2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

【雑感-2】開かれた政府

2012-02-05 21:55:48 | 日記
 震災復興、経済の低迷、国家財政の危機といった重大な問題を抱えている今日、政治がまず行わなければならないことは国家ビジョンの再構築にあると思います。

 大阪維新の会が大勝した原因も、大阪都構想に象徴されるビジョンを提示したことが多くの国民の支持を集めたと言っても過言ではないでしょう。
 もう少し正確に言えば、(こう書くと支持者に怒られそうですが)大阪都構想自体が支持を集めたというよりは、明確な政治目標を掲げたことに支持が集まったというべきなのかもしれません。

 バブル崩壊後の長く続く不況下で、「これではいけない」「何かを変えなければならない」と考えている国民は多いと思います。そうした閉塞感が横溢した時期に、メッセージ性の強い公約は多くの支持を集める傾向にあります。小泉政権下での郵政解散における自民党の大勝も、政権交代を掲げた鳩山民主党が2009年の衆議院議員選挙で改選前を大幅に上回る308議席を獲得したのも、同様の国民意識が大きく作用しているように思います。

 戦後を振り返ると、右肩上がりの経済成長期が長く続いた後のバブル景気に浮かれていた時代はもちろんのこと、バブル崩壊後リーマンショックが起こるまでの6年近い時期(俗に「いざなみ景気」と呼ばれていたようですが)も、程度の差こそあれ国民の多くは「安定」と「現状維持」を望んでいたと考えられます。
 つまり、戦後60年以上の長い期間「安定」や「現状維持」を望んでいた民意が、ここ数年で「変化」の必要性を身近に感じ出したと言えるようです。そうして点では、郵政解散で自民党が圧勝したときの有権者の民意と、政権交代を掲げた民主党に期待した民意では、かなり大きな隔たり、というより変化への切迫感が異なっているように思います。
 大阪維新の会の勝利も、そうした民意の表れと考えるのが自然のように感じます。

 変化を求める民意のもとでは、往々にして政治がポピュリズム(大衆迎合)に走る傾向があります。つまり、大衆受けする政策を掲げることで、変化に敏感になっている国民を引き付けるというものです。
 しかし、実際にはそう簡単に大衆受けする政策が実現できるほど社会や政治は単純ではないため、真の政治的解決を先送りしつつ政治的破たんを回避するか、最も危険な場合は自暴自棄のように独裁政治に陥り、その結果悲惨な末路をたどった国もあります。
 歴史を振り返ると、ポピュリズムの台頭は危機の時代に多く見られることが分かります。「変化」に対する国民の期待が大きい時代にこそ、ポピュリズム台頭の芽が多く存在すると言っても過言ではないと思います。

 さて、「変化」を次の発展に向けて最適な方向に導くためには、何が最も重要かということを少し考えてみたいと思います。

 堺屋太一氏が著書の中で書いておられるように、日本は第三の敗戦を迎えているのかもしれません。敗戦から立ち直って、この国を新たな発展に導くためには、政治的なリーダーシップとそれを支える明確なビジョンは必要不可欠であると思います。
 問題は、そうしたリーダーシップやビジョンが正しい方向を向いたものであるのか、社会の抱える問題や構造を踏まえて、真に適正な方向に導いていける政策なのかが問われるということです。
 こうした政策を判断するのは国民ですので、国民が政策や政治に対して正しい判断をしない限り、国の最適なかじ取りは困難と言わざるを得ません。

 そこで重要なのは、国民が正しい判断ができるだけの情報をオープンにすることだと思います。
リーマンショック後の危機的状況に就任したオバマ大統領は、就任直後にオープンガバメント(透明で開かれた政府)に向けた3つの基本原則(透明性、市民参加、政府内および官民の連携)を謳った大統領メモを公表しましたが、これは極めて大きな意味を持つ政策だと思います。
 すなわち、財政や経済・社会状況など、国民に密接にかかわる政治的課題や政府が保有する情報を積極的に公開することで、国民の正しい判断を求めるという考え方です。

 オープンガバメントの効果は、大きく次の2つが考えられます。

1)適正な市民参加(デモクラシー)実現のための手段
 ここには2つの目的があります。
 まず、政府の抱えている課題について市民が公正な判断ができるだけの情報を提供することで市民の政治への参加を促すということです。また、市民の声を直接聞くことで市民参加型の政治を実現するという目的もあります。

2)政府の情報資産の民間活用
 政府が持っている膨大な情報資産を公開することで、実際のビジネスに役立てることで産業を育成しようという取り組みです。
 英国では、情報資産の再利用に対するアイディア・コンテストなども実施しています。

 オープンガバメントにはこのような目的がありますが、ここでは1)の適正な市民参加の実現について注目してみたいと思います。なぜなら、国民が適正な政治的判断を下す上での情報が、現時点ではかなり不足していると言わざるを得ないからです。

 ここ最近でも、震災後の原発問題での政府報道には大きな批判が起こっています。
 また、消費税率の引き上げと対のように言われている社会保障と年金の一体改革についても、今後の社会保障がどのようになるのか、その将来像については依然充分に説明されていません。
 TPP参加問題についても、参加への賛否の声ばかりが聞こえる中で、肝心の政府の国家戦略に対する充分な説明がなされているとはとても言い難い状況です。

 どんな判断を下す際にも同じですが、特に政治の世界では判断の過程での現状分析と社会への影響、さらに将来どのように国家を導くのかといったビジョンが不可欠だと思います。こうしたプロセスを国民に明確に示さないまま結論を急ぐ姿勢は、前に述べた悪しきポピュリズム、つまり独裁政治の道に進みつつあると言ってもおかしくないと思います。
 独裁政治は、必ずしもクーデターや強力なリーダーによっておこされるものではありません。それは戦争突入に向かったかつての日本が、政党政治の行き詰まりによって破滅への道を歩んだことを考えても明確です。
 今必要なことは政治プロセスの透明化であり、国民に適正な判断材料を与えることだと思います。

 最後にもう一つだけ触れておきたいことがあります。それは、メディアが大きく変貌しているということです。

 かつて「新聞は信用できないので、テレビによるインタビューしか応じない」と言って退任した総理がいました。あの時代から40年以上も経つ今日、果たしてテレビは真実を伝える有効なメディアなのでしょうか?

 「アラブの春」と言われる政治の変革をもたらしたのは、FaceBookなどのコミュニケーションツールでした。
 先日、日本をよく知る韓国の友人と話をした時に言われたのですが、日本人ほどテレビをよく見る国民はいないそうです。
 韓国では、テレビの視聴率をネット需要が大きく凌駕しているとのことです。それは、ブログやTwitterと言ったネットメディアのほうが真実を伝えるから、といった理由からでした。
 韓国では、政治家の意見はブログで随時流されているようです。そうした書き込みを毎日のように見ることで、政治家の人の人となりや政治姿勢を確認することができると言います。
 日本ではテレビ討論会が盛んに開かれていますが、テレビは放映時間という制約が付きまといます。そのため、一応の結論に導くためのシナリオや演出などを加える必要があります。国会中継なども、質問主意書を予め配布した上で行われるいわば儀式の中継でしかありません。それに比べブログやTwitterでは、政治家の生の声が聴けるチャンスでもあるわけです。
 今の政治家の多くはブログなどを解説していますが、拝見している範囲では、テレビなどに比べて肩の力が抜けている印象を持ちます。むしろ逆に、ネットによる真剣な意見公開を望みたいものです。

 「言葉は政治家の命である」と昔から言われています。情報発信力を強め、政治家の人となりや政治姿勢、政策などを知ってもらうには、国民への生の情報発信は欠かせないものだと思います。
 私だけなのかもしれませんが、今の内閣の閣僚がどのようなお考えを持たれる方々なのか全く分かっておりません。

***

追伸)明日から、民主主義や社会保障の宗祖ともいうべき北欧を巡ってきます。
帰国後、彼の地で見聞きしたことなど紹介できればと考えております。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まさやん)
2012-02-06 20:11:48
早速のコメント返事ありがとうございました。

私も同感です。
大阪維新の会、橋下市長が注目されるのも明確な政治目標があるからです。
今までの政治家達は「無駄削減!」と選挙で訴え当選しても本当に無駄削減をしているのか闇の中。
橋下市長は早速自分の退職金を大幅に削減する姿勢を見せました。
私も大阪維新の会は注目してますが、まだ様子見です。
報道を見ていると人気にあやかってすり寄っている政治家の多いこと。
自己保身のように見えてなりません。
しばらく橋下市長の様子を見てみようと思ってます。
この大変な時代、強力なリーダーシップが必要だと思います。
いい意味での独裁者。
国会を見ていてもあれだけ沢山の党・政治家がいれば意見は千差万別。
意見・方向性を統一するのは容易ではありません。
歴史を見ていると1929?年の世界恐慌のあとヒットラー政権が誕生し世界大戦となっていきました。
私が不安に思っている1つなのですが、あなた様の「国民が正しい判断が出来るだけの情報をオープン・・・」
本当にその通りだと思います。
マスコミも揚げ足取りのような報道だけでなく中身のある内容を国民に伝えるのが報道の義務だと思います。

あなた様のブログ記事、とてもわかりやすい内容、そして専門的だけどわかりやすい解説。
私のブログ記事が恥ずかしくなります。
こんなど素人が政治のことを書いていたかと思うと身の程知らずでした。

こんな素人ですがこれからもお邪魔させてもらいます。
長々と失礼しました。
返信する

コメントを投稿