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99%の誘拐

講談社

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 この本の後書きで「営利誘拐などの重大犯罪をテーマにして小説を書く場合、万にひとつも不心得な模倣犯が現れぬよう、わざと犯行過程に実行不可能な手順を紛れ込ませておくのは、言わばミステリ作家としての良識」という創作知を初めて知った。不覚。
 ならばコンピュータに多少詳しい人間が本書を読んで「こんなことできないよ」と思うことは瑕疵にはならない。というか、細かい傷を差し引いたとしても本書は傑作である。

 12年前の誘拐事件をなぞるようにして起こる第2の誘拐事件。最初の事件、身代金は金の延べ棒で要求され、2回目は・・・書かない方がいいかな。読んでいない方も多そうだし(^^)。
 それでも雰囲気だけ伝えるなら、TVや映画などで、朝、人を起こすためにものすごく大掛かりな仕掛けを作るのがあるでしょ? 朝日が虫メガネを通して焦点を結んだ紐を焼ききり、ビー玉の入ったカップを傾ける。転がりだしたビー玉がドミノを倒し、そのドミノがスイッチを入れ・・・みたいな。読んでいる時の感覚は、それに近い。

 パソコンに関するディテールもうれしい。「マイコン」などという言葉を知っている世代はそれだけでノスタルジーに浸れるだろう。CMOS、16ビットパソコン、音響カプラ。なにせインターネットではなく、パソコン通信の時代。PC-VAN、ASCII-NETなどという言葉が登場・・・懐かしいでしょ。(歳バレ(^^;)
 こういう単語がちりばめられ、昭和を舞台に物語りは虚飾を廃した文体で淡々と語られる。

 岡嶋二人といえば、知る人ぞ知る小説界の藤子不二夫、井上泉(井上夢人)と徳山諄一の合作ペンネーム。一読をオススメする。

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