『叛乱』STARTREK

　オープニング、南フランスの農村を思わせる風景は非常に美しい。印象派の絵画は、こんな場所で生まれたのかと思う。明るい日差しの下、子どもがわら山で遊び、葡萄畑に灌漑用水が引かれ、村の鍛冶が蹄鉄（？）を打つ音が響く・・・。ＢＧＭとあいまって印象的な場面をつくり出す。
　実はここ、バクー人が住む、とある惑星上。この惑星は特殊な放射線がＤＮＡを修復・活性化するおかげで人々は歳をとらずに済むという楽園のような場所。人々は何百年も生きているせいか、科学技術を捨て昔ながらの生活を選んだのだ。
　不老不死といえば、秦の始皇帝が仙薬を求めて使者を遣わしたという話以来の人類の憧れ。しかし、と考えてしまう。永遠に生きる存在となった時、時間は無限に在るわけだから、あらゆることに膨大な時間を費やすことができる。そうなると、全てのことに飽きてしまう時が来るのではないか。
　となると、死を望むようになるというパラドクスに見舞われるかもしれない。
　表題の『叛乱』は一見、冒頭のデータ少佐の行動を指しているようだが、物語が進むとピカード艦長以下主だった士官の行動だと分かる。幾重にも張り巡らされた伏線、思わずニヤリとさせられるやり取り、ジャン・リュックが隅に置けない、副長が何年かぶりにヒゲを剃る(^^)、などトレッキーには大サービスの内容。個人的にはエンタープライズＥの戦闘力をもっと見せて欲しかったのだが。
　さりげなく技術過信と人間の欲望に対する批判が入っているあたりはさすが。オススメ映画だが、スタートレックの背景を知らないと楽しめないかも。
　いやな報道が続く中、ファンタジーに逃避する日もあっていいと思う。