そのさきへ -Deep Sky Blue version-

このブログは引っ越しています

[MLB短評]しゃべれども しゃべれども

2009-02-20 00:49:10 | MLB
注射3年間…A・ロッド“失われた信頼”(スポーツニッポン) - goo ニュース
Alex Rodriguez says relative injected him with banned drug(ESPN)
A-Rod leaves questions unanswered(MLB.com)
Maybe Mark McGwire was the only player who got it after all(SI.com)


2月1日、スーパーボウルが行われたタンパには全米中からの熱視線が注がれました。そのとき最も輝いた
MVPのサントニオ・ホームズは、貧しかった子供の頃に薬物を売っていたことを自ら話しました。そうした
境遇から自分はここまで立ち直ったのだと証明したかったのです。

それから20日も経過していない今週の火曜日、タンパにはまた全米中から熱視線、というより疑いの視線が
注がれました。今回もまた薬物が関係した事件です。しかし正直なところ、ホームズよりも比べ物にならない
スーパースターがその場でしゃべるとなれば、数多くのメディアがスーパーボウルのスタジアムから程近い
ヤンキーズのキャンプ地へ来てもおかしくありません。

メジャーリーグを代表するスーパースターから、メジャーリーグを代表する負の遺産になりつつある、
アレックス・ロドリゲスが、メディアを前にして増強剤の使用について改めて話す機会を設けました。
恐らくロドリゲスあるはヤンキーズは「危機管理スペシャリスト」を雇い、この一件をどう乗り越えるべきか、
いろいろと話し合ったのでしょう。もはや殿堂入りも怪しくなったロドリゲスは、まずはすでに殿堂入りする
ピーター・ギャモンズのインタビューで真実を話し、今回の記者会見でも改めて真実を話す、そのことにより、
過去を変えることはできなくても、過去の過ちに赦しを請おうとしたのでしょう。

しかし、ギャモンズとのインタビューのときにあったような、ロドリゲスは正直者だという見方は、ロドリゲスが
あれこれとしゃべる度に、失われているように思えてきます。多くの評論家やコラムニストが言うように、
真実を話したロドリゲスに対し「さらに真実を話せ」と問いただしています。例えばロドリゲスはステロイドの
使用に対して「若くて無知だった」ことを強調していましたが、本当のところ、ステロイドが何たるかを
知った上で使ったのではないかという疑惑が浮かびます。また、いとこが薬物をロドリゲスへ与えたという話も、
そもそもそんないとこもいるのかという根本のところで疑問をもたれました(そこでいとこの名前が公表されました)。

また、ファンや評論家などだけではなく、同僚でもあるメジャーリーガーからも疑いの目が増しています。
ヤンキーズではデレック・ジーターやマリアノ・リベラなどのスター選手が家族的結束力でロドリゲスを守り
(ジーターとロドリゲスの不仲説、っていうのは嘘だったんですね!)ブライアン・キャッシュマンGMは、
「われわれの財産」を守るためには何でもすると、GMとしては真っ当とも言える用語をしていますが、
他のチームの選手たちからは辛らつな批判が相次いでいます。

そうなると、実は2005年春の議会証言でだんまりを決め込んでいたマーク・マグワイアの行動がいちばん正解だった、
そう思えてきても不思議ではありません。しかし、マグワイアは当時すでに現役選手ではありませんでした。だから、
いちいちしゃべる必要もなかったのです。もっといえば、あの場でしゃべったところでマグワイアの評価が大きく
変わるとも考えられません(その変わり方が好転なのかその逆なのかはわかりませんが)。ロドリゲスは、
ヤンキーズとの契約がまだ9年も残っているバリバリの現役選手であるどころか、マグワイアよりもはるか上を
いっているスーパースターであると言ってもいいでしょう。「野球は自分よりも偉大である」と記者会見用に
作った原稿を締めたロドリゲスは、黙っていれば自らもメジャーリーグもダメになると考え、率直にしゃべらざるを
得ないと考えたのでしょう。しかし残念ながら、ロドリゲスの話には「率直さ」がなかったと見られました。
2007年には薬物使用を否定している以上、それもまた仕方ないでしょう。

じゃあどうすればロドリゲスは今の苦境をのがれることができるのか?残念ながらその答えはわかりません。
しゃべれっても、しゃべらなくても、ロドリゲスに対する疑いや批判の視線は一朝一夕では消えません。
それはひとえに、ロドリゲスが偉大すぎる選手だからにほかなりません。2年前の夏、今回の薬物使用を
スクープしたSports Illustratedが不調のロドリゲスを取り上げた特集を組みましたが、そのときと違い、
ロドリゲスは偉大な過去のスーパースターの助けも役に立たないかもしれません。ギャンブルをやり、
永久追放をされているピート・ローズは別にしても、ロドリゲスのようなメジャーリーグそのものを汚す
行為をしたスーパースターはいないからです。ロドリゲスは自らでこの茨の道を開くしかないのです。


最新の画像もっと見る