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 刑期を終えても、一度犯した罪は消えないのだということをイヤというほどこの小説は語ってくれる。
 出所後、勤め先の人間に自分の罪を知られる不安を抱えながら、主人公・中道は新たな生活を始める。自分が犯した殺人のために、肩身の狭い思いで生きる母親、婚約者を失った妹。その二人への配慮から家に戻らず、アパートを借りる中道。殺人事件の報道に対し、何気なく吐かれた人の言葉がいちいち胸に突き刺さる。
 冒頭、「世の中は結果がすべてなのだ、と知らされた。」という告白が出てくる。護身用のナイフを持っていたことで計画殺人と判断されたこと、裁判で目撃者(=被害者の友人)にウソをつかれたこと等、大声を上げて事実を周りの人に伝えたいという気持ちの高ぶりを押さえて、それでも前向きに生きていこうとする姿に同情を禁じえない。
 が、そんなある日、「この男は人殺しです」という中傷ビラが撒かれ、平安に見えた日々は崩壊する。と同時に誰の仕業かと猜疑心にさいなまれる日々が始まる・・・。
 これでもか、これでもか、と中道を次々に襲う試練の数々。読者も「誰が?」という思いでページを繰るに違いない。「これ以上どうやって償ったらいいんですか。」という中道の思いが痛々しい。
 最後の方、滑り始めた筆がすんでのところで暴走を止め、一連の事件が解決をみるあたりの表現はうまい。平均点はクリア、カタルシスもある。が、この作品をレコメンドしないのは多分、好みの問題。
 中道の同級生の寿司屋が、地に足の着いたいい奴で、一服の清涼剤。こんな寿司屋で食べたらきっと旨いだろう。

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