新書らしい、なかなか衝撃的なタイトルですが、読んで納得しました。
「いじめ」は、集団を維持するために、ヒトに組み込まれた必要な機能であること。
集団の生存にとって危険な分子を取り出す必要がある。向社会性(集団の密度)が高ければ高いほど。
種の存続にとって必要な暴力。だから、いじめる側には、脳内でドーパミンという快楽物質さえ放出される。
正義感を伴って。自己効力感に酔いしれて。理性をはるかに上回る強さで。
日本に心配性のヒトが多いのがいじめの母体にもなっていた。
心配性であればこそ、自然災害が多発する日本で生き延びるのに有利だった。
そんなヒトたちにはセロトニンが少ない。私もそう。だから走ってセロトニンを切らさないようにしている。
セロトニンの欠乏が続けば鬱病になる。死にたくなる。
役に立たない私なんか死んだ方が種の生存にとって役に立つ、という思考回路もまた、脳内に刻まれたヒトの種の保存のための装置だったのかもしれない。
小学校高学年から中学生にかけて、いじめが多発するのは脳の発達の差異が関わっていた。
「いじめ」が発動してしまうと止められない。止める働きをする前頭葉の発達は、30歳までかかるという。
なるほど。ならばどうすればいいのか?
様々な対策も記されています。
自分の弱さをあえてさらし、あなたたちにとって私は脅威ではないと伝える(アンダードック効果)。
第三者の目を入れ、死角をなくす。防犯カメラや警備員の導入。また通報制度の充実。
本書のような科学的根拠の普及。「道徳の教科書」よりよっぽど説得力がある。
あらゆる心理実験は、どんなヒトも、条件がそろえば極悪非道な悪魔になりうることを示している。
科学的根拠を基に、いじめの発生する状態を作らないこと。
とはいっても、中学生の一年間は長い。
年を重ねると光陰矢の如しですが、未発達なヒトたちにとっては分母が少ないから、一年は永遠にも感じる。
耐えられないで自死という悲劇は、痛いほどわかる。
痛すぎるから、もう起きないでほしい。
人間関係の密度が高すぎる場所から離れ、ほっとする時間や関係があることもとても大切です。
教室が世界のすべてじゃない。そこが100%じゃない。
本屋大賞を受けた辻村深月さんも、本に何度も救われたとおっしゃっています。
あふれる思い。私も、作品に込めます。
中野信子著/小学館新書/2017
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