最初から引き込まれます。
中学駅伝の話です。
前年まで陸上部を率いていた先生が異動し、新しく担当となったのは、美術教師の上原。
上原は、陸上競技は何もわからない。
3年で陸上部の長距離を走れるのは、部長の桝井と設楽しかいない。
2年の俊介も走れる。
でも、駅伝は6区ある。あと3人、集めなければ参加すらできない。
そこで桝井は考える。勝つためには、誰が必要なのか。
そして大田を誘う。彼は不良で、授業はふけてテニスコートのベンチで煙草をぷかぷか。
次は吹奏楽部の渡部。彼はサックスばかり吹いてかっこつけている。
最後はジロー。彼は困ったときのジロー。断らないことを楽しめる。
これは全力を尽くして走り、たすきをつなぐ話なのですが、全力を尽くす理由が、もちろんそれぞれ違う。
0から始まり、1区から6区まで。設楽、大田、ジロー、渡部、俊介、桝井。彼らを見つめ、励ます上原。
人物造形+駅伝だけで、基本この小説はできている。
それでもぐいぐい読ませる。人の本質に触れる。
6者6様の走る姿が、くっきりと浮かぶ。
上原の抜けた感じもすごくいい。
店で売れ続けているので手を伸ばしてみたのですが、やはりという感じ。
作品に力があるから売れるし、また売れてほしい。
愛される作品とはこのことだと思う。
読めばきっと走りたくなる。
あなたも、きっと、走りたくなーる。
瀬尾まいこ 著/新潮文庫/2015
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