余韻にどっぷりと浸かり、至福の心境でいることと確信しているが(4)、まさにこの物語のメインキャラクター、男女4人の織りなす、西暦一三二七年から一三六一年までの三十四年間にわたる長尺人生冒険物語は、人間が生きる上でのすべてのことを網羅した、面白人生読本としても最高の一冊。(5) 営々と繰り返される人間の生きることへの営みは不変であり、永遠に繰り返すという点でも「終わりなき、果てしなき世界」といえよう。(6) 』

(1)「面白地獄」という言語センスが抜群(爆)天国では面白くないと、ひねったのか?
(2)氏の文章の特徴は一文の長さ。これが言いたいことを余計分かりにくくしている。「切なる願い」「風に吹き飛ばされ」「霧散」「宇宙の彼方」など、ひとつひとつのフレーズは耳あたりのよい言葉で構成されているが陳腐。「キャビア」「北京ダック」「上生にぎり」などご馳走を集めたら豪華感は出たがまとまりのない晩餐になった、という残念さ。
(3)「時間と空間を含めて永遠に続く世界」とのたまうが「終わりがない」=「永遠に続く」ではない。「人間の欲望には果てしがない」とは言うが、「人間の欲望は永遠」とは言わない。「意味深長」というなら永遠(と思われている)時間、空間を持ち出すと内容が限定的になってしまい逆効果と考えるがいかが?
(4)読み終えた後でも「大きくうなずいて」余韻に浸れはしないし、感動・感銘の種類も人それぞれだから「至福の心境」と決めつけられても困る。
(5)メインキャラクター男女4人は氏の見解なのでここは認めましょう。が、「長尺人生冒険物語」「人間が生きる上でのすべてのことを網羅」「面白人生読本」などしゃべり過ぎ。語りすぎるが故に本質が指の間からするりと抜け落ちてしまうことに思いが至らないのはテレビ人だからか?
(6)人間の営みが終わりなく繰り返されるというこの部分には賛成。愚行も善行も。まさに「WITHOUT END」

 この後、物語のあらすじの紹介、上記のメインキャラクター男女4人の紹介などサービス精神に富んだ記述が続き、さりげなく(いやらしく?)分厚い原書を読んだという自慢事実が披露される。

 しかし残念なのは、この大部を何度も読み返したと書いているのに、記述が全然追いついていない。原書を読めるだけの知性をお持ちなのに「面白い!面白い!」を大仰な表現で連発する中学生レベルの感想。
 選手としては一流だが、身体感覚を言語化する能力を欠くため、コーチ・監督には不向きなプレーヤー、といった感じで残念。

 おそらく、多忙な氏のことでしょうからちゃっちゃっと片づけなくてはならない仕事かもしれませんし、時間をかけられなければアウトプットの質は落ちます。が、多忙は理由になりません。
 巻末の書評ではありますが、素敵な切り口、着眼点を提示して頂きたいし、せっかくなら軽い売り口上ではなく、人生経験に裏打ちされた真実を披露して頂ければ、って無茶言ってますかね(^^;

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