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イノセンス スタンダード版

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 少女型アンドロイド(ガイノイド)が暴走し、人を殺すという事件が多発する。ロボットが人間に危害を加えることができないのは、アシモフのロボット三原則ではないが論理的、倫理的に言うまでもない。背後にはいったい何があるのか。
 アシモフで思い出したが、ガイノイドがずらりと並ぶシーンではウィル・スミス主演の「アイ、ロボット」を思い出した。そういえば、テーマも重なるところがある。

 前作にもまして難解な作品になった。おそらく、前提知識のない状態で一見しただけでは、この作品の全貌をつかむことはできないだろう。
 いくつもの引用によって構成されるこの作品は、何層もの機械の心(=情報処理能力)の奥底に潜む「ゴースト」を暗示しているかのようだ。

 件のガイノイドは隠された愛玩用の機能を持ち、製造会社ロクス・ソルスは機械では再現できなかった細やかな心の機微を誘拐した少女たちに担わせていた。この少女たちからのSOSが、ガイノイドの暴走の真相だ。
 「イノセンス」
 無垢で穢れ無き者であるがゆえの、自分が正しいと信じて疑わない残酷さが立ち現れて物語りは終わる。舌足らずな少女の言い訳や、醜悪とも言える泣き顔が印象的。耳当たりのいい言葉や正論(例えばエコ)で深い議論もせずに社会が振り回されている、そんな現代日本への風刺が込められてはいないか。

 ゴーストハックされたバトーやトクサが認識する真実ではない現実。自分たちが認識しているものが「本当の世界」かという問題が、本作でも大きな問いを私たちに投げかける。『マトリックス』でネロが感じたように。

 川井憲次の音楽が相変わらず素晴らしい。攻殻機動隊が描く多重世界にはもはや欠かすことはできない。ちなみに、多重世界のメタファーにふさわしい、あの厚みのある歌声はエンヤのように多重録音によるものだそうだ。
 エンドスタッフロールの音楽の箇所、歌い手の名前がずらーっと並ぶが、「西田」姓が随分おられる。声の質をそろえるために血縁者を集めた・・・というのは考えすぎか。押井監督ならやりそうな気が(^^;

 CGとセル画の融合もかなり進み、映像としての完成度は「攻殻機動隊」の比ではない。CGとセル画の質感が違いすぎるという批判もあるようだが、押井監督は意図的に使い分けているように思われる。例えば、バトーが愛犬のドッグフードを買うために入った店では、ドアの木材の質感がはっきりCGと分かるが、あれはバトーがハッキングされた兆候なのではないか。
 CGに関心のある身としては、オープニングのガイノイドの組み立て工程がよかった。

 単純な娯楽アニメではないので万人にオススメはできないが、傑作だ。
 ファーストインプレッションはこの辺にして、後日また見直して整理したい。


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