ずっと心の隅に蜘蛛の巣のように引っかかっていた。随分前。最後の方をちらっと見た記憶がある。
もともと邦画は好きではないのに最後の方を見たのは、「12人の怒れる男」のことが頭にあったのと、「トヨエツ」を見るため(^^;)。
その当時、「トヨエツ」といえば女性にすごく人気があり、「名前は知っているが顔を知らない俳優」として一度は対面したかったのだ。
「これがトヨエツかあ。」場違いな服と眼鏡を着けた長身の男優は、たしかにカッコヨカッタ・・・そして、話の方も面白かった。だったらとっとと続きを見ればいいものを「地味な邦画」をわざわざ借りてくる気もなく10年以上が経ってしまった。見たいビデオがあらかたなくなっていたレンタルショップの棚で、このビデオに再会したのは運命的な再会かもしれない。おお、脚本は三谷幸喜じゃないの!
密室の心理劇である。12人の陪審員全員が被告の女性を最初は無罪とする。が、若い男が「人を殺したのに本当に無罪でいいんですか?!」と発言したことから、次第に流れは有罪に傾いていく。
ひとりひとりの陪審員が非常に個性的。
自分の意見がなかなか出てこないオバチャン、フィーリングで「無罪!」とか言っちゃうオヤヂ、会社のことしか頭にない実業家、場を仕切りたがるスーツの男などなど。
自分のことしか考えていない者がほとんどで、実際の裁判員制度のことを思うと笑えない。が、話が進むうちにみんな真剣になってきて、このあたりの間というか呼吸はうまい。
有罪に決まりかけた時、愚直に違和感を口にしたオバチャンからオセロゲームのような反転が始まり、被告は結局無罪に。このオバチャンの話に耳を傾け、擁護するのがトヨエツなのだ。
見終わってもうひとつのシナリオを考えた。有罪→無罪→有罪という反転だったら、面白い作品になっただろうか、と。
それは考えすぎか。三谷幸喜の頭には、そんな本のことなど微塵も浮かばなかったに違いない。
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