徒然なるままに・・・

映画よりJAZZにシフトチェンジ中・・・。

【BOOK】 クライマーズ・ハイ

2006-10-14 | 【BOOK】
横山秀夫・著 (文春文庫)

2003年に発表された小説なのですが、
兎に角、熱い男のドラマでありました。

舞台は、日航機墜落事故が発生した群馬県の新聞社。
事故報道の全権を任された1人の記者が、
社内の軋轢、部下からの厳しい追及、
そして、不仲な息子への気遣い…。
墜落事故が起きた当日、
社内の親友と山登りに行く予定だったが、友は病に倒れた。
「下りるために登るんさ」。友の残したメッセージ。
そんな様々な思いが巡る物語。

全権を任された男が、社内の軋轢に破れ、
必死に書いた部下の記事をふいにしてしまう。
また、事故原因の大スクープを裏が取れないため掲載を見送り、
他者にそのスクープを取られてしまう…。
己の信念だけではままならない、組織の中間管理職の痛みが伝わってきます。
主人公は、上層部に喧嘩腰で戦いを挑んでいくのですが、
保守的で保身しか考えぬ連中に有効ではないと気づく姿は辛い。
辛い、痛い、蔑まれる存在が、ラストの一言で救われる。
その文章を思い出すだけでも涙が流れます…。

もう1つ、この小説の凄いのは、
日航機事故をテーマとしながら、事故現場のそれを描いていません。
記者の現場雑感、共同通信の電信だけしか直接描写はない。
それだけでも、事故の陰惨さが伝わるのは、
新聞社の記者たちの尋常でない姿も伝わってくるからだと思う。

この小説は、NHKでドラマ化されてます。
昨年末放映され、先日も再放送されました。
HDDに録画してあるので、観るのが楽しみであります。

ちなみに、次に読もうとしているのは、
豊島ミホ著 『檸檬のころ』(幻燈社)


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