「けやぐの道草横丁」

身のまわりの自然と工芸、街あるきと川柳や歌への視点
「けやぐ」とは、友だち、仲間、親友といった意味あいの津軽ことばです

#39.蝉坊動物録 - マダラマルハヒロズコガの幼虫 -

2014年06月17日 | 動物

cast ; マダラマルハヒロズコガ/斑丸翅広頭小蛾/
Hypophrictis conspersa/鱗翅目ヒロズコガ科
幼虫の俗称/鼓蓑虫/つづみみのむし
host plant(?) ; 朽木屑、アリ、コケなどといわれている
size ; 20mm ab.
date ; 05/19/10:20
place ; 東京・板橋区・板橋4丁目・板橋東いこいの森
find ; Mrs.蝉
photo ; Mr.蝉



  まことに珍なるガの幼虫です。
  Mrs.蝉さんの好奇心が「一生に一度出会えればいいと思っていた」といわせる、「イモムシハンドブック」のヴィジュアルのおもしろさから得た、個性的な印象の虫です。
  「イモムシハンドブック」による2度めのファインプレー!です。
  鼓蓑虫/つづみみのむし/ともいわれるその「繭/まゆ」のかたちは、まるでヴァイオリン属の楽器の胴の裏を連想させます。
  よくみると材質的には、フェルトや不織布のように繊維を絡ませた、艶のあるきちんとした仕上がりの繭です。
  外の湿気や湿度に対応して、いつもカラリと快適な生活環境を維持できるようにできていると想われます。
  この2枚の繭を幼虫から蛹/さなぎ/まで、二枚貝と同じく身を守る殻のように使い、必要なときにはちょいと頭を出してヤドカリのように移動しながら、生活するのだそうです。▼/資料画像/


  同じ住居を作るガでもミノガ類は手近な「建材」を使うのに対し、マダラマルハヒロズコガは自ら吐き出す糸だけで家を作る「自力本願」マインドに徹しているようです。
  食草/host plant/も、鱗翅目なら植物のフレッシュサラダが大好物なのかと思きや、このガは朽木屑、アリ、コケなどを食すともいわれ、未だはっきりとした研究結果が得られていないように見えます。
  成虫もとりたてて特徴のない地味な装いです。▼/資料画像/


  ガの種類はチョウの20倍とも30倍ともいわれているそうで、ガに限らず、地球上で最も繁栄した種といわれる昆虫のなかには、普通では考えられない「生活環/せいかつかん/Life cycle」を持つものもあるのでしょう。
  それらを研究することで、例えばヒトの火星での生活の重大なヒントになったりすることがあるかも知れません。

§

  発見地点の「板橋東いこいの森」はいわゆる「知る人ぞ知る」特殊な立地のポイントです。
  石神井川の左岸を下っていくと、JR埼京線に架かる鉄橋をくぐったところにある、小山のような自然林の斜面です。
  地図で見ると、ほぼ南北に走る埼京線がこの緑地を東西に分断して走っていて、その東側にあたるのがこの「板橋東いこいの森」です。
  このエリアだけがまるで板橋区の「飛び地」のように北区側にはみ出ているように見えます。
  一方の西側の部分は、ネットフェンスで囲われていて、実質的に立ち入り禁止の区有地の自然林のようです。
  以前から一度は入らせていただいて自然を見てみたいと思っているポイントではあります。
  古地図を観て、石神井川が自然河川のままであった近世を想像すると、武蔵野台地をジグザグに刻んで流れ下る川が形成した「滝野川渓谷」の左岸に小高くそびえる崖か、川に突き出た岬という印象であったように想われます。
  スケールこそ違え、きっと「滝野川渓谷」はこの辺りから始まり東の王子・飛鳥山まで続く、江戸の「グランドキャニオン」とでもいえる地形だったのではないでしょうか。
  明治維新の廃藩置県/1871(明4)年/まで、このあたりは加賀・前田藩の下屋敷地内/21万余坪/で、「板橋東いこいの森」はその北東部にあたり、古地図にはスギ//やマツ/松/の林であると表記され、ちなみに小宅のあたりは「雑木林」であると書かれています。▼




§§

  宅地化からまぬがれた貴重な自然の雑木林であることはもちろんですが、現在のこの地の効用は、石神井川緑道から上り詰めたところにある「公衆トイレ」にもあります。
  しかも、現代的な設備を持ち安心して使える、きっちりとした規格の建物です。
  この施設にいつもお世話になっているMrs.蝉さん。
  公園の頂上入口付近に立つヒノキ系の樹の根元のウロを、枝切れでほじくって見つけた、無心・童心・快心・渾身の1頭でした。▼ ▼

  






トイレから出るとアリスの国にいる  蝉坊



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会員の投句作品と互選句の掲示板。
http://blog.goo.ne.jp/keyagu0123
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川柳と音楽、映画フリークの独り言。
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