キューピーヘアーのたらたら日記

ガンバレ日本!!!TB&コメント大歓迎♪

『SAKURA』 第三幕-3

2011-04-15 15:44:29 | 私が作者です
第三幕-3


同じ病室。桜子がパイプ椅子に座っている。

また立ち上がって遠藤の掛け布団を直し、眠っている遠藤に話しかける。


桜子:遠藤小吉さん。いいお名前ですね。欲張らず、

   身の丈にあった生き方をしろという願いが込められていますよね。

   私は物心付いたときからあなたのお名前を存じておりましたよ。

   もっと早くにお会いしたかった。


ボブがバタバタと病室に入ってくる。


ボブ:あ、桜子さん。今、警察から帰ってきたところです。

   義兄の具合はどうです。

桜子:ずっと寝たまんまです。

ボブ:義兄は明日、警察病院に搬送されるそうです。

   まったく、僕まで聴取されるなんて…。

   身内が犯罪者になるなんてこれ以上ない最低な気分ですね。

桜子:で、何を聞かれたんです?

ボブ:義兄に以前からロリコンの気がなかったか、とか、

   クリスティとの間に子供ができなかったのは

   夫婦生活に何か問題があったからじゃないか、とかですよ。

   まったく、クリスティが死んだ後でよかったよ。

   生きていたとしたら、どんなに嘆き苦しんだ事か…。

桜子:まあ、警察って怖い。

ボブ:そして、義兄の家にも案内されましたよ。

   小さな家。中流階級の住む家じゃないか。

   一体全体、義兄はクリスティの遺産を相続しなかったんだろうか?

   いくら隠居の身とはいえ。

桜子:あのね、日本は土地が狭いの。だから不動産はとってもお高いの。

   だから、みんな小さな家で我慢してるのよ。

ボブ:僕たちの父親はテキサスオイルカンパニーの筆頭株主でした。

   僕とクリスティは父の死後、株式の5%ずつを相続した。

   クリスティはそれをすぐ換金しスイスのチューリッヒシティバンク

   に預けたと言っていた。その額は3000万ドルです。

   本当はもっと快適な暮らしができていた筈なんだ。

   そうすれば、こんな犯罪にも巻き込まれずに済んだかも知れない。

桜子:いくらお金を持っていたとしても幸せとはいえないわ。

   伯父さんはきっと寂しかったのよ。

   家族も友達もいなかったんだから。一人ぼっちだったのよ。

   だから、若い子ともう一度青春を謳歌したかったのよ。

ボブ:若い子と青春を謳歌あああ?

   今日、警察で少女の動画を見させられましたよ。

   何と言う暗い目!性的虐待を受けていたのは明らかだ。

   僕は少女のあんな暗い目は初めて見た。

   それを、青春を謳歌だとおおおお?

桜子:ごめんなさい。怒らないでちょうだい。教養がないものですから私。

ボブ:いや、興奮して申し訳ありませんでした。

桜子:私はふと、伯父と相手の方が本当に愛し合っていたんじゃないかって

   気がしたものですから。

ボブ:あなたは教養がないんじゃなくて、世間の裏側をご存知ないだけだ。

   男が商売女相手に真剣に付き合うものか。

桜子:そういうものなんですか?

ボブ:そうですとも。そりゃ中には商売女を愛していると勘違いする男もいる。

   自分のどす黒い欲望を愛という名のオブラートで包んで

   不幸な女に束の間の夢を見させる。

   しかしそれは、女の心をも征服したいというもう一つの欲望にすぎない。

   偽善のかたまりだ。

   やがて女が自分以外の男にも同じサービスをしているという

   厳しい現実に薄っぺらなオブラートは溶け、

   男の口には苦い後悔だけが残る。

   もしそれをクリアしたとしても

   スカスカ女との夜の生活に男はすぐに飽きる。

桜子:スカスカ女!?

ボブ:そう、スカスカ女。失礼、女性に

桜子:そうね、真剣になる男ってうざったいだけだったわね。

   私はあなたのおっしゃる世間の裏側、男が男のために作り上げた

   売春のシステムの一から百までを知り尽くしたそのスカスカ女よ。

   世間は男女平等って言うけど、

   なら女が女のためにそういう組織を作ればいいのよ。

   女だって、くたびれて腹の突き出た亭主より

   若いマッチョな男に情熱的に愛されたいわよ。

   それを商売にすればいいじゃない。

   でも、できないわね。

   男と女は体の造りが違うものね。

   その時点で女の負けよね。そう思わない?

   だって、あなたこんなおばあちゃん相手に役に立たないでしょ?

   立つの?立たないの?どっちよ。

ボブ:う、あんた…

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『SAKURA』 第三幕-2 | トップ | 『SAKURA』 第三幕-4 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

私が作者です」カテゴリの最新記事