文学、映画、ドラマ。なんでもかまわないが、見終わった後で「何が言いたいか分からない」とのたまう人がいる。自分も青少年期はそういう傾向が強かった。創作物はテーマが明確でなくてはいけない、そう思いつめていた。
散文的に「あるがままを観賞する」ことの楽しみを見つけたのは30歳前か。例えば、宮崎駿作品の中では評価の高くない『ハウルの動く城』が自分は好きだが、重層的なテーマを読み解くことよりも、自分の容姿を気にするハウルに対しソフィーが雨の中外へ駆け出し「私なんか、きれいだったことなんて一度もなかった!」とわあわあ泣くシーンに魂を揺さぶられたりする。
さて妖怪大戦争である。引っかかっていたのは予告編で見た妖怪や、そのCGのレベル。確かに近藤正臣、菅原文太、豊川悦司、栗山千明といった豪華キャストや多くのゲスト陣、主題歌が忌野清志郎 with 井上陽水、アドバイザーに水木しげる、荒俣宏といったビッグネームが並ぶのも期待がかかる要因には違いない。
結論をいえばそのあたりに見るべきものはなかったし、ストーリーも無いに等しかった(^^; (主人公が麒麟送子で、キリンビールがどっさり出てくるシーンなどツボにハマったが(^^;
それでも最後まで見てよかったと思うのは、主人公のタダシがほとんど面識のないぐだぐだな編集者のために「美しい嘘」をついたこと。このワンシーンのためにこの作品が作られたと言ってもいい。
タダシの言葉では「真っ白な嘘」と語られるそれは心からの思いやりに満ちていた。だから「自分のためにつく嘘は真っ赤な嘘で・・・」という解説は興醒めだし蛇足。一見、子供向け作品の体裁をとりつつも、ところどころに挿入された甘美でささやかなエロスや社会人となったタダシを描いたのは大人へ向けてのメッセージなのだから。
最後に次作への伏線を仕込んだ以上、2も期待してますよ角川さん!
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