酔いどれ烏の夢物語

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酔いどれ烏の夢物語 イルミネーション

2022-12-14 18:26:23 | ポエム

 

                                

                     イルミネーション

クリスマスが近づくたび あの日の事を思い出す

煌びやかなイルミネーション 楽しそうに歩く恋人たち

 俺さ、今月の半ばに NY に行って来るわ

 えっ⁈ じゃあクリスマスは?一緒に過ごすって言ったのに

 大丈夫! 写真撮ったらすぐに帰るから

彼はカメラマンであり、僕の通う大学の講師でもあった

学部の違う僕とはまるで接点はなかったのだが、

時おり学食や廊下ですれ違うたび、お互いを意識していた

 それじゃあイブの夜にここで待ち合わせだな

 何時?夜6時くらいでいいかな?

そう約束して僕らは別れた それが最後になるとも知らず

 

約束のイブの夜 僕はお揃いの指輪を鞄に入れて家を出た

大学を卒業したら 一緒に暮らす筈だった

けれど、いくら待っても彼は来なかった 連絡も取れず

12時を回った頃、僕は先生の家を訪ねたが帰宅した様子もない

 どうして来てくれないの? 何かあったの?

 せめて連絡くらいくれてもいいのに・・・

帰り道 不安と寂しさに思わず涙がこぼれた

家に戻ると僕は泣いた 一晩中 泣き疲れて眠るまで

翌朝になっても連絡は無く スマホには友達からの飲み会の誘いだけ

本当にNYに行ったのかな? もしかして別れる口実だったのかな?

いろんな気持ちがぐるぐると頭の中で巡って、僕は気持ち悪くなった

 

その二日後、友達からラインが来た

   聞いたか? 上条先生のこと

   何のこと?

   先生亡くなったって、空港に向かう途中乗ってたタクシーが事故にあって

   多分、即死だろうって ニュースでもやってたよ お前先生と仲よかっただろう

   ...そうなんだ・・・。

振るえる指でそれだけ返信すると 何も考えられなくなった

ベットに倒れこんで ただ茫然と天井を見ていた

 先生が死んだ⁈ 何でどうして?

それからの数日は自分が何をしていたのかよく覚えていない

只々、先生と過ごした時間を思い出しては泣いていた

 

クリスマスが近づき、街にイルミネーションが点灯する

僕が大学を卒業し、社会人になった今もそれは変わらず

煌びやかで美しく 恋人たちが寄り添って歩く

ねえ先生、教えてよ どんな写真を撮りに行ったの?

ねえ先生、教えてよ どうして僕を置いて先に逝ったの?

いったい、いつになったら僕のこの胸の痛みは消えるの? 

先生の、髪を掻きあげる癖も 熱いコーヒーが飲めないことも 

カメラのファインダーを覗く横顔も

すぐに僕の髪をクシャクシャに撫でまわす大きな手も

忘れてないよ 全部身体が覚えてる

ねえ先生、逢いたいよ もう一度

 

 

 

 



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