1992年の「ディレクターズカット」との違いはというと、ベースが「インターナショナル版」となっており、暴力シーンが残されたことと、ラスト、エレベーターのドアが閉まるところで終わるという2点が目を引く。
しかし、細部に目をやると、大幅なデジタル修正が加えられ、画像の美しさやサウンドはまったくの別物といって良いほどの完成度の高さ。さらに、映像の矛盾点(ミス)も修正されている。
例えば、DVD内のメイキングでも紹介されているが、レプリカントのゾーラ(ジョアンナ・キャシディ)が射殺される印象的なシーン。何枚ものガラスを突き破って最後に息絶えるという場面で、当時非常にハラハラさせられた。
以前のカットではよく見ると女性スタントマンだということが分かるが、本作ではジョアンナの頭部をグリーンバックで撮影し、違和感なく合成している。動きのあるシーンで顔は良く見えないわけだが、そこまでこだわったスタッフに脱帽。
他にもデッカード(ハリソン・フォード)の口と台詞が合っていないシーンを多忙なハリソンの代わりに、実の息子を代役に立てて撮影しなおし、やはり上記のような手法で口元の動きを合成するなど、新規に取り直す以上の手間をかけて制作されている。
筋立てとしては、デッカードがユニコーンの白昼夢を見ることで、やはりデッカード=レプリカントを暗示する作品となっており、これがリドリー・スコットの最終見解のようだ。
だとすると、危険なレプリカント狩りをレプリカントに担当させている(危険だから人間にはさせられないという解釈もある)ことになり、デッカードが自らの正体に気づいた時にどうなるのか? 彼の寿命は? という新たな疑問も浮かんでくる。
結局、僕らはリドリー・スコットの掌の上から抜け出せないのだろうか。
現代SFとしても通用する本作品。未見の方にはまず「ファイナルカット」をオススメしたい。
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