キューピーヘアーのたらたら日記

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『A Wild Haruki Chase 世界は村上春樹をどう読むか』

2009-01-14 12:42:26 | 
国際交流基金企画

柴田元幸、沼野充義、藤井省三、四方田犬彦編


2006年3月25日、26日東京、29日札幌・神戸と3日間、3都市で国際交流基金主催により、

17ヶ国23人の翻訳家を招き、作家、研究者が一堂に会し、

村上春樹作品について熱く語り合った

「国際シンポジウム&ワークショップ 春樹をめぐる冒険---世界は村上春樹をどう読むか」

の全記録である。


2006年といやあ、村上春樹がノーベル文学賞受賞を噂された年ではないのか?

何ゆえノーベル賞財団は村上春樹を授賞者リストから除外したのか?

大衆文学にすぎず現代人が求める普遍性などないと判断したのか?

あるいは本国日本の文壇で無視され続け、批評家の支持がないことに所以するのか?

ぜひ、理由を伺いたいものだ。


キューピーはかつて村上春樹の熱烈なファンだった。

デビュー作『風の歌を聴け』からずっとリアルタイムで全小説を読んできた。

レイモンド・カーヴァーやフィッツジェラルド、サリンジャーを

村上春樹の翻訳を通して知った。

だが、超焼け糞エッセイ『うさぎおいしーフランス人』以降熱が冷めてしまった。

氏自身も、あのタイミングでの受賞を期待していたのであろう。

川端康成の「美しい日本の私」、大江健三郎の「あいまいな日本の私」

に続く講演を聞きたかった。

きっと完璧主義の氏は用意していたであろう、

現代文学のメルクマールとなるべき講演を…。


今や村上春樹の小説は約40ヶ国で翻訳・出版され、中国では100万部を突破し、

韓国では「ハルキセデ」と呼ばれる世代を生み出し、

ロシアでは書店の一番広いスペースを村上作品が占めるという状況だ。

それは、グローバリゼイションの一言では片付けられないものをはらんでいる。

何より解釈が様々なのだ。

日本ではアメリカナイズされた小説と呼ばれたものが、

アメリカの批評家はそこにエキゾチックな日本を見出したり、

モンゴル人に至っては『羊をめぐる冒険』が自分達にしか理解できない小説、

とまで言わしめているのである。

その様々な解釈のなかでもとりわけキューピーの目を惹いたのが、

リチャード・パワーズの基調講演。

題して、「ハルキ・ムラカミ---広域分散---自己鏡像化---地下世界

---ニューロサイエンス流---魂シェアリング・ピクチャーショー」

村上春樹の小説の謎を解く鍵が、ニューロサイエンスの進歩によりもたらされるかもしれないという予感!

生で聞きたかったなあ、この講演。


最後に国際交流基金の佐藤幸治氏の舞台裏報告の美しいまとめの引用で

たらたら日記も締めたいと思います。


「私たちは期待とともに注視する。村上春樹ブームの彼方に、

 偏狭なナショナリズムに囚われることなく、

 個人が普遍的価値でつながっていけるような世界が広がっていくことを----

 2006年、サクラの季節に世界から集い、

 村上文学によって結ばれた翻訳者たちのように。」

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