けいはんのはざまにて

心にうつりゆくあれこれについて忘れぬうちに書きとめよう

川久保から善峯寺まで 2020.4.30

2020-04-30 21:20:04 | 登山
 北摂の山歩きを続ける。9時半過ぎ、バスで川久保に到着。今日も好天に恵まれた。
(今回もWikipediaその他のHP、図鑑・図書等を参照したり引用させて頂きました。ありがとうございます)

 やはり集落の草花に目がとまる。マンリョウが秋にできた赤い実を大事そうに付けている。ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木。(※)葉の波状に膨れた部分に共生細菌のすむ部屋があるという。 

(※)HP森林インストラクター東京会「マンリョウの発芽力はなぜ強い」より、マンリョウの葉の断面
 マンリョウの葉の縁の瘤の中には「葉粒菌(ようりゅうきん)」という共生細菌がいて、空気中の窒素を固定している。 葉粒菌は種子を通して次世代に受け継がれる。そのおかげでマンリョウの種子は発芽力が大きい。マメ科植物やハンノキ・ヤシャブシなどが土の中の根粒菌と共生するのと同様の働きといえる。

 マツの木も花をつけ始めた。クロマツの雄花。まだ雌花の枝が出ていない。

 カキドオシ?と思った。しかしツルが伸びて地面を這っている。
 調べるとツタバウンラン(蔦葉海蘭)という聞いたことのない雑草。オオバコ科ツタバウンラン属。地中海原産。大正の頃、観賞用としてロックガーデン等に植えられたものが野生化。北海道、本州に分布。
川久保尾根道の入り口にある石碑 
 集落を越え、渓谷に入ろうとした時。ふいに右から人が駆け下りてきた。尾根道を歩いてきた登山者だ。挨拶して道のようすを聞いてみた。「歩こうと思えば歩けるが渓谷と比べたら整備はまだまだ」と。いずれ自分で確かめようと思った。
 渓谷に入った。今日はシダに注目。ヤブソテツの仲間。(※)1回羽状複葉の小葉が大きく、同じくらいの大きさの小葉が並ぶのが特徴。 
(※)1回羽状複葉… 下のフジの葉のような状態の葉。
HP「樹木図鑑」より
ちなみに2回羽状複葉は下のような葉。

HP「松江植物図鑑」より。ゼンマイの葉。
 そのゼンマイ(薇)があった。
 ちょうど新葉が伸びかけたゼンマイもあった。
 ゼンマイ科ゼンマイ属。渓流のそばや水路の脇などによく出現する。 

 マメヅタ。これもシダ植物だ。
 バス停から30分。この橋向こうの林道を行くと、神峰山寺(かぶさんじ)から上がってくる登山道(東海自然歩道)に最短距離で出会えるはず。今日はこの道を行く。

 この斜面も台風21号の被害を受けて整備中。
 谷が南側なので日がよく当たる。気持ちの良い林道だ。

 このシダ(イワガネゼンマイ?)を多く見かけた。

 この葉の形は…ウリハダカエデ(瓜膚楓 )だった。
 こんな花を咲かせるのだ。カエデ科カエデ属。花は雄花。
Wikipedia「ウリハダカエデ」より
 樹皮の色や模様がマクワウリの未熟な実に似ているのでこの名がついた。 

 サルトリイバラの花。サルトリイバラ科シオデ属の多年生植物。田舎の母親はこれをチマキを包む葉に使う。かわいい花だ。

 橋から15分で東海自然歩道に合流した。今来た林道に一般車は入れない。近くに本山寺の参拝者用駐車場がある。新型コロナのため今は使えない。登山者は適当にスペースを見つけ車を止めていた。

 ヤエザクラでクマンバチが採蜜していた。

 リスを見つけた。どこにいるか判るだろうか。

 種類は分からないが桜の花がまだ咲いていた。

 本山寺へ立ち寄らない場合は右へ進む。

 トカゲがいた。ニホントカゲと思うが、黒い筋がなく白っぽい。「4・5月に交尾する」と書いてある。あごの辺りが赤いのは婚姻色かもしれない。

 本山寺に着いた。ここまで川久保のバス停から1時間。




 ここにもホトトギス(ヤマジノホトトギス)の新葉があった。 
 これがヤマジノホトトギスの花。Wikipedia「ヤマジノホトトギス」より。
 大イチョウと鐘楼。
 本堂。

 本堂の前にこんなものが置いてあった。

 ハウチワカエデが花をつけていた。

 またシャクナゲを撮影。
 山道に戻ったら糞虫と出会った。センチコガネだ。今日は動物をよく見かける。

 天狗杉に到着。「63.9m」と表示があった。

 ホソバテンナンショウの仏炎苞(ぶつえんほう)の中をのぞく。
 
 シロダモ。山行中、見たのはここだけ。クスノキ科シロダモ属。
 クスノキ(楠)の仲間は、葉脈が葉の付け根近くで3本に分かれ長く伸びる(三行脈)のが特徴。葉の大きさは、シロダモ>ヤブニッケイ>クスノキの順。シロダモは裏面が特に白い。クスノキ科は葉をちぎると特有のにおい(樟脳のにおい)がする。(「葉で見わける樹木」林 将之p82参照)
 このスミレは花がとても濃い紫色をしていた。
 この植物の名前がわかった。ミヤマシキミ(深山樒)。ミカン科ミヤマシキミ属の常緑低木。学名をSkimmia japonicaという。有毒植物。雌雄異株。日本、台湾に分布。

 ポンポン山に到着。本山寺から50分。今日はバーナーを忘れコーヒーが飲めなかった。

 もう一度、クロモジの花。

 ウワミズザクラの花の蕾。一昨日より大きくなったか。30分くらい休憩して出発。
 コバノミツバツツジもまだ元気だ。

 シキミの花もまだ元気。

 この分岐点を杉谷方面(左側)に向かった。

 急な下りが続く。

 本当に杉の谷になってきた。

 沢と出会う頃にやっと平坦になる。杉谷の盆地もすぐ。シダはシシガシラ?

 杉谷の小盆地。

 人家はごくわずか。桃源郷のようだ。

 これは「町石」と言うのだろうか。

 舗装された長く急な坂を善峯寺まで下る。

 イラクサを見つけた。

 善峯寺周辺はシャガが広範囲に群生している。見事である。

 やっと駐車場の入り口(左側)に到着。

 善峯寺山門に到着。ポンポン山の山頂から1時間半。山門の受付の方にバスの時間を聞く。「午後3時まで毎時24分発です」。まだ40分以上ある。中に入ることにした。
 本堂。善峯寺(よしみねでら)。西国三十三所の第20番札所。

 天然記念物の「遊龍の松」が有名。全長54mもあったが松食い虫にやられ北側15mが切られた。見事なゴヨウマツ(五葉松)である。

 多宝塔と経堂。
 善峯寺は平安中期、源算上人が開山。1192年後鳥羽天皇が善峯寺の宸額を下賜。室町時代には僧坊52に及んだが、応仁の乱により大半の坊が焼失。江戸時代、5代将軍綱吉の生母、桂昌院によって現存の鐘楼・観音堂・護摩堂・鎮守社・薬師堂・経堂が復興された。

 京都の眺め。比叡山が見える。
 桂昌院(けいしょういん)は五代将軍徳川綱吉の生母。京都堀川西藪屋町、八百屋仁左衛門の娘。女中として江戸城へ入り徳川家光の子(綱吉)を生む。家光死後は出家し、大奥に権勢をふるう。京都の数々の社寺復興に寄与。1705年没。(HP「京都観光Navi」より)

  桂昌院廟。1705年建立。桂昌院の遺髪を納めた廟所。
 
 出会った客は数組だった。
 自粛の呼びかけが効いていた。
 急坂をバス停に向かう。この斜面は杉林に覆われて趣があった。一昨年の台風21号の被害を受けて、結局皆伐されたそうだ。大変残念。

HP「グルコミ」の「善峯寺バス駐車場」より かつての杉林の写真がなかったのでネットの写真を転載させてもらう。
 本山寺の駐車場あたりから同じペースで歩いていた方がバス停にいた。その方は杉谷を経由せず釈迦岳から急坂を下って善峯寺に着いたそうだ。車中でも色々とお話しができた。
 阪急バスで東向日駅に着いた。向日市に出たので、本場のタケノコを買って帰ろうと考えた。色々な方に尋ね30分以上歩き、ようやくこの店にたどり着いた。店の向かいのスーパー(このタケノコ専門店が営業)で、水煮のタケノコを手に入れた。

 東向日駅には戻らず、西向日駅から阪急に乗車。街に着いてからが疲れた一日だった。

高槻市公園墓地から太閤道へ。金龍寺跡から成合まで 2020.4.29

2020-04-29 20:26:45 | 登山
 4月中、何度か高槻市公園墓地を訪れた。昨年春は初めてテーブルと椅子を持参してお花見をした場所だ。高槻市の桜の名所になっている。
(今回もWikipediaその他のHP、図鑑・図書等を参照したり引用させて頂きました。ありがとうございます)

 残念ながら今年は眺めるだけで終わってしまった。(4月5日)

 この公園墓地の一番上に(※)「太閤道」につながる山道の入り口がある。
 若山神社(大阪府三島郡島本町)。3月29日。701年に行基が天皇の勅命を受け勧請したとされる。
 (※)「太閤道」 …磐手橋(大阪府高槻市)から金龍寺跡、四つ辻を経て若山神社に至るハイキングコース(約5km)。 信長亡き後、明智光秀との決戦の舞台、天王山に向かう秀吉軍がこの道を利用した、らしい。

高槻市HPハイキングコース紹介「太閤道の地図」より
 「4月の花(2)」でこのコースの植物を取り上げた。今回「北摂の山歩き」として取り上げ「4月の花(2)」からその部分は削除する。
 前回(4月14日)からの変化を知るため今日も歩いてきた。コースタイムはゆっくり写真を撮りながら歩いて1時間半かかる。植物は種名が不明の物もある。分かれば追記していきたい。

 公園墓地に向かう坂道近くの家で。コデマリ(小手毬 )が咲き始めた。バラ科シモツケ属の落葉低木。中国原産。 

 坂道の斜面に野生化して生えていた。オオツルボ(大蔓穂 )。キジカクシ科ツルボ属。学名の「シラー・ペルビアナ」で呼ばれている。 原産地は地中海沿岸。 

 近くに名神と新名神の分岐点がある。ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)。いわゆるカラスノエンドウ。マメ科ソラマメ属! ソラマメの仲間と思えないが、茎が角ばっていること、豆のへそが長いこと、はソラマメ属の特徴だそうだ。 

 高槻市のHPによると公園墓地は1969年に開園。総計6364区画の墓所と納骨堂、公園、古墳を持つ公園墓地として2003年に完成。第1区から第11区の11に分かれた墓所区域、卑弥呼の時代の青龍三年銘青銅鏡が出土した安満宮山古墳や散策路などが整備されている。 

 ニガナ(苦菜 )。キク科ニガナ属。

 モチツツジ(黐躑躅 )すごい漢字! 墓地脇の林間に自生。本州・四国に分布。低山地や丘陵地の明るい林(アカマツ林など)で多く見られる。
 
 昨年テーブルを広げて花見をした場所。すっかり葉桜。

 

 色々なツツジやドウダンツツジが花盛り。
 最後の階段を上がると山道の入り口がある。

 遠くかすんで六甲山が見える。

 ここが山の入り口。「悠久の丘」という寂しい広場から入る道もある。

 コバノガマズミ(小葉莢蒾)。 スイカズラ科・ガマズミ属。本州(福島県以西)、四国、九州の丘陵~山地に生育する落葉低木。日本固有種。 (4.30判明)

 クロバイ(下)の花芽。

 クロバイ(黒灰)の花。ハイノキ科ハイノキ属の常緑小高木。4〜5月頃、白い小花を(※)総状花序で多数つける。

 枝先に多数の白い花を付ける。葉が濃い緑なので非常に目立ち遠くからよくわかる。 (4.30判明)

総状花序の例(リョウブの花)
(※)総状花序(そうじょうかじょ)… 花序(花が枝や茎にどう付くか)のひとつ。柄のある小花が長い円錐形または円柱形に並び、下から咲いていくもの。

 コバノミツバツツジ(4月14日)は…

 こうなっていた(4月29日)。昨日のポンポン山では花盛りだったが。

 コシダ(小羊歯 )のしげる道。ウラジロ科コシダ属。

 この道も2018年の台風21号の被害を受けている。

 倒木からキノコが生えてきた。

 麓が校区になるI小学校の学校林がある。

 このルート唯一の展望ポイント。誰かが手作りしたベンチを設置してくれたのだろう。感謝。

 西方の眺め。

 ベンチのそばに咲いた花。ツクバネウツギ(衝羽根空木 )か。スイカズラ科ツクバネウツギ属。(4.30判明)

 右が太閤道の若山神社(島本町)方面の近道。太閤道、金龍寺跡は直進。

 太閤道に合流。後ろを振り返り表示を見たところ。左が若山神社方向。右が来た道。

 しばらくヒノキ(檜)の植林地を歩く。

 少し変わった感じの樹皮だが桜の仲間。 

 高い木の上に桜の花が咲いている。ヤマザクラではなさそう。昔々、金龍寺は桜の名所だったという。その名残の桜なのかもしれないと思った。

 コナラも多くなった。しかしシイなどの照葉樹に移行しつつある。

 ヒノキの被害は大きい。
 イタジイはこの根でしぶとく立っている。

 金龍寺が近づいた。昨日川久保渓谷上部で、芽吹いて間もないタケニグサを見た。ここではかなり成長している。



 緑が濃くなってきた金龍寺跡。

 カエデの若葉の木漏れ日が美しかった4月14日。

 ムラサキケマン(紫華鬘)。全草にプロトピンを含み有毒。4月14日。

 ムラサキケマンの花の数はさらに増えていた。本日。

 金龍寺は古い歴史を持つ有名な寺院だった。

 明治の廃仏毀釈で無住となり荒れ果てた。1983年4月ハイカーの火の不始末による火災で本堂は焼失した。

 たくさんの割れた瓦が虚しく転がっている。
 「山ざとにまかりてよみ侍りける 山ざとの 春の夕ぐれ きて見れば 入相の鐘に 花ぞ散りける」 能因法師『新古今和歌集』より
 この歌の「入相(いりあい)の鐘」は金龍寺(こんりゅうじ)の鐘をさす。能因法師は金龍寺からほど近い古曽部の郷に住んでいた。

 金龍寺は、邂逅山(たまさかざん)紫雲院と号した天台宗の寺院だった。延暦9年(790)、阿部兄雄(あべのあにお)が創建、当初は安満寺(あまでら)と称した。康保元年(964)、千観という僧が再営し寺号を金龍寺と改めたと言われる。

 大きなイチョウの木が立っている。
 金龍寺は天正年間(1573~1592)、高山氏(高山右近)の兵火に焼かれたが、慶長7年(1602)、豊臣秀頼が再興した。その頃には寺領30石クラスの寺として門前村が形成され、巡拝や遊山で浄財を集め大いに栄えたという。 


 金龍寺の池と石橋。
 江戸時代にも桜の名所として、また松茸狩りの絶好の場所として知られていた。

 『摂津名所図会』の「金龍寺山松茸狩」に、丘の上にござを敷き火に鍋をかけ、男も女も松茸狩りに興じている様子を見ることができる。春・秋の行楽シーズンに金龍寺界隈が多くの人でにぎわっていた様子がうかがえる。

 金龍寺を後にした。もう夕方だったが、4,5人連れの家族3組と出会った。やはり新型コロナの影響か、近場を散策する家族が増えているのだろう。

 金龍寺跡からの下りはスダジイ(イタジイ)が多い。4月14日。

 スダジイの樹皮。ブナ科シイ属の常緑広葉樹。照葉樹林を代表する樹種。成長すると樹皮に縦の切れ目が入る 。花は5月頃に開花。

 スダジイの雄花(右・下)と雌花(中の直立した枝)庭木図鑑 植木ペディア「スダジイ」より

 座禅石とスダジイ林。 

 十一丁目の丁石。
 麓の磐手橋付近から続く参詣道に、極楽往生を願う「十三仏信仰」によって十三基の丁石(町石)が建てられた。それぞれ丁数と十三仏を表す梵字が刻まれている。

 珍しいキノコ。キクラゲの仲間か。

 これも変わっている。

 太閤道が山道を登り始める場所にある竹林。管理はされてなさそうだ。

 キランソウ。シソ科キランソウ属の多年草。 別名がジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋。地面に張り付くようすから)。薬草としての効能からイシャゴロシ(医者殺し)の異名を持つ。開花期の全草を乾燥したもの(筋骨草)は、煎じて解熱・解毒・下痢止め・せき・健胃などに用いられる。

ユキノシタ(ユキノシタ科ユキノシタ属)の新葉が美味しそうだった。

 シャガ(射干、著莪、胡蝶花)。
 アヤメ科アヤメ属。学名はIris japonicaだが中国原産。日本のシャガは三倍体(※)なので種子はできない。人が株分けして分布を広げてきたはず。ソメイヨシノのように日本中のシャガは、すべてクローンである可能性が高い(中国には二倍体の個体があり、花色・花径などに多様な変異があるそうだ)。

Wikipedia「ヒガンバナ」より
 ※三倍体…細胞の核には遺伝子(DNA)を含む染色体がある。染色体は、同じ形のものが2組ずつある(父方・母方の染色体が一緒になるため)。人間の場合、23種類×2組=46本の染色体がある。同じ形の染色体が3組ずつ入っている場合を三倍体いう。
 三倍体植物は不稔(子ができない)性だ。バナナや種なしスイカはこの現象を応用してつくった。 
 ヒガンバナも3倍体なので種子をつくらない。シャガと同じく人が株分けして分布を広げてきたはずである。

 太閤道の山道に入る辺りにある小さな滝。

 もうすぐ山道は終わり成合集落に出る。

川久保渓谷からポンポン山、本山寺 2020.4.28

2020-04-28 21:11:57 | 登山
 新型コロナのため遠出は控えている。地元北摂の山を歩くことにした。
 年に一度位のペースで歩く川久保渓谷。そこを遡上し、釈迦岳からポンポン山、本山寺を通って川久保に戻るコースを歩いてきた。休憩を入れて5時間の行程だ。
 以下、写真と簡単な説明を載せる。分かったことは追加していく予定。(Wikipedia、その他のHP、図書を参照しました。感謝します。)
 川久保のバス停。9時半過ぎに到着した。

 JR高槻駅方面の時刻表。
 手前の道路は府道。左は高槻へ、右は大沢集落を通り京都の柳谷観音、長岡京市へ抜ける。正面の川(水無瀬川上流)に沿って歩く。



 川久保集落も花でいっぱいの季節。
 集落の一番上まで来た。右の石碑がある所が「川久保尾根」道の入り口。
 ここから渓谷が続く。

 川は固いチャート層を削りながら流れ下っている。
 オオバタネツケバナか。アブラナ科タネツケバナ属 。

 北摂の山は、2018年9月の台風21号によって大変な被害を受けた。
 去年(2019年)の春ここを歩いた時は、至る所倒木で行く手を塞がれていた。這いつくばり乗り越えたりして、延々とフィールドアスレチックを繰り返す山歩きになった。今回は、少し頭を屈めば通れるまでに整備されていた。感謝。

 ヤマブキ(山吹)。

 バラ科ヤマブキ属の落葉低木。
 ヤマアイ(山藍)。トウダイグサ科ヤマアイ属。山林の下草として群生する多年生草本。中国・朝鮮・台湾・インドシナ・本州~琉球列島にかけて分布。
 地下茎が横に這って繰り返し分枝し、群落を形成する。花期は4~7月。雌雄異株。(※)穂状花序で、花は間を置いて付き、特に雌花序では花数が少ない。

ナンゴクネジバナ(3月15日国頭村)
(※)穂状花序(すいじょうかじょ)… 花序(花の並び)の軸が長く,軸の上に柄のない花が穂になって並ぶ花の並び方。 

 日本で最も古くから用いられた染料。中国からアイ(タデ科)やリュウキュウアイ(キツネノマゴ科)が伝わる以前から、本種は摺り染め用の染料として用いられた。
 生の葉を布に摺り付けることで染色を行い、それによって出る色は青ではなくて緑である。ヤマアイにはインジゴは含まれないので青は出ない。
 ミヤマハコベか。ナデシコ科ハコベ属の多年草 。
 ジロヤブケマン(白藪華鬘) ケシ科 キケマン属。ムラサキケマンの変種。全体が紫色の花をムラサキケマン、完全な白花をユキヤブケマンという。 

 キケマン(黄華鬘) ケシ科 キケマン属。

 ムラサキケマン(紫華鬘) ケシ科 キケマン属。これが一番多い。
 これもシロヤブケマンか。
 まだきれいなヤブツバキ(藪椿)が多く咲く。ツバキ科ツバキ属 。
 がれ地にタケニグサが芽吹いていた。ケシ科タケニグサ属。有毒。
 藪を歩くと服にかかり腹の立つこの植物。ニガイチゴ(苦苺)が花を付けていた。バラ科キイチゴ属。森林内より攪乱された場所に多い。(4.30判明) 

 渓谷の最上流部には水田跡が4,5段ある。

 峠が見えてきた。
 右:川久保尾根へ。前:大沢への下り。左:釈迦岳からポンポン山へ。こちらの尾根道を上っていく。

 ここもコバノミツバツツジのシーズンだった。
 ツツジ科ツツジ亜科ツツジ属。関東のミツバツツジより葉が小さいらしい。
 ヤブツバキが新鮮だ。
 尾根道も台風の被害が大きかった。
 釈迦岳に到着。631m。きれいなテーブルと椅子が整備されている。

 釈迦岳から一度下る。

 ミヤマシキミ(深山樒)。ミカン科ミヤマシキミ属の常緑低木。学名をSkimmia japonicaという。有毒植物。雌雄異株。日本、台湾に分布。(4.30に判明)

 アセビの新葉が赤くて美しい。
 シキミ(樒、櫁、梻 )。マツブサ科シキミ属。
 シキミがこんなに美しい花を咲かせるとは。
 アセビ(馬酔木)の花。ツツジ科アセビ属の常緑低木。 
 ポンポン山近くはアセビが多かった。シカの食害を受けないのでよく残る。
 左側は杉谷から善峰寺へ続く道(東海自然歩道)。
 ポンポン山の山道も被害が大きかった。しかし昨年来た時には、いち早く通過できるように整備されていた。高槻市や山の所有者の了解を取り、有志の方が作業したそうだ。

 カタクリの群生地。この谷もシカ・イノシシの食害がひどく、保護団体が動いた。

 この上がポンポン山の頂上だ。

 頂上から奈良方向を見る。京都盆地から大阪平野まで180度、下界を見渡すことができる。前の休憩施設も有志の方が作ったそうだ。

 ウワミズザクラ(上溝桜 )の花芽。バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木。 ここでコーヒーを沸かして昼食の準備をしていると、そばにいた方(Aさん)が声をかけてきた。
 クロモジ(黒文字 )の花。初めて見た。クスノキ科の落葉低木。枝は高級楊枝の材料。Aさんは週に一度はこの山に来られるそうだ。
 リョウブ(令法 )の新葉。リョウブ科リョウブ属。山菜として利用される(リョウブ飯など)。Aさんは植物のことをとてもよく知っておられ、色々教えて頂いた。
 カマツカの新葉。バラ科カマツカ属(落葉小高木)。材が硬くて折れにくいので、鎌(かま)の柄に使われたことからの命名。別名ウシコロシ。牛が枝の間に角を入れると抜くことができなくなるくらいこの枝が強靱であることから。 
 ポンポン山頂から少し下った自然林。カタクリ(片栗)の葉を見つけた。ユリ科カタクリ属 。今年はまだ花を咲かせなかったカタクリだろう。
 カタクリの花を見つけた。色褪せかけている。上を見上げた。常緑樹に覆われかけている。このままでは、この群落の存続は厳しいかもしれない。

 Aさんと一緒に頂上を後にした。枯れ木にキツツキがきれいに穴をあけていた。

 オオカメノキ(大亀の木)の花。レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木・小高木。ムシカリとも言う。 他の似た種と比べると葉脈がシワ状に目立ち、形が亀の甲羅に似ている。 花期は4~6月で、白色の小さな両性花のまわりに大きな5枚の花弁を持つ装飾花が縁どる。花序の基部に柄が発達せず、葉腋から直接でるのも特徴 。

 川久保渓谷で見たホソバテンナンショウ(細葉天南星)。サトイモ科テンナンショウ属。いわゆる“マムシ草”。
 川久保渓谷と違い、こちらでは多くのホソバテンナンショウが花をつけていた。
 ミヤコアオイの新葉。(都葵)。ウマノスズクサ科カンアオイ属の常緑多年草。別名チョウジャノカマ。 近畿以西~島根県、四国西部、九州北部に分布。低山地の広葉樹林下に生育。 ギフチョウがこの新葉の裏側に卵を産む。幼虫の食草になる。

 これも独特の模様を持つ植物の新葉。Aさんによるとホトトギスだという。ユリ科ホトトギス属。多年生草本植物。 東アジア(日本、台湾、朝鮮半島)からインドに20種程度が分布。日本で13種が確認され11種は日本固有種。 
 やっとヤマツツジ(山躑躅)を見かけた。ツツジ科ツツジ属。

 高槻の古木「天狗杉」。樹齢300~330年、高さ20m。 台風21号による倒壊は免れたが、枝はかなり折られたのではないか。

この付近は立派なモミ(樅)の木が多い。

 マツ科モミ属の常緑針葉樹。日本に自生するモミ属で最も温暖地に分布。 やはり台風21号の被害を受けていた。

 倒木で日当たりがよくなった部分にスミレが群生していた。
 本山寺に到着。前を行くのがポンポン山山頂で知り合ったAさん。
 本山寺の紹介を高槻市HPから転記する。
 「本山寺は、北山と号して天台宗に属し、毘沙門天を本尊とします。役小角(えんのおづぬ)が開き、宝亀年間(770頃)に開成皇子が創建したといわれます。
 戦国時代には、松永久秀が所領を寄進し、三好長慶や高山飛騨守・右近父子らが寺領の安堵状を出しています。また江戸時代には、高槻城主永井氏や皇室などの崇敬を受け、宝永年間(1705頃)に5代将軍綱吉の生母桂昌院が大改修を加えました。
 境内には開山堂や開成皇子の一石一字経塔があります。聖観音立像、毘沙門天立像などの重要文化財のほか、室町幕府8代将軍足利義政が愛用したという葡萄日月硯などが伝えられています」
 寺に植えられたホンシャクナゲ(本石楠花)。ツツジ科ツツジ属無鱗片シャクナゲ亜属、無鱗片シャクナゲ節。…難しい。

 中部地方以西の本州と四国の山地に分布する。花は赤紫から白まで変化に富む。 葉がつややかで丈夫そうだ。

 こちらは栽培種のシャクナゲ。

 本堂へ続く急な階段。

 階段を降りたところにカリン(花梨)の木があった。シジュウカラが盛んに鳴いたり飛び移ったり。よく見ると口に餌の毛虫をくわえている。しばらくしてこの穴に飛び込んだ。ここで子育てしているようだ。花も撮ったが、小さくてわかりにくいので載せない。
 仏教大師(最澄)の子どもの頃の像。「一隅を照らす者これ国の宝なり」。天台宗を開いた最澄の言葉。 一隅とはみんなが気づいてない片隅のこと。 本当は直視すべきなのに目をそむけている事実。そこに生涯をかける者こそ宝であるという意味か。昨年12月にアフガニスタンで殺害され亡くなった中村哲さんの座右の銘。

 高い石垣がある。そこに色々な植物が育っていた。キランソウ(金瘡小草)。
 同じくスミレ。
 鐘楼。台風21号によって屋根が破損したそうだ。

 シロヤマブキ(白山吹)。バラ科シロヤマブキ属の落葉低木。 日本では本州の中国地方に分布し、石灰岩地に稀に自生する。東アジアでは朝鮮、中国に分布。

 黒い種子が残っていた。Aさんは種子を何度かまいたが芽を出さないと言っておられた。
 
 クサアジサイ(草紫陽花)。アジサイ科クサアジサイ属の多年草。日本固有種。

 フッキソウ(富貴草)。ツゲ科の常緑小低木。 日本(北海道から九州)を含む東アジアに分布。花はもう終わっていた。
 本山寺を後にする。Aさんとは寺の駐車場までご一緒した。そこからしばらく下った所に川久保への別れ道がある。川久保まで1.2km。あと少し。15時のバスに間に合いそうだ。

 「不法投棄するな」の掲示の前にこの不法投棄。酷い。

 台風で折れたと思うユズリハ(楪)。しぶとく新芽をだしている。ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木。古名はユズルハ。 
 川久保の集落が見えてきた。

 川久保は壁に焼杉の板を使っている家が多い。

 カキドオシ(垣通し)。シソ科カキドオシ属。4月始め、高槻の街で見たのに比べ、大分背が高くなってきている。
 ヒメオドリコソウ(姫踊り子草)。シソ科オドリコソウ属。ヨーロッパ原産。日本では明治中期に帰化。主に本州を中心に分布。 

 イタドリ(虎杖)の芽。タデ科ソバカズラ属の多年生植物。北海道以南の日本、台湾、朝鮮半島、中国に分布する東アジア原産種。 北海道(東北)産はとても大きい。
 バス停すぐ横の本山寺の鳥居。手前の花はシャガ。日陰の方が美しく見える。15時37分のバスに乗車することができた。

4月の花(2)

2020-04-25 00:11:42 | 日記
 「4月の花」が長くなってしまった。後半部分を「4月の花」(2)とし、「4月の花」を(1)に変更した。
 シモクレン(紫木蓮)。近所に何か所か植えられている。葉のない枝先に柔らかな毛に被われた蕾がふくらむと「春が近づいたな…」と気づかせてくれる花。
4月下旬に入っても元気よく咲いているシモクレン。
 モクレン目モクレン科モクレン属の落葉低木。原産地は中国。平安中期に移入。蕾を乾燥させて(※)辛夷(しんい)と呼ばれる薬にする。
 公益社団法人 東京生薬協会HPより 「生薬名:シンイ 」
 (※)辛夷(しんい)…タムシバ(田虫葉)、コブシ(辛夷)、モクレン(木蓮)等の花のつぼみを乾燥させたもの。鼻づまり・鼻水・くしゃみに効果。発汗作用、風邪による頭痛の改善。

 タムシバの花。樫田の林道沿いで。

 ハクモクレンの花の内部 「木蓮(モクレン)の花言葉とは?種類や色別の意味をご紹介!」より
 モクレンは原始的なつくりを残す花。化石は1億年以上前のものもある。
 上の写真はハクモクレンの花。花弁が9枚に見えるが、内側の6枚が花弁。外側3枚はガク片。色や形がほとんど同じですべて花弁に見える。
コトバンク「モクレン科とは」より「コブシの花の形態」
 沢山の雄しべ(白)と雌しべ(黄)がらせん状に付く。
 ガク片や花弁、雄しべや雌しべは、葉が進化してできたもの。モクレンでは、それらが長い花軸(かじく)上に下から上へ、らせん状に付いている。これが原始的な花の特徴だと言われる。
 これはシモクレンの花の内部。
 手前の雄しべを外した。「らせん状に並ぶ」ようすがわかる。
 茎に葉が付いた状態を「シュート」と言う。花は、シダ植物の葉にできる胞子が落ちないで葉に付いたままになりその葉が花に変化していったと考えられている。

 図を描いてみた。〈大きな胞子を持つ葉 → 雌しべ〉〈小さな胞子を持つ葉 → 雄しべ〉〈その近くの葉 → 花弁やがく片〉と変化したと考えられている。

 花軸を縦に切断した。分かりにくいので図書の写真を載せる。

 タイサンボク(モクレン科)の花断面 「身近な植物から花の進化を考える」小林正明(東海大学出版会)p63 
〈モクレンの花のつくりが原始的だと言われる理由のまとめ〉
 ①雌しべ、雄しべ、花弁、がく片が花軸に付いているようすがシュート(葉のついた茎)と似ている。(←植物の茎に付く葉は、らせん状に付いていることが多い)。
 ②雌しべ、雄しべの形が葉から変化したことが想像できる形(扁平、細い舌状)で簡単なつくりである。
 ③雌しべ・雄しべの数が多く一定していない。花弁、がく片が区別できない(つまり分化していない)。花が大型である、等。
(前掲図書p63より)

 ハナモモ(花桃)がまだ咲いていた。奥天神辺り。バラ科モモ属。原産地は中国。前から気になっていた「一本の木に二色の花が咲く不思議な梅や桃」について検索してみた。

 てらまち・ねっと 2007.04.13より(以下の内容も)
 梅や花桃では一本の木に白、ピンク、赤など複数の色の花が咲くことがある。源氏と平家の旗の色にちなんで「源平咲き」と言うそうだ。同じ遺伝子であるはずの一本の木になぜ違う色の花が咲くのか。

 「源平咲き分けの梅」院家日記Ⅱ(2017.3.17)より
 ハナモモの花の赤色を作る遺伝子(gene)を発見した研究室(※1)は、その遺伝子を「peace gene 」と名付けた。「Peach(モモ) anthocyanin(赤い色素の名前) coloration(発色) enhance(増やす)gene(遺伝子) 」の頭文字からpeace遺伝子。上手い語呂合わせだ。

 「源平桃とは」BOTANIKA(2019.4.13)より
 「違う色の花が咲く」しくみは、以下のように推測されている。
①花桃や紅梅はpeace遺伝子を持つ。
②同時に、この遺伝子が発現するのを邪魔する遺伝子も持っている。
③邪魔する遺伝子はトランスポゾン(※2)の性質を持つ。
④このトランスポゾン遺伝子がpeace遺伝子に取り付くと、peace遺伝子は赤い色素を作れなくなる。
⑤その結果白っぽい花になる。
(※1)研究者 … 神戸大学大学院農学研究科付属食資源教育研究センター片山研究室 
(※2)トランスポゾン … その生物のゲノム(全遺伝子セット)の上を移動できる遺伝子。
(てらまち・ねっと 2007.04.13 中村さんの報告から抜粋)


 カタバミ(片喰)。道端で。カタバミ科カタバミ属の多年草。
 一つの花は数時間しか咲かない。がく片、花弁が5枚ずつ。雄しべは二重についていて外側・内側5本ずつ(外側が長い)。雌しべの柱頭は5つに分かれ、根元の子房も5つの部屋でできている、など徹底して5に“こだわる”。
 写真の花は葉に紫褐色の斑点があるのでオオキバナカタバミ(大黄花片喰)か。南アフリカ原産。世界各地に帰化植物として定着。

 アブラナ(油菜)。奥天神町で。
 アブラナ科アブラナ属の越年草。 西アジア~北ヨーロッパ原産。中国(漢代)で栽培作物となり多様な野菜を生んだ。
 日本では弥生時代から葉物野菜として利用。江戸時代から油を採取するため栽培され、菜種油(なたねあぶら)は主に灯油として利用された。明治以降はセイヨウアブラナに置き換わった。

 BegeDay「カレーに合う野菜」最終更新:2019.09.19 より
 アブラナ科は白菜、大根、キャベツ、かぶ、小松菜、水菜、野沢菜、チンゲン菜、ブロッコリー、カリフラワー、ルッコラ、ケール…など多くの野菜を産み出した。どの野菜も花を咲かせると「菜の花」になる。
 ブロッコリーの菜の花 Wikipedia「菜の花」より
 ケールの菜の花 Wikipedia「菜の花」より
 ハボタンの菜の花 Wikipedia「菜の花」より
 お正月に見たハボタンに、こんなに菜の花が(中学校の前庭で)。
 アブラナ科は他家授粉で雑種交配しやすく、遺伝的多様性が生まれやすい。それが多様な形や特徴の野菜を産み出したそうだ。

セイヨウカラシナ(カラシナ)。安満新池で。

 ホトケノザ(仏の座)。近所で。
 シソ科オドリコソウ属 。アジア、ヨーロッパ、北アフリカに広く分布 。茎を丸く取り囲む葉が仏像の台座(蓮座)に見えるところから命名。サンガイグサ(三階草)とも呼ばれる。 ミッキーの耳のような花弁(唇弁:しんべん)に注目。濃い赤の点が目玉と口に見えて面白い。


 きれいなシャクナゲ(石楠花)が咲いていた。奥天神町で。
 ツツジ科ツツジ属。 北半球の亜寒帯から熱帯山地まで広い範囲に分布。特にヒマラヤ周辺に非常に多くの種が分布する。
 室生寺の五重塔とシャクナゲ 2011年5月
 〈ツツジ・サツキ・シャクナゲの見分け方…すべてツツジ科ツツジ属〉

 ヒラドツツジ 近くの道路で
 ツツジ…開花期3~5月。葉の表面に毛が密生し照りがない。小枝や葉が粘つく。3輪の花が集まって咲くことが多い。

 サツキ…開花期5~7月。葉が小さく表面につやがある。関東以西と九州南部に分布。渓流沿いの岩の上に自生する。根が水に強く、加湿を嫌うツツジと対照的。 

 ハクサンシャクナゲ 仙丈ケ岳2019年7月。
 シャクナゲ…開花期4~6月。葉が大きい。葉の表面に光沢があり、裏に毛が密生。花は5~10輪が集まって咲く。

 ツバキ。古曽部町第3公園で。品種名はオトメツバキ(乙女椿)か。
 「4月の花」でふれたヤブツバキの学名はCamellia japonica 。二名法を創始したリンネが、東南アジアの植物を紹介した17世紀のドイツ人宣教師カメルを記念して付けた。ジャポニカはもちろん日本の、と言う意味。
 4月下旬。ある家の庭にこんなツバキが咲いていた。
 ツバキは中国原産で古くから日本に伝わった。「古事記」や「万葉集」にも登場する。ツバキは自家不和合性(自分の花粉では受精できない)。色々な遺伝子が合わさって変化が表れやすく、品種改良しやすかった。
 変わった品種のツバキたち。以下5枚は大阪自然史博物館の植物園で。2014年。
 雄しべの先に花弁のようなものが付いている。
 きれいな八重。八重咲きの内側の花弁は、雄しべ・雌しべが花弁に変化したもの。




 ハルサザンカ HP「みんなの花図鑑「」より。
 ツバキは近縁種とも雑種ができやすい。ツバキとサザンカ(山茶花)は交配してもふつうは種子はできないが、まれにできることがある。そこからうまれたのがハルサザンカで現在60以上の品種があるそうだ。【以上「花・ふしぎ発見」鈴木正彦(講談社)より】

 ハナカイドウ(花海棠)。奥天神で。
 姿と名前が一致していなかった花だ。今回やっと一致。バラ科リンゴ属木。別名カイドウ(海棠)。 海棠の「棠」は梨を意味し「海を渡ってきた梨」という意味。
 学名(Malus halliana)はギリシャ語のリンゴ(Malon)が転じて(Malus)となった。 
 唐の玄宗皇帝が酔って眠る楊貴妃をハナカイドウにたとえたと言われる。
 多花性を利用して近縁のリンゴの受粉樹(※)として利用されることがある。
(※)受粉樹…同一品種では受粉・受精できないものを受粉させるために、近くに植える別品種の樹のこと。 リンゴは自家受粉では結実しない。なるべく遺伝的に遠い品種の花で受粉させる。

 クサイチゴ(草苺)。近所で。バラ科キイチゴ属の落葉小低木 。

 これが果実。美味しそう。(Wikipedia「クサイチゴ」ページより)

 もうすぐ咲きそうなシラン(紫蘭)。近所で。
 ラン科シラン属の多年生植物 。 日本、台湾、中国原産。野生のものは準絶滅危惧種。

 数日後、近くの公民館で咲いていたシラン。葉は愛想ないが、花はまさに紫蘭だ。

4月の花(1)

2020-04-21 21:16:49 | 日記
 新型コロナウイルスが蔓延している。繁華街や遠方への外出は控えている。そのため久方ぶりに連れ合いと近所を散歩する機会を持っている。

 他の家の庭をながめたり街路や公園をぶらぶらと歩く。多くの植物が一斉に、色も形も様々な花を咲かせている。「何て言ったかなぁ…この花」と、ついカメラを向ける。

 撮りたまった写真。せっかくなので名前を知りたい。覚えたい。そう思いネットの画像と絵合わせして調べた。
(Wikipedia、その他のHPやブログを参考にさせて頂きました。ありがとうございます。中には間違いもあるはず。お許し下さい)
 ヤブツバキ(藪椿)。近所では花の盛りは過ぎてきれいな花は残り少ない。まだ初々しさを感じさせる一輪。島本町の若山神社で。お弁当を持って訪ねた時の一枚。ツバキ科ツバキ属(Camellia)。濃緑のつややかな葉に子ども心になぜか心引かれた。
 シダレザクラ(ヤエベニシダレ:八重紅枝垂か)。同じく若山神社で。
 子ども連れの家族。寒い日だったが(から?)子どもは走り回っていた。
 神社からの眺め。三川(木津川・宇治川・桂川)合流地帯がよく見える。
 夕方近くのお寺に散歩。この地に越して35年。田畑はほとんど住宅地に。残り少ない田んぼの片側に咲いていた。

 寺の梵鐘。

趣味の園芸(NHK出版)「ハスの基本情報」よりハスの花
 ゲンゲ(紫雲英)。又はレンゲソウ(蓮華草)。レンゲ(蓮華)とはハスのこと。花をミニチュアのハスに見立てている。マメ科ゲンゲ属の越年草。原産地は中国。
  化学肥料が使われる前は緑肥(りょくひ)や牛の飼料用に沢山育てられていた。子どもの頃、田舎の田んぼは広いレンゲ畑になった。ミツバチが飛び交う中、自分たちも蜜を吸って遊んだ。
 レンギョウ(連翹)。黄色の花は春の到来を告げる色。夕暮れ時でややオレンジがかって見えた。モクセイ科レンギョウ属。原産地は中国。英名はゴールデン・ベル(golden bells)…なるほど。 しかしgolden bellsと言えそうな花は沢山有りそう。『出雲国風土記』に記載されているらしい。外来種の古株。
 「蕾がもう膨らんでる!」 驚いてシャッターを切った。フジ(藤)の花。マメ科フジ属。日本固有種! 山藤の淡い藤色と甘い匂いが大好き。
 夕日に染まる桜(ソメイヨシノ:染井吉野)。高槻市立公園墓地。いつもは花見客でいっぱいになる場所だが…。
 こちらは昼間の公園墓地。桜は青空によく映える。しかし花の下に客の姿はなかった。
 日本の野生の桜はヤマザクラなど9種を基本にし、変・品種を合わせ100種以上。園芸品種は200~300種にもなるという。
沖縄県名護市名護城公園のカンヒザクラ(寒緋桜)2018年1月
 有名な話だが、ソメイヨシノはエドヒガン(江戸彼岸)とオオシマザクラ(大島桜)の交雑種。すべてのソメイヨシノは、たった1本の木から接ぎ木などで殖やされたクローン(=全く同じ遺伝子を持つ個体)だ。

 気温・日照などが同じ条件になれば一斉に開花する。だから「桜前線」として日本各地の春の進み具合を知らせることができる。
 江戸郊外の染井村(現・豊島区駒込)で誕生。植木屋が「桜の名所、奈良県吉野山から採ってきた吉野桜」と言って売り出した。有名になってから本当の吉野山の桜と区別するために「染井吉野」と名付けられたという。

 古曽部第3公園の桜 
 前から不思議だった。ソメイヨシノはすべてクローン。なのに黒っぽいサクランボができているのをよく見かける。クローン同士では受粉や受精がうまくできないだろうに。

 樫田のヤマザクラ
 どうやらまわりの野生種(ヤマザクラなど)やソメイヨシノ以外の園芸品種の花粉がついて結実するらしい。 小さい時この黒いサクランボを試しに食べてみた。美味くなかった。中の種をまいたが、芽は出なかった。
 ボケ(木瓜)。 能因法師塚の近く。
 子どもを連れてよく樫田(高槻市の北部)に遊びに行った。カワムツ釣りをした春の小川の土手。クサボケが赤い花を付けていた。「植えられた?」と思うくらいに目立つ色。バラ科ボケ属の落葉低木。原産地は中国。平安時代、観賞用に移入されたそうだ。 
 ネットの画像で見つからない。何の花だろう?

 後日、写真を拡大。葉の裏面の粒々に気づく。葉はペラペラで乾いた感じ。見覚えある葉だ。もしかしてグミ?… 検索すると、この花が出てきた。
 グミ(茱萸、胡頽子…読めない)。グミ科グミ属の植物の総称。ガクは黄色で筒状、先が4裂。雄しべが4本。花弁はない! つまり写真の“花”に見えるのはガク片。 解決してスッキリ。
 これは「太閤道」で見たグミの果実(ナワシログミと思う)。
 グミは根に放線菌が共生し窒素固定を行う(つまり窒素肥料を自前で用意できる!)。だからやせた土地にも育つ。 主にユーラシアに分布。日本にはナツグミ、アキグミ、ナワシログミなど十数種がある。撮影した花はナツグミの花のようだ。

 クリスマスローズ。伊勢寺を訪ねた日に近所の家の前で。
 Wikipedia「大林宣彦」より 文化功労者顕彰に際して公表された肖像写真 
 4月10日、大林宣彦監督が亡くなった。大林監督の尾道の映画(「ふたり」と「転校生」)が大好きで、いつかは行きたいと思っていた。6年前の春に四国を訪ねた帰り道、しまなみ海道を通って初めて尾道に立ち寄った。
以下7枚は2014年3月尾道で撮影

「転校生」で主人公の男女が入れ替わった階段
 どこを歩いても懐かしい坂道だらけの街。映画のシーンに出てくる場所を探しながら散歩していると、ある家の前で見たことのない花を見つけた。
 尾道で見たクリスマスローズの花
 それがこの花。クリスマスローズだった。連れ合いは知っていた。「なんでクリスマスなんだ?」。不可解な気持ちで眺めたことを覚えている。

 千光寺に登るロープウェイ
 キンポウゲ科クリスマスローズ属。原産地はヨーロッパ~トルコ・シリア・ジョージア。元々ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger )と呼ばれる。
 クリスマスローズの原種(Helleborus niger )。『趣味の園芸』(NHK出版)「ヘレボルス・ニゲルの基本情報」より
 ヘレボルスはギリシア語のへレイン(死に至らしめる)とボラ(食べ物)から。ニゲルは(黒い)。根が黒いため。恐ろしい名前が付けられたのは、根にヘレブリンという心臓毒や皮膚や粘膜に炎症を起こすプロトアネモニンという有毒成分が含まれるため。(「毒草を食べてみた」植松 黎〈文春新書〉参照)。
 花に見える部分はすべてガク片。がく片なので“花”が長持ちする。本来の花弁は蜜腺として残る。原種のヘレボルス・ニゲルは12~1月に開花するが、多くの園芸品種の開花は春である。
向島からのフェリー。映画によく出てくる。
 亡くなった大林監督のご冥福をお祈りしたい。