原作をほぼなぞるストーリーには好感が持てた。ただ、佐伯(渡辺謙)と陶芸のかかわりが浅く描写されている代わりに、妻、枝実子(樋口可南子がいい!)が陶芸のショップで働くのはどうかなとは思うが。
ラストがいい。原作のイメージどおり。過不足無く描写されている。
野焼きで焼いたカップを手に山を下りる佐伯。気にかかっていたことを一気に片付け、心が軽くなったのだろう。心配して山を登ってきた枝実子とすれ違うが、妻の顔は初対面の女性のそれとして佐伯の瞳に映っていた。
二十数年前と同じように名前を尋ねる佐伯。
「枝に実る子の枝実子です」
やはり二十数年前と同じように応える枝実子。
佐伯はいい。素敵な恋を二度も始められるのだから。が、枝実子の気持ちを思うとただ切ない。
二時間の枠で、原作をほぼ忠実にこれだけ再現するのは、やはり堤幸彦の力量だろう。ただ個人的には、原作にはなかった、きれいごとで済まないことを盛り込んだ意欲は評価できるが、陶芸をもう少し生活とからめてほしかった。その方が、なぜあの山に行ったのかといったことを含め、ラストが生きる。それと、会社の新入女子社員、生野の性格のかわいさも描いてほしかったな。
本作は原作を読んでも、ぜひ観てほしい一本。オススメ。
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