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殺戮にいたる病 (講談社文庫)
我孫子 武丸
講談社

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 すごい本に出会った。会社の同僚が机を整理する折に譲られ、抽斗でしばらく眠ったままになっていたが、帰りの電車で読むものがなくなり、鞄に押し込んで帰路についた。
 最初は小説の世界に入りにくかったが、読み進めるうちに尋常な面白さで無いことに気づいた。

 犯人が冒頭で明かされる倒叙型のミステリー。連続殺人犯の名は蒲生稔(表紙でも紹介されている(^^; )過去と現在を行き来しながら物語が進み、ぴたりと重なる時点の計算もみごとに決まっている。しかし、本作がすごいのはそれだけではない。

 犯人は「サイコパス」の連続殺人犯。いわゆる快楽殺人犯なのだが、その犯行の理由は「永遠の愛」を得たいということ。もちろん相手を死なせてしまうわけだから非常に自己中心的で、とても愛と呼べる行為ではない。しかし、作者の筆は、「この犯人の考えることにも一理あるな」と思わせるほどの説得力をもって読む者に迫る。人間の心に潜む欲望を見せつけられる怖さがある。
 「本当にありそう」と思わせるリアル感はフィクションの生命線。犯人の情念が自分に乗り移るかのような恐怖を感じた。最近マスコミをにぎわす凄惨な事件が人ごとでなく、自分も当事者になるかもしれない、という恐怖が身を包む。

 犯人の行方を追うのが引退した元警部・樋口。・・・いや、これ以上種明かしをするのはよそう。後はぜひ読んで頂きたい。ただ、万人向けの小説ではないとお断りしておく。アメリカのテレビドラマに多い犯罪捜査ものが好きな人にはオススメ。このまま映像化するとなると性的/残虐描写でR-18は間違いない。

 もう一言だけ。

 犯人は分かっているのに、ラストは衝撃的。



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