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「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」を読んだ所感。

2019年01月02日 23時45分07秒 | 読書


それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子 著

定価(750円+税)
新潮文庫

2016年7月1日発売


職場の社長に「最近おもしろかった本」として紹介をいただきました。
東京大学文学部で教授をされている加藤教授が、
中高生向きにと書かれた本ですが・・・とてもそうは思えない。
中高生への実際の授業をまとめた本ですが、
受けている学生もかなりレベルの高い学校に行っている子ども達だろうし、
実際500ページの文庫に20時間も読むのに時間がかかってしまいました。

主には日清戦争から太平洋戦争までの成り立ちを史料や各国が出しているデータなどから抽出し、
多角的に(といっても日本が中心ですが)戦争までの流れを紹介しています。

本題に入るまでの冒頭もおもしろく、「歴史は覚える教科ではない、歴史は科学だ」といった考えが出てくる。
これは、歴史とは過去に起こったことを結果として受け取るものであって、暗記ものだという風潮があるが、
実際には、その歴史1つ1つの類似点や関連付けに気づき、自分達のこれからの人生、
または国のあり方を想像できる人材を育てることが、歴史を学ぶということなのだという。
また、歴史は研究によって変わりえるという意味でも普遍的なものであったり、受動的なものではなく、
なぜこのような事象が起こったのかという分析、または見解を養い、
多角的に物事に向き合う力を養うことにもつながるのだろうね。

この本では大きくわけて、
・日清戦争
・日露戦争
・第一次世界大戦
・満州事変
・日中戦争
・太平洋戦争

について広くも深く、紹介している。

年表的に流れを見るという縦の流れよりは、
横の流れ、このとき、この国はこんな風に考えていた、また一方でこの国は・・・という感じ。
そう、つまり、解釈を学ぶ本なのです。学ぶというより、
選択肢を与えられている本です。さて、あなたはどう思いますか?と。
その質問レベルがかなり高いので躊躇もするのですが。

僕はこの本を通して大きく2つのことを学びました。

1つ目は戦争(合わせて歴史)は偏った価値観や感情論で測るのではなく、
エビデンスと多角的な視野に立って学び、そこから自分観を見出し、
様々な選択の礎にしなくてはならないということ。

2つ目は政治や行政を司るものは過去(歴史及びリベラルアーツ)を知ることはもちろん、
学び続ければならないこと(むしろそうでなければ、その資格はないといってもいい)。


行政に関わる仕事をしている人には特にオススメの一冊かと思いました。


最後に、勝田の心に残ったフレーズをいくつか紹介しておきます。

・政治システムの機能不全の二つ目は、小選挙区制下においては、
 投票に熱意を持ち、かつ人口的な集団として多数を占める世代の意見が
 突出して尊重されうるとの点にあります。(中略)
 これからの日本の政治は若年層贔屓と批判されるくらいでちょうどよいと腹をくくり、
 若い人々に光をあててゆく覚悟がなければ公正には機能しないのではないかと
 思われるのです。

・戦争は国家と国家の関係において、主権や社会契約に対する攻撃、
 つまり、敵対する国家の憲法に対する攻撃というかたちをとるのだと。

・人々は重要な決定をしなければならないとき、自らが知っている範囲の過去の出来事を、
 自らが解釈した範囲で、「この事件、あの事件、その事件・・・」と参照し、
 関連付け、頭のなかでものすごいスピードで、どれが参照にあたいするのか、
 どれが今の問題と「一致」しているか、それを無意識に見つけだす作業をやっているものです。(中略)
 これを逆にいえば、重要な決定を下す際に、結果的に正しい決定を下せる可能性が高い人というのは、
 広い範囲の過去の出来事が、真実に近い解釈に関連付けられて、より多く頭に入っている人、
 ということになります。

・日本のすべての人々は、徴兵や税金の問題では、苦情を言う頑固親父が少なくない。
 しかし外国との関係については関心が全くなく、外交の話などすればすぐ寝てしまうのではないか。
 なんと無気力な奴隷根性を持った人々よ、このようなだらしのない人々では、
 日本がたとえロシアの属国とされてしまっても、おとなしくいうことを聞くに違いない。

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