川越だより

妻と二人あちこちに出かけであった自然や人々のこと。日々の生活の中で嬉しかったこと・感じたこと。

私が聞いた北朝鮮の暮らし①《トンヘ(東海)の水はなぜきれい》 鈴木倫子

2011-01-14 09:25:55 | 韓国・北朝鮮

●はじめに

2年半前くらいから、北朝鮮から逃れてきた人たちとの出会いが始まりました。みんな、何度か会っているうちに少しずつあの国で暮らしていたころの

話をしてくれるようになります。一人ひとり、私なんかには想像もつかないような歴史を背負っています。せっかく語ってくれた思いや体験を忘れてしま

わないように、書きとどめておくことを思い立ちました。話してくれた人がそのために困ったことにならないよう、細心の注意をはらいながら綴っていきた

いと思います。

《トンヘ(東海)の水はなぜきれい》

「朝鮮でね、ひとつだけ良いことがあるの。それは海がとってもきれいなこと

。10メートルも20メートルも下の海の底まで、海の底の砂粒まではっきり見える

んだよ。泳ぎながら魚を捕まえることができるんだ。あ、ぼくはまだできない。

魚を捕まえるのはお父さんといとこの兄さん。お母さんが浜辺でご飯を炊いてく

れて、捕まえた魚を焼いてみんなで食べるんだよ。」

櫂くんが、夏休みの思い出を話してくれた。朝鮮の東海岸。向こうで言うトン

ヘ(東海)、日本海の対岸だ。おばあちゃんの話だと、国家の要人やVIP専用

のリゾートだけでなく、一般人が使える広い海水浴場もあって、白い砂浜の海が、そ

れはそれはきれいらしい。まあ一般人と言ったって、国民の移動や旅行を厳しく

制限しているあの国のことだから、国中の誰もが自由に海水浴できるってものじ

ゃないんだろう。でも、日本の「海の日」みたいなのが向こうにもあってその日

は、櫂くんに言わせると「みんな海水浴に行かなくちゃいけない日」なんだそう

だ。

トンヘ(東海)の透明度は半端じゃなく高いのだが、そのわけは簡単だ。汚そ

うにも汚染の原因を作る工場そのものがないから。朝鮮の東海岸と言えば、あた

しのような年寄りが思い出すのは興南の朝鮮チッソ。そう、水俣病で悪名高い日

本チッソの野口財閥が朝鮮に造った化学肥料工場だ。おばあちゃんの話だと、な

んとあれがいまだにそのまま使われているんだそうだ。というか、朝鮮の化学工場

というのは、あとにも先のもそれしかないんだそうだ。

でも朝鮮の化学工業の実状はとりあえず別のお話。おばあちゃんの話は、

「ですからね、倫子センセ。わたくしが元気なうちにあの国がどうにかなって

くれたら、と思うんですよ。そこらじゅうから資金をかき集めて東海岸に一大リ

ゾート地を造りたい。近代工業が全く駄目なその分、朝鮮は風光明媚な観光資源

がいっぱいあるんです。朝鮮を観光立国させるというのが、わたくしの夢なんで

す。」



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