6月6日(土)。今朝もまずまずの天気。到着したキャンパーたちが空いた場所を探して次々と車を走らせている。週末の平湯キャンプ場は一段と賑やかになりそうだ。
(Wikipediaその他のHPやブログの記事、図書を参照したり引用させて頂きました。ありがとうございます)
朝食は、飯盒で炊いたご飯、ソーセージ・目玉焼きを添えたサラダ、スープ、フルーツ、コーヒー。
カラスよけに食品やごみはテントの前室へ。リュックを背負い平湯温泉バス停へ。
バス乗り場は改築され美しくなっていた。30分に1本ある上高地行のバスは、コロナのため1時間に1本に減便中。9時発のバスに間に合う。『あかんだな駐車場』発のバスは一杯で、ここから2台目のバスが出された。
荒涼とした焼岳の横を通過し、静かな大正池と屹立する穂高の山並みが目に飛び込む。何度見てもこの瞬間、穂高は予想を超える高さを感じさせる。25分程でバスは『大正池ホテル』に到着。一緒に7,8人が降りた。ホテルは閉館中。後でわかったが上高地のほとんどのホテルはまだ休業していた。
大正池の畔に出る。向こうにどっしりと焼岳が構える。山頂の噴煙は今日は見えなかった。ここから岳沢湿原まで、色々な花を眺めながらゆっくりと散策した。以下、道中で見た花を中心に紹介したい。
穂高はいつもより雪が少ない印象。
スミレが現れた。白い小さなスミレと紫の大きなスミレ。白いスミレはツボスミレ(坪菫)。ニョイスミレ(如意菫)とも言うそうだ。
こちらの紫のスミレは、(※)踞が白いのでオオタチツボスミレか。北方系の種でブナ林の谷筋などやや湿った落葉広葉樹林下や山道の傍に生育する。
HP「三河の植物観察」より「スミレの花の構造」
(※)唇弁の踞(きょ)…唇弁(しんべん)は左右相称の花の一番下にある花弁のこと。花を下から受ける形の花弁。 昆虫が着地しやすい形に進化し、受粉する昆虫を誘うのに役立つ。その唇弁の付け根の膨らんだ部分を踞と言う。
この地味な花をよく見た。ズダヤクシュ(喘息薬種)。ユキノシタ科ズダヤクシュ属の多年草。 亜高山帯、深山の森林内、林縁に自生。喘息のことを信州の方言でズダと言う。喘息の咳止薬として用いられてきたのでこの名が付いた。花弁は針状で、花のように見えるのはガク片。
ヤグルマソウ(矢車草)の新葉。ユキノシタ科ヤグルマソウ属の多年草。 大きく独特の形は上高地の林床で目立つ存在だ。
オオバミゾホオズキ(大葉溝酸漿)。「ハエドクソウ科」という珍しい科に属する多年草。高山の沢沿いや湿地などに群生。日本、南千島、樺太に分布。 ビジターセンターの方が「もう咲いていましたか」と少し驚いていた。
ズダヤクシュ。花が終わると「緑のお餅を乗せたスプーン」のような面白い構造物が伸びてくる。
「果実は蒴果で、長短2個の舟形の心皮に包まれる」(HP『草花と樹木のデジタル植物園 "Botanic Garden" 』) ということでこれは2個の心皮だ。
HP『BOTANY WEB』(Takeshi Nakayama)より「心皮」
カラフトダイコンソウ(樺太大根草)。バラ科ダイコンソウ属の多年草。別名、チシマダイコンソウ(千島大根草) 。北海道、本州中部地方以北に分布。
河原には、沢山のヤナギの綿毛が舞っていた。
カンスゲ(寒菅)か。
大正池に流れが出てきた。やがて梓川に移行する。透き通った水も川底の石もとても美しい。
河原にキイチゴ? 花びらのよれよれ加減からミヤマニガイチゴ(深山苦苺)か。バラ科キイチゴ属。
林の中に入ると、この空色の可憐な花を見るようになった。エゾムラサキ(蝦夷紫)。ムラサキ科ワスレナグサ属で唯一の日本在来種。
ユキザサ(雪笹)。キジカクシ科マイヅルソウ属の多年草。
アマドコロ(甘野老)。キジカクシ科アマドコロ属の多年草。花の先端だけ開き(6分裂して)受粉が行われる。
田代湿原に到着。
ツマトリソウ(褄取草)。ヤブコウジ科ツマトリソウ属の多年草。花冠は7弁、雄しべ7、雌しべ1とあるが、これは6弁。
木道の傍のツマトリソウ。花冠は7弁と6弁。
レンゲツツジ(蓮華躑躅)の開花はもう少し先。ちょっと残念。
湿原の奥に白い花の群落が。ビジターセンターで聞くと「ミツガシワ(三槲)」と。上高地ではここだけに分布するそうだ。
Wikipedia「ミツガシワ」より。
田代池。
カラマツの柔らかな新芽。
ふわふわのスギゴケ。先端に新葉が。
ミヤマザクラ(深山桜)。バラ科サクラ属。別名シロザクラ。
花が終わったシロバナエンレイソウ(白花延齢草)。ユリ科エンレイソウ属の多年草。
田代湿原を過ぎ、ラショウモンカズラ(羅生門葛)が多くなった。シソ科ラショウモンカズラ属。今が花の盛り。
可愛いミヤマハコベ(深山繁縷)。ナデシコ科ハコベ属の多年草。
フキ(蕗)。キク科フキ属の多年草。雌雄異株。
ニリンソウ(二輪草)も沢山咲いていた。キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。
ミヤマニワトコ(深山接骨木、深山庭常)。レンプクソウ科ニワトコ属の落葉低木。 ニワトコの高山種。本州の日本海側に分布。 「接骨木」の名は、枝や幹を煎じて水あめ状になったものを骨折の治療の際の湿布剤に用いたためといわれる。
不明。
マツタケのようなキノコ。
ラショウモンカズラ。「ラショウモン」の名は、花を(※)渡辺綱が羅生門で切り落とした鬼の腕に見立てた所から。横から見ると、確かに肘から切られた青鬼の腕に見えなくもない。花弁の筋が筋肉っぽい。
(※)渡辺 綱(わたなべ の つな)…平安中期の武将。時の権力者・藤原道長を武門の面で支えた源頼光(みなもとのよりみつ)、通称「らいこう」に仕えた。「頼光四天王」の筆頭。先祖の源融(みなもとのとおる)は『源氏物語』の主人公の光源氏の実在モデル。綱もイケメンとして有名。
温泉津で行われた石見神楽。鬼と四天王の対決の場面
渡辺 綱は「頼光四天王」として大江山の酒呑童子(しゅてんどうじ)退治や、京都の一条戻橋の上で鬼の腕を切り落とした逸話で有名。謡曲『羅生門』は一条戻橋の説話の舞台を羅城門に移しかえたもの。ラショウモンカズラの名はここから。
ミヤマカラマツ(深山落葉松)。葉の形からカラマツソウ(落葉松草)とは区別。キンポウゲ科カラマツソウ属の多年草。
「カラマツソウ」の名は、花がカラマツ(落葉松)の葉の形に似ているから。
花の咲き始め。
これはカラマツソウの若芽。食べられそう。
フッキソウ(富貴草)も花は終わりかけ。ツゲ科フッキソウ属。
花は単性(=同じ株に雄花と雌花が咲く植物)。茎頂に穂状花序をつけ、雄花は茶褐色の葯をもつ白く太い雄しべが4本長く突き出す。根元に小さな萼片があり花弁はない。雌花は雄花の基部につき、雌しべは先が二つに分かれる。
タガソデソウ(誰袖草)。ナデシコ科ミミナグサ属。長野県、山梨県の一部に分布。
落葉樹林内や林縁にやや稀に生える多年草。確かにミミナグサに似ているが清楚で可憐な花だ。
田代湿原を過ぎるとこの黄色が目立ってきた。キジムシロ(雉莚)。バラ科キジムシロ属の多年草。和名は、花の後、葉が放射状に展開する姿がキジが休む莚(ムシロ)に例えられたため。種小名 (fragarioides) は「オランダイチゴに似た」という意味という。なるほど、葉の形が似ている。
花びらのよれよれ加減からミヤマニガイチゴ(深山苦苺)。
これもキイチゴっぽいが…。
針葉樹の香りの中を歩く。
見るとつい撮ってしまうラショウモンカズラ。シソ科の中でも大きく鮮やかな花、しかも沢山付けるので目を引く。群生するので余計に目立つ。 突き出した花弁の先の模様も面白い。ハチが引き付けられる気持ちがわかる。
群生するマイヅルソウ(舞鶴草)。葉の模様が家紋の(※)舞鶴紋に似ることから、舞鶴草という名が。
HP「家紋市場」より「日蓮宗鶴」
これが舞鶴紋だが…。
首がない舞鶴紋…かな。
ゴゼンタチバナ(御前橘)。ミズキ科ミズキ属ゴゼンタチバナ亜属。花はこれから。4枚の白い総苞に囲まれたヤマボウシのような形の花が咲く(下の写真)。まだ緑のかわいい総苞が付いている。
2008年8月 鹿島槍ヶ岳で
梓川の河畔に出た。
これこれ、この清流が上高地。
この蕾、なつかしい紅色の花。どこかで咲いていないかな。
これは… キヌガサソウのような葉の形…。
しかし、この花、見たことがない。
調べると、クルマバツクバネソウ(車葉衝羽根草)。シュロソウ科ツクバネソウ属の多年草。 変わっている!
HP『素人植物図鑑』によると「茎頂から花柄を出し、直径4-7cmで黄緑色の花を上向きに1個つける。花弁に見える(※)外花被片は4-5個あり、緑色で長さ3-4cmの披針形~狭卵形。内花被片は4個あり、黄色で線形、外花被片より短く、外花被片の間から下に垂れる。雄しべは8-10個あり、葯は5-8mmの線形で黄色、葯の先に葯隔が細長く突き出る。雌しべは黒く花柱は4裂する」
細い黄色の花弁のように見えるのが雄しべなのだ。
(※)花被片(かひへん)…植物の花被を構成する要素の一つ。外花被(ガク片)と内花被(花弁)を含む。通常、花弁とガク片が形態的に類似する、あるいはほとんど区別できない場合に、それらをまとめて花被片という。
ニリンソウの群生が見られるようになった。
ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)がここだけ花を開いていた。
ゼンテイカ(禅庭花)。キスゲ亜科の多年草。 一日花で朝に開きその日の夕方にしぼむ。二日花も見られ、朝咲いて翌日夕方にしぼむものもある。次々に別の花が咲くので花期は長い。
田代橋までやって来た。
マイヅルソウの花が咲いていた。可愛い花だ。
上高地温泉ホテルが見えた。
ミヤマハタザオ(深山旗竿) 。アブラナ科ハタザオ属。
この黄色も目立っていた。エゾタンポポ(蝦夷蒲公英)。北海道だけではなく東北地方~関東地方北部~中部地方に分布。花茎の上部に白毛が密生する。
クルマバソウ(車葉草)。アカネ科アカネ亜科ヤエムグラ属の多年草。
樹皮の瓜膚模様がよくわかるウリハダカエデ(瓜膚楓)。
HP「NAVERまとめ」より本物の瓜膚模様
ウワミズザクラ(上溝桜)。バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。よく似たイヌザクラとは、花の枝に葉がつく事で区別できる。
名前の由来は、古代シカの肩甲骨の裏に溝を彫ってこの樹皮で焼き、溝の周辺に生じる割れ目を見て吉凶を占った。この裏溝が転じて「上溝桜(ウワミゾザクラ)」と書き、それが転訛してウワミズザクラと呼ぶようになったと。 ふ~ん。
ズミ(酸実、桷)。バラ科リンゴ属。リンゴに近縁な野生種。語源は、「染み」(樹皮を煮出して黄色の染料が取れる)、 または実が酸っぱいことから「酸実」。
材は家具や細工に利用。果実は果実酒にされる。リンゴの台木として、種から育てたズミが使われる。
レンゲツツジの蕾と霞沢岳方向の山並み。
美しいカメムシがいた。
シロバナノヘビイチゴ(白花の蛇苺)。バラ科オランダイチゴ属の多年草。
ミズナラの新葉。
あの河原、気持ちいいだろうなぁ。
ウェストン碑。ウォルター・ウェストンは明治時代、日本アルプスに魅了され、上高地の存在を世界に広めた。
カツラの新葉。
このV字紋のある葉は? 「V字紋の葉」で出てきた! ミズヒキ(水引)。タデ科イヌタデ属の草本。
エゾタンポポ。
ウワミズザクラ。花は食器洗い用の細長い白ブラシのように見える。果実は赤い実で食用になり、鳥や哺乳類も大好物。
ニリンソウ。初夏には地上部が枯れる、春植物(spring ephemeral)のひとつ。
花弁のように見えるのは萼片で、5~7枚ある。 花の真ん中に多くの雄しべと雌しべがある。多数ある雌しべのうち結実するのは数個。 写真の花の雌しべは5、6個の子房が膨らんでいる。
エゾムラサキの学名は Myosotis sylvatica 。
属名の Myosotis はギリシャ語の「myos(ハツカネズミ)+otis(耳)」。葉の形を表している。種小名の sylvatica は「森林に生える」という意味。
タガソデソウ。長野・岐阜・山梨県だけに生える希少種。環境省の絶滅危惧II類、長野県の準絶滅危惧種。
シロバナノヘビイチゴ。下の写真のように果実は赤く熟し食べられる。名前は「ヘビイチゴ」だがオランダイチゴ属だけあって美味しいらしい。食べてみたい。
HP「四季の山野草」より「シロバナノヘビイチゴ」
ベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草)が開花していた。ツツジ科イチヤクソウ亜科イチヤクソウ属。
日本では北海道、本州中部地方以北に分布し、山地帯から高山帯下部の草地、低木林、林縁などに生育する。イチヤクソウ属の他の種と異なり、群生することが多い。
バスターミナルから河童橋にかけてのカラマツ林の爽やかな黄緑色。
クサソテツ(草蘇鉄)。新芽はコゴミ。河童橋周辺のホテルも休業中。
オオカメノキ(大亀の木)の葉。レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木。ムシカリ。
ツルアジサイ(蔓紫陽花)。花はこれから。
複雑な絡み合い。
こちらも。
群発地震で梓川左岸の登山道が被害を受け、通行できなかった。
シロバナエンレイソウ。外花被片3枚、内花被片3枚。白い内花被片は次第にピンク色を帯びることも多い。
花が終わり、目立ってきた長短2個の舟形の心皮に包まれて種子が育っている状態。
岳沢湿原。大きなヤマドリゼンマイが新葉と胞子葉を伸ばしていた。
広がり始めの新葉。
胞子葉。沢山の胞子嚢(ほうしのう)が覆っている。この色がヤマドリ(下の写真)に似ているのでこの名が付いた。
HP「日本の野鳥識別図鑑」より「ヤマドリ」
岳沢湿原の絶景。
湿原にオシドリやカモ、イワナの姿を探す。後ろは六百山(ろっぴゃくざん)。標高2470m。
湿原に流れ込む岳沢の清流。
マイヅルソウの花。
HP「素人植物図鑑」より引用。節ごとに2個ずつ咲く、とってもキュートな花。
装飾花だけ残ったオオカメノキの花。
ミズゴケ。世界で約150種、日本で47種が分類されている。
河童橋に戻ってきた。
人通りが少なく、こんな写真を撮ることができた。
五千尺ホテルも休業中。テイクアウトのソフトクリームは販売。
清水川の流れ。
バイカモ(梅花藻)。花はもう少し後。
ビジターセンター前のキジムシロ。センターは開館していたが展示は一部のみ。『上高地 今日の花 20種』というプリント(1枚100円)が参考になった。16種はここで取り上げた。
余裕の河童橋周辺。
カラフトダイコンソウ。
キジムシロ。均整のとれた花だ。
ヤグルマソウから花軸が伸びていた。
バスターミナルの店も閉店。ホテルも店も開いてないので、バスツアーの団体客はいない。静かな上高地。
平湯バス停到着。道路横に咲いているトチノキの花を見に行った。
トチノキ(栃の木)。ムクロジ科トチノキ属の落葉広葉樹。 かつて子どもや祖母とよく栃の実を拾いに行った。拾った実は、祖母の生まれた山里の親戚に送り、栃餅の材料に使ってもらった。
ナナカマド(七竈)の花。バラ科ナナカマド属の落葉高木。オレンジの紅葉や赤い果実が美しい。北海道や東北地方で街路樹によく植えられる。
上下のサイトは新しいキャンパーが来ていた。
奥飛騨温泉のA‐COOPで買い物。奮発して飛騨牛のすき焼き!
今日は日本酒を飲みながら焚火を楽しんだ。